社長のマリーさん   作:雪須

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ギャング団は今後の自らの行く末をも左右する重要な仕事の依頼を受けた。その仕事の結果は……


大きな仕事

集団の雰囲気が極めて悪い時に、一つの仕事の依頼があった。

 

その仕事とは、とある大きなマフィアからの依頼。私は首領に尋ねた

 

「それどんな仕事なんですか?」

「依頼主のマフィアが経営する企業の裏取引に関する証拠品の回収だ。ただ、今証拠品を持っているのは、最近よく出てくる例の強盗集団なんだ」

 

首領の回答に、私は顔を曇らせた。

 

「え、あのあちこちで激しい銃撃で強盗してる、あの集団?」

「そうだ。ちょっと厄介な案件だな」

 

ターゲットは、依頼主のマフィアが隠れ蓑にしていた堅気に見える企業の裏取引に関する帳簿や契約書などが入ったブリーフケース。

 

そのブリーフケースは、最近強引なやり方で目立ってきた強盗集団が、マフィアの企業に押し入って強奪した物品の一つで、依頼内容は強盗集団からそのターゲットを回収してくることである。

 

大きなマフィアなのだから自分でやればよさそうなものだが、大きいだけに動けば目立ち、警察機構が出てくると厄介になる。

なのでここに回ってきたわけだが、断ればうちの様な小規模の集団、権力のあるマフィアからの圧力で活動ができなくなる。

これは受けて、そして成功させなければならない案件なのだ。

 

リーダーが口を開く。

 

「やるしかないな」

「そうゆうことになるな。フリューガ、マリー、現状の実行役で実現できそうな実行計画をあげてくれ。ただ実行役の獣人たちを甘やかすような計画は許さんからな」

「分かっている!いちいち当たり前のこと言うな!」

「あ、あ、了解っす」

 

イガイガした中、私は焦った返事しかできなかった。

 

「久々に俺も指示役だけの仕事じゃすまないかもしれん。俺も勘を取り戻しておかないと……」

「ふん、勘を無くしているとは。足手まといだから、お前は見ておくだけでいい。エアコンの利いた部屋でビールでも飲みながらな」

 

首領の独り言にリーダーが嫌味。さらにイガイガ度が増す。

とてつもなく不安になる。

 

その不安を払しょくするためにも、私はリーダーとともにしっかりと敵の情報を集めてプランニングした。

 

首領とも内容確認。ここでも少し言い合いになったが、基本了承。いざ実行に移す。

 

敵集団のアジトは、最近は治安が極悪で有名な山間の森林の中、そこに建つ、治安が悪くなる前は小さなリゾートホテルだった二階建ての建物。

 

獣化したリーダーと私、実行役らは、銃器類で武装し、夜を見計らってその建物に突入。実行役らは、最初こそどんな相手かが分からないため、リーダーの指示に従っていた。そのおかげで敵の制圧、ターゲットの奪取までは順調にできた。

 

しかしその後、相手が予想した数よりも少なく、大した反撃が無いと分かったとたん、実行役たちは他にあった金目の物に気を取られ、余分な行動を始めてしまった。

 

「うひょー、こっちの部屋にゃ宝石とか金とかが転がってるぜ、こっちも持ってっちまえ」

「ばかもの!さっさと退却するぞ!」

「えーっ、こんなにあんのに無視するってねぇっすよ。やっぱ飼い犬は違いやすねぇ」

 

一喝するリーダーを尻目に、実行役の獣人たちはケッ、という態度を示す。

 

「あんたたち死にたいの?こんなに敵が少ないはずない。あいつらの本隊が戻って来ちゃうよ!」

 

私も実行役たちを説得しようとする。が、実行役たちは取り合わず、うち一人が返事。

 

「大丈夫、大丈夫、数が増えたってさっきみたいに蹴散らしゃいいんだから。いやならターゲットといっしょに先に帰っていいんすよー、指示役のペットのマリー様っ……」

 

そう言った直後、ボコッという音とともにその獣人の顔の半分がなくなった。

同時に赤い液体が飛び散る。その後を銃声が追ってくる。

 

相手方の本隊が戻ってきたようだ。

 

余裕をかましていた実行役たち、遠距離からの突然の銃撃にあたふたしだす。ほどなくして銃撃戦に。

 

敵からの発砲音がどんどんと増えてくる。かなり威力の高い弾丸を使っているようだ。しかも精度が高い。

物陰から覗いてみると、人間の銃撃手がしっかり狙いをすまして射撃していて、勢い任せの乱射とは違う。

人数も私たちより多そうだ。こちらの人数がどんどん減っていく。焦る。

 

銃弾が飛び交う中、部屋の壁を盾にしつつ、リーダーは私に命令をした。

 

「マリー、今から君に命令する。ターゲットのブリーフケース、その中身を何としても首領の元へ届けてくれ。入れ物のブリーフケースは俺が持つ」

「え、リーダー、それって」

「ああ、俺がおとりになって引き付ける。もう他の実行役のヤツらはターゲットのことなんか考えてないだろうしな」

「でもそれじゃリーダー……」

「おいおい、俺が死ぬって思ってないだろうな。生き延びるに決まってるだろ、ずっと引きずり回してやるさ」

「……了解」

「よしっ、じゃあ今すぐ行け。援護する。途中で別々になるからな」

 

リーダーは、ブリーフケースを懐に差し込み、利き腕でライフルを撃ち、遠方の敵を屠っていく。

隠れて急襲してきた敵は、逆の腕の腕力と爪で建物の壁ごと突き抉る。

 

建物の裏手に廻った。そこは今のところ銃声が聞こえてこない。表側で激しくやりあっているので、まだ相手がここまで来ていないのかもしれない。

 

裏口ちょうど辺り。出口付近は狙われやすいので周りを確認する。

私はミンク、リーダーは豹、いずれもタペタムを持つ夜間でも視える目をもっている。

見える範囲では、敵はいないようだ。

言葉を交わす

 

「拳銃は忘れてないな、マリー」

「大丈夫、持ってる」

「よしっ、任務成功を祈ってるぞ、行ってこい」

「了解、リーダー。また後で」

 

外へ出た。四足走行で一気に走る。

 

しかし一発の銃声とともに銃弾が私の右後足元をかすめる。

 

やばい。一瞬止まりかけたが、だめだ!走り抜けなきゃ。

 

続いて二発目、三発目と銃声がなる。

 

すると四,五発目は別の銃声がした。そしてその後数十発の銃声が交わり、ドサッと落ちる音が数回。そして沈黙した。

 

銃声を背に、私は走り続け、建物の近くの木の陰に入った。荒い息が止まらない。

 

息を落ち着かせる間、先ほどの銃声を思い返す。最初の三発は相手の銃声。建物の屋上にいたのだろう。やっぱり上に敵は来ていたか。

 

次の四,五発目は私がよく聞いている音。つまりリーダーからの銃声。その後は銃声が入り混じった。つまり撃ちあいになったということ。重い何かが落ちる音がした。そして近しい所からの銃声はなくなった。

 

最悪のことを考えた。

 

しかしその考えがよぎった直後、よく聞く発砲音がまた数発。

よかった!! さすがリーダー……

 

「リーダー、どうかご無事で」

 

安心し、息が整ったところで、再出発。早くここから離れてターゲットを届けないと。再び四足で森の中を駆け抜けようとする。

 

そんなとき、思ってもいなかった最悪のことが起きてしまった。

 




銃や戦闘などの知識等は全然ありません。間違っていたら生温かい眼でご指摘などお願いします。
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