迷子の魔物使い   作:火取閃光

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第25話

 夜番をしていた早朝の事。

 

 森の奥の方から足音が聞こえて戦闘態勢を取る。念の為にハイエルフの可能性もあるのでモンスターは魔法の筒へ仕舞い込む。

 

 ゴブリンスレイヤーへさりげなく小石を投げて起こし、焚き火を番を取りつつ如何にも朝食の準備をしていますみたいな装いを行う。

 

 まぁ、実際にも朝食の準備はしているので間違った事はしていない。

 

「貴様、ここはハイエルフの土地と知っての狼藉か?」

 

 鎧を纏い剣を構えるハイエルフの男性にシュードは片膝を立てて頭を下げて説明する。

 

「はい、その通りでございます。私はシュード。何でも屋をしております」

 

「ここへは何をしに来た?」

 

「はい、ご友人のハイエルフ殿の姉君がご結婚をなさると聞き、故郷へ帰省する為にその護衛に参ったにございます」

 

「何っ!? それは真か!?」

 

「真にございます。ただ、ご友人のハイエルフ殿は他の友人の女性陣とまだお休みのご様子です。

 

 起きるまで私は朝食の準備を、こちらにいる鎧のオルクボルグ殿は周囲の警戒をしている所存でございます」

 

 物言わぬ鎧の武人と化したエルフ語でオルクボルグ事、ゴブリンスレイヤーもここはシュードに任せるべきだと判断して頭を下げる。

 

「ふむ、分かった。貴様の言葉が本当なら義妹が起きるまで私が監視する。余計な事はするなよ?」

 

「勿論でございます」

 

「その、よろしく頼む」

 

 そして、朝食の準備が整う頃に全員が服を着替えて起き出してくる。

 

「あれ〜〜?? 義兄様来てたの〜〜??」

 

「全くっ……! お前と言う奴はっ……!! だが、そなたの言う事には嘘は無かった。改めて無礼を謝罪しよう」

 

 着替えたと言うのに若干寝ぼけているハイエルフを見て義兄はため息を溢しながらシュード達へ頭を下げる。

 

「それは構いません。ご一緒に朝食でも如何でしょうか? どうやら少し作り過ぎてしまった様でして……」

 

 大き過ぎる鍋にはゴロッとした野菜がたっぷりと含まれたスープが煮込まれていた。

 

「フフッ。是非頂こう」

 

 ハイエルフの義兄はその様子を見て明らかに人数分以上を用意したシュードの意図を察して食事を共にした。

 

 朝食をとった後、ハイエルフの義兄の案内の元ハイエルフの故郷へと辿り着いた。

 

 ゴブリンスレイヤー達はその神秘的な光景に圧倒されていて子供の様にはしゃぐがシュードは懐かしさを感じた。

 

「何でも屋さんは驚かないのですね」

 

「そうですね。オイラの故郷もこんな感じだったので懐かしいなぁって思いが強いですね」

 

「何? そなたはヒュームでは無いのか!?」

 

「いえ、ヒュームですが次元が違うヒュームです。オイラの故郷は別世界にあるので」

 

「っ!? と言う事は次元転移者!? 爺様からは聞いていたが実在するとは……」

 

 ハイエルフの義兄は何千年と生きているにも関わらず会ったこともないほど次元転移者とは珍しいモノなのだろう。

 

 驚愕に固まるハイエルフを他所に女神官は何処か違う様子のシュードを見て何か違和感を感じた。

 

 しかし、それは悪い予感ではなくて言いようがないモヤモヤした気持ちだった。

 

「少し街を歩いても良いですかな? 少しだけ故郷が懐かしく思えてしまったみたいで……」

 

「構わないが、案内はどうする……?」

 

「大丈夫です。それでは……」

 

 護衛依頼は達成していると言っても過言じゃないが少しこの街の空気感が懐かしくなった。

 

 成人して1年、モンスターマスターとして旅をして10年も近いのにホームシックと言うやつだろうか?

 

 幼馴染の第一王女アニエス・リーフィア・クロイツ・ワカバから逃げた結果、この世界に迷い込んだ事に後悔はないが今はあの街が恋しいと感じた。

 

 風を頼りに街を巡る。ここにいる鳥達の声に耳を澄ませて会話を行うシュードの姿はハイエルフと言えど幻想的に見えた。

 

 丁度そんな時だ。ドスンッドスンッと地響きに近い足音が聞こえそこへ向かうと首長竜がいた。

 

 どうやら鞍を掛けられて住処を荒らされたゴブリンに腹を立てている様で気が荒い。

 

 ゴブリンスレイヤーはいつもながらゴブリンを殺そうと躍起になるがこの首長竜は殺さないらしい。

 

 ハイエルフが丁度見かけたシュードに声を掛けようとしたが彼の様子が違い過ぎてその場で跪いた。

 

「鎮まれよ、森と共に歩みし竜よ。我が声に傾けよ」

 

 ゴブリンスレイヤーがゴブリンを殺したがどうにもハイエルフ達やドワーフの様子がおかしい。

 

 首長竜もシュードの話に耳を傾けて落ち着きを取り戻してシュードの顔をまるで犬の様に舐めている。

 

「よしよし、良い子だ」

 

 首長竜を撫でているシュードへ精霊を感じる種族は全員シュードへ自然と跪いた。まるでそれが当たり前かの様に。

 

「おぉっ……!? これはこれはっ……!? よくぞ、我等ハイエルフの里へいらしましたな、風神の神子様よ」

 

 ハイエルフの長老とも呼べる人物達が現れるとシュードに向かい頭を垂れる。

 

「オイラも風を全解放するつもりは無かった。懐かしさのあまりについ解放してしまった。面倒を掛けたな」

 

 シュードの言葉が自然とハイエルフの長老へ向けて上位者からの物言いになってしまう。

 

「いやいや、風神の神子様とお会い出来て光栄にございます」

 

 ハイエルフの長老達が涙を浮かべて感激している様子に受付嬢や牛飼娘さんも何事かと驚愕していた。

 

「今のオイラは貴方達が知る風神の神子とは別人だろう。オイラは次元転移者。つまり余所者だ」

 

「それでも我々がこうして頭を垂れているのは神子様の風が風神様のモノと本能的にご理解しているからでしょう」

 

「世話を掛ける」

 

「こちらこそお鎮め下さいましてありがとうございます。どうぞ、我等の里をご自由にお使いくださいませ」

 

「感謝する。それと仰々しいのは嫌いだ。今後は普段通りに接してくれ。頼む」

 

「それが神子様の御意志なら構いませんぞ」

 

「助かるな。ありがとう」

 

 シュードは全身から吹き出していた風を仕舞い込んだ事で精霊と共に生きる者達はその威光から解放されたのだった。

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