今回の一件を経て女神官ちゃんや剣士くん一行は無事に鋼鉄等級へ昇級をしたそうだ。
また、あの生意気な口調の女魔法使いの弟はドラゴンスレイヤーになる為の旅を始めて街を出たらしい。
同じ赤い髪をした小柄なレーアの剣士ちゃんと2人で旅に出たらしく、今回の一件で捻くれた性格が少しは戻り姉とも仲を戻したそうだ。
鋼鉄等級になったとは言えようやく素人から脱した程度の一人前らしく剣士くん達もまだオイラの訓練を続行したいとの事だ。
オイラとしてもまだまだ全然教えたばかりだから鋼鉄等級へ昇級して鼻が伸びていたら叩き折ろうと思っていたから良かったと思う。
そんなある日の事だった。ハイエルフの姉が結婚するから帰省しなくちゃいけないと言ってきたらしい。
今回は牛飼娘さんやベテラン受付嬢も同行するらしく、警護や防御面を固めたいとの事でゴブリンスレイヤーと契約を交わした。
ベテラン受付嬢はゴブリンスレイヤー同様に休みを取らないワーカーホリックタイプらしく、彼も同様に持ち場を離れたくない為に2〜3件巣穴潰しの依頼を請け負った。
巣穴の依頼には教会を拠点にしていたモノもあり幾人かの修道女達が犠牲となったらしく、女神官が浄化の奇跡を会得したらしく彼女達に使っていた。
「それならオイラも少しは彼女達の傷を癒すとしよう。ベホマズン」
オイラもこの1年で更に修練を重ねた結果、ベホマラーが進化してベホマズンの習得に至った。
突然、傷やら痛みやら疲労やらが完治した事に修道女達は驚き、神の御業でも見えたのか涙した。
そんな中でドワーフが古代文字の描かれた粘土版を発見して持って来た。
文字は読めはしないが経験上、碌なことが書いていない事だけは分かった。
「文字が読めないから正確な事は言えないが、恐らくは封印された異界に繋がる門の事について書いてあるのだろう。
次元転移者としての経験上、門の閉じ方や開封の仕方又は門の説明か何かだろうな……」
「ほう。それじゃ、早めに解読してもらえる様に手配するべきですな。何かあったからでは事です」
「水の街の大司教へ頼むとしよう」
そして、修道女達を地母神の神殿に預けた後、受付嬢や牛飼娘さん達と合流して冒険者ギルドにに馬車を借りて剣の乙女がいる水の街へ向かった。
水の街に着いた後は女性陣は買い物、ドワーフ達は荷運びと宿探し、ゴブリンスレイヤーはオイラの言葉を伝えつつ手早く大司教の元へ向かった。
「小僧はどうするよ?」
「オイラは……女性陣の警護と荷物持ちをするとしましょう。流石に水の街とは言え女性だけは何かと危険ですからね」
「ハッハッハ! それもそうですな!」
「えぇ〜?? 大丈夫わよ」
「麗しき女子に近寄りたい男は多いことでしょうな。何でも屋殿、よろしくお願いしますぞ」
蜥蜴僧侶に頼まれたオイラ彼女達の荷物持ちをしながら、買い物に夢中な彼女達へ不意に近寄りそうな男達へ背負った破邪の剣をチラつかせた。
今のオイラは冒険者時代の魔剣士よりも旅の騎士に近い格好。軽装にマントを靡かせて背中には破邪の剣を背負った感じだ。
牛飼娘さん達を見守りつつ前回の件で仲良くなった海鳥達の小話を聞き回ったのだった。
そして、次の日筏を借りたオイラ達はそのままハイエルフの故郷へと足を運んだのだった。
女性陣は昨日買ったモノについてキャッキャッして楽しそうに笑う。
ゴブリンスレイヤーは万が一の為に簡易的な短槍を作り、オイラは道具袋から前もって持って来たL時型の簡易改造が出来る船盾を準備した。
水の街からハイエルフへ向かう道では最近ゴブリンによる襲撃が多いらしい。海鳥達が他の鳥から聞いた事を教えてくれた。
このL時型簡易改造の船盾は荷物の木箱の下に差し込む様に置くだけで簡単に盾となる。
それを上下でからくりの様に繋ぎ合わせれば例え上からの襲撃と言えど簡易的な屋根になる様に作ってある。
耐久値にはかなり不安があるが、そこはそれぞれの魔法や工夫によって一時凌ぎ程度が可能なら大丈夫だろう。
水路を通り問題の崖に入ると各々が戦闘体制に入る頃、上から岩やら材木が落ちてきて女神官ちゃんのプロテクションで防ぐ。
「スクルト、スクルト!」
「っ!? 助かる!」
「オイラとバウムレンで左右崖上の連中をザッと荒らします。筏は任せましたよ」
デルパと合言葉を掛けてバウムレンを呼び出して左右の崖を昇る。その際にシュードは風を足場にして空中を跳ねる様に昇った。
「うわっ……!? すっごぉ……!!」
ハイエルフは大自然に囲まれているからシュードの特異性については誰よりも理解している為に目を輝かせた。
シュードとバウムレンの猛攻に流石のゴブリン達も筏へ攻撃して居られず撤退する。
そして、川を塞いでいた廃船を女神官ちゃんの基点でなんとか無事に潜り抜けてハイエルフの土地へ辿り着き、仮住まいの簡易的な小屋を作り夜を過ごした。
少なくともハイエルフの土地にいる出撃してきたゴブリンはオイラとバウムレンで粗方肩を付けたが、アレは斥候に近く本隊はまだいると報告した。
「確かにそんな気がした……」
「今晩はオイラ達のモンスターが夜番をします。流石のゴブリン達もレオ君達に襲撃はしないでしょうし、オイラも慣れてますので」
「あぁ。すまないな。助かる」
モンスターマスターとしてはこう言う夜も良くやっていたから別に苦でも無かった。
むしろモンスター達に囲まれて睡眠が出来る事に喜びを感じたオイラはスヤスヤと夜を過ごしたのだった。