迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第21話

 武闘家ちゃんと剣士くんに一通り心構えを教えた所で一旦、女槍使いちゃんと共に牧場を走る女魔法使いちゃん達と合流した。

 

「ねぇ! アタシはなんでこっちに連れて来られたの!?」

 

 折角2チームに分けたのにこっちに連れて来られた事が理解出来ない女槍使いは悪態を吐く。

 

「これは簡単な事。杖術の使い方は槍術にも当てはまる部分が多いからさ。

 

 さてと、女魔法使いちゃんと神官くんは走ってみてどうだった?」

 

「はぁ……はぁ……どうって……??」

 

「はぁ……疲れた……と言う事じゃ、無いわね……」

 

 2人とも息も絶え絶えな状態だが、女魔法使いちゃんはランニングの意図を考えようとしていた。

 

「その通りさ。最初に言った通り考えながら体を動かす事を意識する事が大切なのさ。

 

 特に後衛である君達には尚の事にね。それがなんでか分かるかい?」

 

「はぁ……はぁ……。状況判断能力を高める為……?」

 

「その通り。後は単純に体力を身に付ける為。特に神官くんはパーティの生命線だ。

 

 それを今ここで自覚しなさい。君がダメージを負えばそれだけでパーティの全滅率が跳ね上がる。

 

 君が無事か否かでは同じ戦況だったとしても生存率は大きく変化するだろう。

 

 その為に前衛達に守って貰うと言う考えを捨てて、攻撃を受けない為にはどうするか? を考えて動く必要があるんだ」

 

 ヒーラーは絶対に最後まで死んではいけない。

 

 なんなら怪我も言語道断だ。この為の意識を作らせる為に少し強めに注意しながら話を進めた。

 

「あっ……その為に、考えて体を動かす意識を……」

 

「その通りだ。君が無事な為にはどうすれば良い?」

 

「攻撃を避けたり、杖で防御する……??」

 

「それ以外にも杖で払う事で近づかさせない事や周りの地形やパーティの位置を考えて動くんだ」

 

「地形や仲間の位置……??」

 

「例えば、今君のいる場所が洞窟なら何に気を付ける?」

 

「それは……!?」

 

 流石の彼も気が付いた様だ。洞窟なら暗さや足元のぐらつき、奇襲など様々な要因が絡んでくる。

 

「または、その状況で仲間と敵の位置を見てどうすれば仲間が自分を守り易く動ける?」

 

「なるほど……!? そう言う事かっ……!!」

 

 自分の位置が仲間から離れた位置に入れば仲間達は自分を守る為に陣形を崩す必要があるかもしれないと思った。

 

「そうやって君達後衛は状況を常に把握しながら動かなければならない。君は奇跡を何度使えるのかい?」

 

「2回です」

 

「それじゃ、その2回はどんな時に使うべきか? を考える必要があるんだ。

 

 回復ならポーションで済む状況か? 奇跡を使わなければならないほど切羽詰まった状況なのか? 

 

 奇跡によっては知り合いに地母神の女神官ちゃんがいるけど、あの子は自身の奇跡がどういう利用で使えるのかを考えている」

 

「私も地母神を信仰しているので分かります。そうでしたか……」

 

 どうやら彼女とは同期らしく知り合いだったらしい。それならもっと詳しく話を深めた。

 

「それなら、もっと分かりやすく例えましょう、ホーリーライトを使う時に目眩しに使うのか? 明かりとして使うのか? 敵を欺くために使うのか? によって様々使えます」

 

「なるほど……! 勉強になりますっ……!!」

 

「明かりとしてなら別に松明でも良いですが、火が使えない水辺の闇の中なら使う事もあり得るでしょう? そう言う風にです」

 

 神官くんは先程のランニングの時とは違い目にはやる気が出ていて目的が出来た感じだった。

 

「次に女魔法使いちゃんについてだ。君はどんな魔術を何回使えるのかい?」

 

「ファイアボルト(火矢)3回よ」

 

 プライドが高い感じで言われたがそれは違うと否定した。

 

「それは違う認識だ。君の魔術はそれだけじゃ無いだろ?」

 

「えっ? 何を……!? それって、詠唱っ……!?」

 

 彼女はシュードの否定から愕然としていたが直ぐに考えを直してその答えに至った。

 

「そうだ。オイラはこっちの魔法にはそんなに詳しくは無いからなんとも言えない。

 

 だけど、知り合いの銀等級のドワーフが言うにはファイアボルト1つとっても詠唱には3種類の魔法を合わせて1つの魔法にしているらしい。

 

 つまり、ファイアボルトはサジタ(矢)、インフラマラエ(火)、ラディウス(射出)の3つの魔法を掛け合わせて構成されている。

 

 それなら、君が今使える手札はファイアボルト(火矢)を含めて4つの魔法を3回使えると考えた方が合理的と言える。

 

 だから、仮にサジタ、サジタ、ラディウスの詠唱でマジックミサイル(力矢)擬きの魔法を作る事も可能なんじゃ無い?

 

 それか、燃える水を使って周囲にばら撒いてインフラマラエ(火)で発火させれば場合によっては火矢よりも火力が出るのでは?」

 

「っ!? 確かにそうね……。私は火矢に囚われ過ぎていたのかもしれないわ……!!」

 

 魔法をちゃんと学んだ者だからこそ囚われる常識がある。

 

 シュードは彼女のその部分を壊して魔法使いとしてのあり方の受け入りと言うかあっちの世界の格言を伝えた。

 

「そう。魔法使いはパーティ全体の指揮者であり頭脳でもある。だから、常に常識に囚われず冷静であるべきだ」

 

「冷静……」

 

「魔法は必ず敵を殺す技だ。だけど、同時に扱いによってはその自由度も魔法使いの技量によって変わってくる。

 

 君が自衛できる状況ほど前衛や中衛は安心して目の前の的に専念できる様になる」

 

「そう言う事かっ……!!」

 

「これらを踏まえて遊撃である女槍使いちゃんはどう動くかを考えて動く必要があるんだ。

 

 敵の数やその強さ、味方の奇跡や魔術の回数を頭に入れて、今は前衛に行くべきか? 後衛の護衛に回るべきか? を考えるんだ」

 

「そう言う事ねっ……!」

 

 遊撃は前衛と後衛を繋ぐ位置にいるから考えることが多い。だからこそ、上手い中衛遊撃がいると探索が楽になる事を伝えた。

 

「女魔法使いちゃん達にも言える話だけど、奇跡や魔術の回数は簡単には増えない。

 

 だけど、投石技術を学べば石なんてそこら辺に落ちているから前衛のサポートになる上に手持ち無沙汰を防ぐことが出来る。

 

 モンスターだって石が顔面に直撃したら凄く痛がる。そうすれば剣士くんが攻撃しやすくなる。

 

 また、杖や槍はその性質上払う攻撃によって相手を転ばせる事に繋がる可能性は高い。

 

 特に槍は杖とは違い強度もあり、その刃で視界を潰せばそれだけで戦況を有利に働かせられる」

 

「なるほどね……!」

 

「これにて今日の授業は終わりとするよ。今日は戦闘の心構えや役割分担とかの話しさ。

 

 次からはもっと実践的にやるから各々方はそれを踏まえて自分の強みや弱みを理解する事を提案するよ」

 

 少なくとも金貨10枚になるだけの話は出来たのかな? とは思った。彼等がまた来る事を祈ってシュードは家に帰宅した。

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