迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第22話

 冒険者ギルドでは町外れの一角でようやく白磁や黒曜等級の無料勉強会ならぬ訓練会が始まったらしい。

 

 そこでは銀等級が白磁や黒曜の素人へそれぞれの知恵や技術を教える事で少しでも戦力強化する狙いだ。

 

 あの時のご令嬢の努力が身を結んだ結果と言う事になるがそれでもまだ課題はある。

 

 1つは白磁や黒曜と言った素人は冒険者になってようやく冒険が出来ると勘違いしたまま勉強会へ行く事に拒否感がある。

 

 2つは銀等級が教える知恵やスキルのバラ付きが多いと言うことだ。

 

 銀等級ともなればそれなりに教えることは出来るだろうがやる気のない素人にそれを教えても下地がない以上身に付かない。

 

 ゴブリンスレイヤー達も投石技術やドワーフによる魔術訓練、蜥蜴僧侶による防御術、ハイエルフによる弓術などを教えているそうだ。

 

 あの女魔法使いの弟も最近はゴブリンスレイヤー達の教えに学んでいるのだがいかんせんオイラはあの子が嫌いだった。

 

 教えて貰っている立場なのにあーだ、こーだ、と実力も経験も実績もない奴が文句を垂れている姿は過去のオイラそのモノだ。

 

 まるで自分の恥でも見ている様にすら思う。また、女魔法使いちゃんも弟くんとは仲が良く無いみたいだ。

 

 女魔法使いちゃんは学園では天才と称されていたがゴブリン討伐に躓いて笑い者にされたからだそうだ。

 

 まぁ、何にせよ弟くんも弟くんでプライドだけは一丁前に高いらしいから初討伐でコケナイ事を祈るばかりだ。

 

 冒険者ギルドの無料勉強会が始まっても剣士くん達はオイラとの訓練には参加続行の様だ。

 

 勉強会で個々が身につけたスキルをオイラに試して習熟を早めることにした様だ。

 

 流石のオイラもそう言うことならと言うことで町外れの一角を借りて手足に長竹馬を装備した擬似トロールの戦闘ごっこで彼等を高めている。

 

 結局、剣士くんは騙し武器を採用したらしく今は親方に頼んでオーダーメイドしてもらったそうだ。

 

 鍛治師の親方にはオイラから武器の概要とレシピを伝えたので、例えオーダーメイドとしてもちょっとばかりは安い値段で受けられるだろうとは思う。

 

「ほらほら、武闘家ちゃん足を狙うのは良いけど狙いすぎだよ? もっとさり気なく狙う気で転ばせて!」

 

「はい!」

 

 素早く動き回り敵を撹乱しながらサポートに動く武闘家ちゃんの動きが良くなってきて本人も自覚している様だ。

 

「女槍使いちゃんは前衛と後衛の距離をもっと考えて! じゃ無いと神官くんが死ぬよ!」

 

「もう! 分かっているってば!!」

 

「は、はい! もう少し考えます!!」

 

 女槍使いちゃんも考えることが多くて難しさを覚えつつも楽しげに、男神官くんも必死について行く感じだ。

 

「剣士くんはもっと攻める! 攻め気がないアタッカーなんて怖く無いよ! 女魔法使いちゃんは全体の状況を見て指示を飛ばしながら投石準備!」

 

「わ、分かっているって!!」

 

「あぁーもう! 焦ったい!! 魔法で全部吹き飛ばしたい!!」

 

 何度かトロールごっこで戦闘訓練を行うとそのまま全員の体力が尽きてしまい終了する形で終わる。

 

 長竹馬を外して全体の反省会をしようとしていると女魔法使いの弟くん達から無遠慮に自分達もやらせて欲しいと言われる。

 

「姉ちゃん達だけ狡いよ! 俺達にもやらせろよ!!」

 

「お前達、何か勘違いしていないか? オイラは冒険者ギルドとは関係ない個人勢だ。

 

 お前の姉はオイラにお金を払って教えを乞うている。本来はこれが正しい方法だ」

 

「なら、俺達もお金を払う!! それで文句はねぇよな!!」

 

「なら、日給1人あたり金貨15枚だ。それ以下でお前達に教える気はない」

 

 白磁にも黒曜にも日給金貨15枚は払えないから実質教わる事が出来ないと言う拒絶の姿勢だ。

 

「なっ……!? 姉ちゃん達はもっと安いだろ!? 贔屓だ!!」

 

「それが何か? 礼儀すら弁えな者に教える事は何も無い。さっさと消え失せろ、クソガキ共」

 

 ギロッと睨み付けると悪態を吐きながら走り去っていく。

 

 冒険者ギルドとは個人で依頼を受けた子達の訓練をする代わりに場所を借りる契約だ。

 

 だから、個人間の契約を受けていない子達を鍛えない事は別に契約違反にはなっていない。

 

 オイラのこう言う態度があるから一部の白磁達に教えて貰える立場が本来はあり得ない状況なんだと理解させる事に繋がったそうだ。

 

 そして、オイラはゴブリンスレイヤー達と共に槍使いと大剣使いに夕飯を誘われて男だけの話し合い誘われた。

 

 そこでは色々な事を話し合った。大剣使いの夢やゴブリンスレイヤーの夢など様々だ。

 

「一国一城の主になるなら別に王が勉強中でも構わないと思う」

 

「だか、それじゃ民に迷惑だろ?」

 

 悲しげな表情をする生真面目な大剣使いだが、全員が全員賢王と言うわけでは無く誰もが陰で勉強している事を伝えたかった。

 

「国の規模にもよるが村長や街長くらいでお金があるなら知恵者を雇えば良い。

 

 勉強に意欲的な王であればそれは知識無しであっても馬鹿では無い。本当の馬鹿な王は何処までも愚かだ。

 

 民草がせっせと働いて納めてくれた納税をある限り使えるお金だと本気で思っている。

 

 だから、やるなら早めが良い。パーティに迷惑と思っているならそのパーティに相談してパーティを民草にすれば良い。

 

 貴方はきっと良い王へなるだろう。知恵者は商人家の三男坊辺りを口説けばきっと良い国を作れる筈さ」

 

「なんか照れるな。ありがとな」

 

「それにしては含蓄がある言葉だな」

 

「オイラは次元転移者だけど現役伯爵だよ?」

 

 いつも軽薄な槍使いに自身の事情を明かすと大剣使いと一緒に驚愕で固まっていた。

 

「なっ!? マジかよ!?」

 

「この世界に逃げて来たのも幼馴染の第一王女の婿候補筆頭になったからだし……。本当、参るよね……」

 

「その話は初めて聞いた」

 

 帰れなくなったのは不慮の事故的な何かだとは思うが来た原因は逃げる為だった。

 

「別に無理して話す話題でも無いでしょ? オイラの貴族名はシュード・ルイス・シュヴァルツ・ゼクセウス・ゲイルリータ伯爵。

 

 長ったらしくて覚えてらんない上に第一王女の王配になるなら確定で友人の公爵の養子になるからもっと長くなる……」

 

 ゔっとなって嫌がるシュードと興味津々な男共。酒の席だからと軽口にシュードはあまり話さない自身の事を語り夜を明かしたのだった。

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