社長のマリーさん   作:雪須

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アニマシティにて

この出来事から逃げるように、私は拠点を変えた。

 

ちょうどアニマシティという獣人の街が日本にできたという話を聞いたので、そこを新しい拠点に。

 

人間の街では、獣人はどうしても裏社会に行ってしまうが、アニマシティならばみな獣人、表社会でやっていけるかも。

そう期待した。

 

だが実際に来てみたら、ほとんどが裏稼業のヤツ。裏がいっぱいで、それが表という残念な状態。堅気の職は結局できず、昔の稼業で稼ぐことになって今に続いている。

 

その中で、物品の収奪なんかは、よくある依頼。

競合相手の秘匿資料や商品サンプル、ゆするための証拠、などなど。これらを入手する依頼なんだけど。

 

色々な品物の収奪をやったが、変わったところじゃ数年前、とある宗教法人が所有していた御神体の収奪なんてのがあった。

 

大元の依頼主は、どこかの研究所。

 

なんでも、その御神体は他の動物や人間など、何にでも変身できたという伝説のある狐のミイラとのことで。

人間との間に子供すら作ったらしいけど、そんなこと今の世の中、信じる奴っていんのか?ってものだった。

で少ししたら、同じような伝説のある狸の御神体の収奪も依頼してくるし。

 

獣人?とも思ったが、それでも獣人の獣人態は一種だけのはず。他の獣種にも変身できる獣人なんて見たことない(おとぎ話ではありそうだけど)。

 

まぁそこそこのお金を頂いたのにこう言っちゃなんなんだけど、依頼主そんなもの手に入れてどうすんの?頭大丈夫か?と思ったものだ。

まぁこっちもプロだから、ちゃんと完遂するんだけどね。

 

その他、運び屋、etc…… こっちの方が堅気の仕事より儲けがいいから、もう辞められないだろうな。

 

やっぱり私にはこの業界から離れられないようだ。とりあえず、お金万歳。

 

アニマシティに来てから9年近くたった今も一応現役。

依頼があればやっている状況だ。

 

今は主に一人、時に部下の従業員二人を入れて三人。

もう大人数のグループで責任をもって実行するというのはまっぴら御免。

 

リーダー、首領、そして他のみんな。すみません、まだ生きてます……

 

って、あーっ、もーっ、いっつもめっちゃ凹むのに何でまた思い出してんだろ。やめよっ!

今生きているし、お金稼げてるし!

溜め込んでまたヘンなもの出さないように、明るく行かなくっちゃ。

 


 

日も西に傾きかけた時間帯。

 

「さぁて、いつもの場所に行きますか」

 

マリーは、スマホからダイレクトメッセージで操舵手と機関士の二人を呼んだ。

気が向くと小銭稼ぎをしに行くのだ。

 

やがてマリー、呼び出された従業員二人は、船に乗ってどこかへ移動していく。

たどり着いた先は、アニマシティへと通じる道、その脇の茂みの中。

 

その道は人間の街からアニマシティへ逃げようとする獣人たちが必ず通る場所。

そしてその獣人たちを叩きのめそうと待ち伏せする獣人狩りの人間どももいる場所。

 

マリーはそこで愛のボランティア活動をするのだ。

獣人狩りから救う愛はノープライス(技術料別)。

 

今日も、一人の獣人が獣人態で道を駆けてくる。走るのは道路上だったり、ガードレールの上だったり。

その後ろには人間の乗ったバイクと車。

釘の刺さったバットやボウガンなど碌でもないものを振り回している。

 

「あー、追い立てられてるわねー。獣性は……アライグマかしら?あ、道から落ちた。まぁ大丈夫でしょ。さぁ行くわよ」

「OK」

 

操舵手と機関士がついてくる。小さい声で狩りじゃ、狩りじゃ、と呟きながら。

 

操舵手と機関士の顔がニヤけているのは、この前のやり足りなさが来ているのかもしれない。()ってしまわないように気を付けてないと、面倒くさいことになってしまうな。

 

獣人が転がり落ちた辺りに行くと、その獣人、そしてそれを囲むように人間の一群が。

この後、この人間たちのすることは決まっているので、マリーはささっと割り込む。

 

「あのー皆さん」

 

その子は私のお客人。もうおよしになったら?とマリーは提案をしようとする。

そんなマリーに、獣人狩りの一人がボウガンを撃つ。

 

まぁ予想はできたし。

さっと避けるマリー。獣人態に変身していなくとも、挙動から回避はできる。

相手はやっぱりただの素人。

 

が、いい口実ができた。

 

獣人態に変身しながら啖呵を切る。

 

「いきなりなんて、無礼じゃない!!」

 

啖呵を切ったのと同時に、操舵手と機関士の二人も獣人態になって、獣人狩りの一団に襲いかかる。

脚で蹴り飛ばし吹っ飛ばす。

被っていたバイク用ヘルメットの開口部に正拳を放ち、ウィンドスクリーンごと顔面を砕く。

 

獣人二人のパワーとスピードに五人以上いた集団はほんの数十秒で全員のされてしまった。

ただのお遊びでやってる人間はとても弱い。

今は季節もいいから、このまま放置しとこう。

 

マリーは追い立てられていた獣人を見る。歳は10代後半ぐらい。アライグマではなくタヌキの女子だ。

マリーが話しかける。

 

「大丈夫、この私がついているから」

 

その言葉に、タヌキ女子が怪訝な顔をして返事をする。

 

「なんか怪しい、後からお金とるタイプでしょ」

 

あらやだ、この子、ちゃんと見抜いているわね。

うん、大丈夫。こんな状況でこれだけ可愛げのない言葉を言えるなら、アニマシティでも十分やってけそう。

んじゃ、お言葉通りに遠慮なく言っとこうか。

 

大きくうなずき、マリーは言った。

 

「んじゃあ、有り金全部頂こっかなー」




Netflix本編1話につなげてみました。
お読みいただきありがとうございました。

後ひとつ、後日談がありますので、
よろしければそちらもよろしくお願いします。
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