社長のマリーさん   作:雪須

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マリーは昔を思い出していた。今自分が生きていける知識や技術を経験することができた、あの頃を。


育ちはギャング団

私はイタチ科の獣人として、アニマシティから海を越えた遥か遠い、どこかの土地で生まれ育った……はず。

 

というか小さいときのことはよく覚えてなくて。

獣人身売買で売られた子供だったからかもしれない。

 

ただ碌でもないところにいたことだけは覚えている。

何せそこでは、大人の言うとおりに物乞いしたり盗んだりしてこないと、ぶん殴られて食べものももらえないようなところだったから。

 

私は生きるために、人間の子供の姿で大人からめぐんでもらったり、獣人態になって盗みを働いたりしていた。

 

他にも子供がたくさんいたが、それらをうまくできない奴は、いつの間にかいなくなってた。

 

おかげで、かっぱらう、どこででも寝る、そんなテクだけは磨きがかかっていった.

 

とくに私は、イタチ科獣人の特徴なのか、器用ですばしっこかったから、盗みや逃走がうまかった。

そこに目を付けられたのか、地元のギャング団に移ることになった。

 

これ後で分かったことだけど、かなりいい値段で売られたようだ。

 

ギャング団では、年齢が幼かったため体が小さく,狭い箇所への侵入や、相手の警戒感が薄くなる幼児の人間態での運び役で使われた。

ここで侵入や窃盗、運び屋の仕事を覚えることができた。

 

自慢じゃないが、私は他の奴らよりも覚えるのが早かった。

 

そのギャング団では、首領をトップに、主に獣人は実行役として任務を実行し、人間は実行役に指示を出す指示役や、実行役での技術支援をしていた。

首領を含む指示役らがターゲットと方針を決め、実行役らは、実行役のリーダーの指示のもと敵や障害の排除や、侵入して物品の収奪を実行する。私も実行役に属していた。

 

が、私は口が立ち、女だったこともあってか、歳が15、6の頃から人間が主に取り仕切る収奪品売買の方も手伝うことになった。

客の引き付け役と、交渉で暴れる奴に即対応するためだ。

例えば。

 

「おい、これニセもんじゃねぇのか?それでこの値段かよ?なめてんのか、おめぇら!」

「ニセものと思うんなら買わなきゃいい。ホンものかニセものか分からんような奴よりか、ちゃんと分かる人間に買われた方が商品も喜ぶってもんだ」

「んだと、てめぇ、新顔がナマ言ってんじゃねぇぞ、店たたんでやらぁ!!」

 

そういうシチュエーションになると暴対員の出番である。

 

「はあー…… マリー、すまん、後たのんだ」

「あいよっ、店主♪」

 

ひょこっと表に出て、獣人態に変身。

 

「んだぁ?こんな弱っちいヤツしかいねぇのか、だっせぇ」

「そうかな?マリーは強いぞ」

「そうそう、あたいは強いぞー♪」

「へっ、獣のチビガキが、叩き潰される前に……ぎゃあああ!!!!」

 

体格に自信があったのか、余裕ぶっこいて口上を悠長にあげて恐喝する大柄な男。

どんな実力?と思い、そいつの顔の両側面を、両手の爪でうす皮一枚削ぎ落としてやった。

 

「こんガキィィィィ、ぶっ殺してやるっっ!!」

「やれるもんならねー、ケケケケケ」

 

軽くあおってみると、その後も男は血まみれのひきつった顔で、大型ナイフを振り回し切りかかってきた。

 

しかし、獣人の私から見たらトロくて勢いだけの素人の動き、簡単に避けれた。最後は、疲れて振り回すのが遅くなってきた頃に、ナイフを持っていた腕を爪で削いでやった。

 

「んじゃ、ふぃにぃっしゅっ!!」

「ぎぃやぁぁぁ!!」

 

体格が大きいから声も大きめ。で何回も叫ぶことに。

小さいからと舐めてかかるから。

人間は対戦の時、獣人と接近しちゃダメなんだっての。

 

そんな出来事も何回かあったが、おかげで人間と商品を売買するやり方を知ることができた。

 

人間は獣人を頭のない獣として足元を見てくること、蔑んでくることもそこで知った。

でもそうしてくれるおかげで、相手が舐めプしてきたところを嵌めて悔しがるところを見るのも楽しかったけど。

 

逆に、金を稼いでくれる、儲けをもたらしてくれる存在と分かれば、種など関係なく一緒に仕事をすることも知った。

まぁ金の切れ目が縁の切れ目のうっすい関係でしかないけども。

 

金を稼げること、これがこの世界でやっていける力と知ったんだ。

 

そんなことも学べたなんて、私はなんて運が良いんだろう!

 

 

 

私が商売に駆り出されていた頃には、私がいたギャング団も、まだまだ規模は小さいものの、私が入った頃より人数が増え、大きめの仕事もこなせるようになっていた。

 

そして、報酬で依頼された仕事を実行する仕事屋のような集団に変わり、獣人の能力を活かした格闘戦のほか、銃器類を使った銃撃戦もするようになった。

 

ただ人が増えてくると、起きて欲しくないことも出てくる。

 

「実行役の獣人ども、ターゲット以外のブツに手を出しやがって。おかげで警報が鳴って秘密裏に処理するはずの案件が台なしになってしまった!」

「なんで俺たちの取り分が少ねぇんだよ。余計な事されたくなきゃ、何もしてねぇ上が取り分少なくしろや」

 

それは、上役と実務担当との不和、獣人と人間との(いさか)い。

 

人間たちは、獣人が本能に従って行動し、本来なら発生しなかったトラブルを起こしてしまい、依頼をフイにしてしまう厄介な存在として危惧するようになった。

 

一方獣人側は獣人で、人間は危険を冒さないのに自分たちだけ利益を多く横取りしているなどと考え始めた。

 

年数を重ねて経験も積んでいた私は、ギャング団の幹部で実行役のリーダーでもあったフリューガという名の豹獣人とともに、獣人側を取りまとめる存在にまでなっていた。

 

「リーダー、マリー、首領どもどうにかなんねぇのかよ。あんな奴らみんな殺しちまって、おれたち獣人だけでやってこうぜ」

 

実行役の獣人たちの愚痴にリーダー、

 

「何言ってる、首領らのつながりで仕事の依頼が来るんだぞ。後、首領を舐めるな。今でこそ実行役はやってないが、昔は人間種ながら獣人相手に戦闘やって生き抜いているヤツなんだからな」

「けっ、リーダーは首領どもの飼い犬ってヤツですかい」

 

実行役らのあおり言葉に、

 

「いやならウチをやめてもいいんだぞ。他にウチより待遇のいい所もあるかもしれん。ただ病気やケガ以外の理由でやめたなら、その時点から、ウチのことをよく知っている要注意部外者となるがな」

 

リーダーが、任務時以外では滅多にならない獣人態に変身し、実行役らを鋭い眼で睨む。

 

「え、あ、あ…… じょ、冗談ですってリーダー」

「そうかそうか、本気で言ってるのかと思ったぞ。すまない」

 

獣化したままで目を細めニコリとする。

怖い。

絶対に「すまない」って思ってないし。指先の爪出たままだし。

 

よし、気分を変えちゃろ。

 

「えーっ、首領ってそんな人なんすか?」

「そうだ。でなきゃ、俺一人でギャング団の実行役なんか維持できん」

 

リーダーは、確かな指示で実行役をまとめ、被害を最小限に抑えつつ成果を挙げ、皆からの信頼も得ているような優れた人物だった。っていうか、何でこんな場末のギャング団に?っていうぐらいの人。

いや、すごいいい人に聞こえるかもしれないが、やってることは悪人以外の何者でもないけどな。

 

その立派さの元となっているのが首領の存在とのこと。

 

まだギャング団ができたての頃、仕事柄、競合相手の獣人と戦闘することも多々あったが、人間種ながらそこを勝ち抜いてきた首領。

リーダーも一緒になって戦闘をこなしてきたが、獣人らしく勢いにまかせて突っ込み、格闘戦をしようとするリーダーに対し、首領は絶対に敵の獣人には近づかない。

 

予め、周りの地形や建造物形状を覚えておき、距離を詰めようとしてくる獣人の動きを予測して、急な段差や低い天井、汚水のある場所などに導きイライラさせる。

判断が鈍った獣人を狭小部に誘い込み、身動きがとりづらくなったところで銃撃してしとめる。

特に多くの獣人は、思い通りにならないとすぐに落ち着きがなくなるので、そこを狙うらしい。

 

まぁ簡単に言えば、追ってくる獣人を、頭に血を上らせて、その場のトリックでだまし、身動きがとりにくくなったところで安全な距離からズドン。

イヤらしいことこの上ない。

 

また獣人種の獣種から、どのような能力をもつのか調べたりと事前知識の学習も欠かさなかったらしい。

 

それらを見て、リーダーは首領を敵には回したくないと思ったそうだ。

 

実は、私も入りたての頃、首領が実行役として敵を屠っていたことは知ってたけど、改めてリーダーから聞くと、首領になっているのも納得。

 

そしてリーダーは、そんな首領から首領流の獣人への対処法を教えてもらった、それによって知識も増え、余裕をもった判断ができるようになり、仕事をさらに効率よくこなせるようになったと言っていた。

 

 

 

首領ら指示役の人間からも、実行役の獣人からも信頼を得ていたリーダー。

なので、人間と獣人がそれぞれ不満を持っているのは、彼も、そして私にとっても、とても辛いことだった。

 

「マリー、どうしたら改善できると思う?」

「リーダー、それむずいっす……」

 

歳が一回り以上違う者同士でため息ばかりつきながら相談などしたりした。

 

やがて溝がますます深くなってきたころには、実行役の獣人たちを指示に従わせられないことに、指示役たちからの信頼が下がり始め、リーダーと私は指示役たちからなじられるようになってきた。

 

「フリューガ、また実行役がターゲット以外のものに手を出したそうじゃないか。トラップにかかって全滅するぞ。実行役リーダーとして、いい加減やつらをどうにかしろ」

「心配するな!ヤツらだって命がかかってる、こっちもヤバいものが無いか見てるしな。少しぐらいは大目に見てやれよ!」

「退却時にじっくりと見れる時間なんてないだろ。今度命令外の行動するヤツがいたら躊躇なく処分しろ」

「いやだね。ヤツらは駒じゃないっ。あいつらがいなくちゃ仕事が進められん。お前が受けた仕事をだ。命令外の行動をとらせたくなければ、報酬を上げてやれ!」

「ちっ、マリー、フリューガじゃだめだ。構わない、君が始末してくれ」

「え、え、私が?えっと……」

「何だ、君もできないのか?実行役をまとめる立場としてなってないぞ!」

「実行役をまとめているのは俺だ!マリーじゃないっ。言うなら俺に言え!」

 

首領とリーダーとの間で口論も頻繁に起きた。あのいつも落ち着いている二人が。

 

そして、そんなことを全く知らないし、知ろうともしない獣人たちからは、私とリーダーは指示役らの回し者として見られるという、両方から信頼を失ってしまう板挟み状態にまでなってしまった。

 

そして、人間と獣人との仲を取り戻す答えは、結局最後まで見つけ出すことはできなかった。

 

それは、そんな悪い状態の時に一つの重大な仕事を受けたからだ。

 




マリーの昔の話を捏造するために、登場人物をこさえてみました。やっぱり調達(コミック05話)や侵入(Netflix本編11話)や格闘戦(Netflix本編12話)など幅広くやれるって、小さいときからどっかの集団にでもいないと無理じゃないかと思いまして、ギャング団にいたことに捏造してみました。
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