黒曜等級になって数日。魔法の筒の中にいる相棒達の餌を森の中であげてからモンスター達と日課の擬似戦闘を行う。
正直言えばここまでやっているモンスターマスターも珍しい。
大樹とか枯れ木とか丸太とかの大手は精霊力が大きくあってマスターの保護関連に充実しているが、オイラの若葉は生まれたてでそうでもない。
特にオイラの場合は生まれつき魔法使いと僧侶の適性が高い賢者体質のモンスターマスターだ。
このタイプは得意なモンスター系統に対してなら、初対面でも自然と言葉が通じ合う事が多い。
普通のモンスターマスターは長くそのモンスターと一緒にいると何となく言葉というか想いが通じ合うタイプらしい。
オイラの場合は獣系と鳥系とドラゴン・爬虫類系の3つが自然と会話が成り立ってしまうタイプ。
その為にモンスターじゃなくても仮に小鳥でも通じてしまうので彼等には餌代の代わりに誰か来ないか監視と伝達をお願いしている。
「こんにちは! 魔剣士さん! 今日はどうされますか?
「こんにちは、受付さん。何がありますか?」
ここ冒険者ギルドでは魔物使いがマイナーどころか悪の手下的な扱いを受けているので仕方なしに魔剣士と言う事にしている。
その為、重戦士タイプよりも軽戦士タイプを採用した鎧に兜をして、背中には破邪の剣を装備している。
本当は真空の剣を売った鍛治師の適当に良さげな剣を装備しようと思ったらのだが、戦闘中に実力バレて面倒になるくらいなら最初からゴテゴテで行こうと思いこうなった。
それにこっちの人達は何故か兜を付けないことに疑問に思っていたら親方曰く仕事として顔を売っているそうだ。
絶対に顔を売って仕事を稼ごうとするよりも忠実に頭を守って生き延びる方が良いと思ったんだが価値観の違いだと思っている。
そう思いながら良さげな依頼書を眺めていると後ろから身に覚えのある声が聞こえる。
「ゴブリンか?」
「おぉ! ゴブスレさんじゃん! 数日ぶりだね」
「あぁ、お前か。それよりゴブリンは?」
相変わらずゴブリンを滅する事しか脳がないらしい。
この手のタイプはゴブリンによって大切な物を傷付けられた傾向が強い事が経験上多い。
そっとしておこうと思い彼の様子を見ているとベテランの受付嬢が心配気に声を掛ける。
「実は……」
つい数時間前に白磁等級が臨時のパーティを組んでゴブリン掃討の依頼を受けたそうだ。
依頼にはゴブリンが4〜6体発見されていて周囲には昔使われていた避難用の洞窟がある地域らしい。
ゴブリンスレイヤーとふと目が合う。流れのゴブリンが根城にしていてその数も2〜3倍はいると思われる。
「俺が行こう。魔剣士、お前も来るか」
「はいはい。報酬は山分けね。と言う事で今日の依頼はそう言うわけでよろしくね〜」
そういう時オイラ達は直ぐにゴブリン退治をする為に冒険者ギルドを出て目的の場所へ向かった。
ベテランの受付嬢もあのゴブリンスレイヤーが他人を頼るなんてよほど信頼しているのだとシュードの評価を改めた。
街を出て森の中、ここなら人目に付かないだろうと思い魔法の筒の中にいるバウムレンを呼び出す。
「デルパ。ごめんよ、バウムレン。オイラ達をこの場所に連れて行ってくれ」
「頼む」
ゴブリンスレイヤーの言葉は彼には通じていないが良心は伝わったのか彼を背中に乗せて疾風の如き速さで駆け抜けた。
歩いていたら間に合わないかもしれないが彼の速度なら間に合う可能性が高い。
それに洞窟の中を拠点としていると魔法を使うずる賢いシャーマンやボブがいる可能性が高い。
とてもではないがその場合は白磁には無理な案件だ。シャーマンがいるなら黒曜、ホブもいるなら最低でも鋼鉄は欲しい危険度だ。
「ゴブスレさん、一度ギルドには危険度修正を提案するべきなのかな……??」
「……そうだな」
普段は無口な彼も流石にこればっかりはシュードの意見に賛同した。そして、疾走したバウムレンが目的の洞窟付近に辿り着く。
「ありがとう、バウムレン。これはお礼。イルイル」
バウムレンに肉を食わせてから魔法の筒に入れ戻して匂い消しを行う。そうじゃないとゴブリンの血肉を被る羽目になる。
「さてと、あの洞窟じゃこの剣も振り切れなそうだからオイラは魔法と拳で援護するとしようかな」
破邪の剣を袋に仕舞い込み、袋を盗まれない様に懐へ隠す。
「助かる。行くぞっ……!!」
ゴブリンスレイヤーの合図を元に洞窟へと入っていく。今は夕方より少し前。夜行性のゴブリンにとってはそろそろ活動時間だ。
あの白磁等級達、流石にゴブリンを舐めすぎではないだろうか? いや、あの白磁に限らずこの世界の住人は。
ゴブリンの習性なんて冒険者ギルドに行けば簡単に教えてくれる。ゴブリンスレイヤーが調査して報告しているのだから。
ダンジョン攻略において情報は金よりも価値のある場合が多い。知っているのと知らないのとでは攻略難度が違ってくる。
ゴブリンスレイヤーと共に洞窟を歩いている。そうするとほぼ全滅に近い白磁等級の冒険者達がゴブリンに襲われていた。
「魔剣士、彼等の護衛と治療を」
「っ!? やはりシャーマンがいる。マホトーン! で魔法を封じたからゴブスレさんはホブに専念して! 雑魚はオイラがやる」
ゴブリンスレイヤーとしてもボブを相手にシャーマンの魔法はかなり驚異だ。
しかし、彼は魔法封じの魔法を使える。魔法の使えないシャーマンなど普通のゴブリンよりも少しずる賢いだけだ。
「あらら……。どっちも剣と魔法に過信しちゃったみたいだね〜」
「お、お願いしますっ……! 女魔法使いさんと剣士さんをっ……!!」
「君はゴブスレさんと一緒に武闘家の援護を頼むよ。その間に治療しておくからさ」
「っ!? 分かりました!」
神官女は涙目ではあったが強い目で彼等のサポートに徹しに向かう。ああ言う人は伸びる。そう思いながら治療した。
「まずは女魔法使いだけど……これは毒だな。痛いけど我慢しろよ」
「ぐぶっ……!?」
「これでキアリーからのベホマラーっと。これで2人はどうにか処置は完了かな?
さてと、護衛を任された身なのでゴミ掃除と。恨むなら自分の非力さを恨めよ」
シュードの闘気力が纏わられた蹴りがゴブリンの頭に直撃すると頭は弾ける様に飛び散った。
そして、ゴブリンの全滅と護衛を終える頃にはゴブリンスレイヤーもホブとシャーマンを倒し終えた。
そして、ゴブリンの幼体を殺す際に神官女と一悶着あったが納得した様でオイラ達はギルドへ帰還した。