【完結】走れないTS転生ウマ娘は養護教諭としてほんのり関わりたい   作:藤沢大典

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主人公視点


Case19:養護教諭の夏合宿

肌を焼く陽射し。

視界一杯に広がる海。

寄せては返す波。

白い砂浜。

 

そして水着。

ウマ娘ちゃん様の水着姿。

 

皆様どうもこんにちは。メルテッドスノウでございます。

さてさて、ゴールデンウィークの入院騒ぎから特に何があったわけでもなく至って普通に退院し、至って普通に学園生活に舞い戻って来ておりましたわたくしなんですが、冒頭のモノローグでお気付きの聡明な方もいらっしゃることでしょう。

わたくし現在、とあるチームの夏合宿に同伴させていただいております。

夢かな?

 

わたくしはそもそも学園付きの職員ですので、本来ならば合宿に行くなぞ夢のまた夢。

特にそれを不満と思うわけでもなかったので気にも留めていなかったんですけど、今回は学園&生徒会共同による査察とやらで、わたくしがご一緒させていただくことになりました。

 

どうにも普段と異なるトレーニング環境とメニューなせいか、生徒達の怪我の発生率が高いようだとのことでして。

とは言ってもトレーナーも無茶させてるわけでは無いので軽度熱中症や打ち身、軽く足首を捻るといった『休んでいれば当日中に治るレベル』らしいのですが、学園としても無視する訳にもいかないらしく。

何かしら対策を立てるために現場を見てきて欲しいと言う話になり、たづなさんからわたくしに白羽の矢が立ったわけでございます。

そういう事ならばこちらとしては願ったり叶ったり。もし脚部不安とかがあるのならそんなことを感じることなくトレーニングに専念できるよう微力を尽くすのがわたくしの使命(おしごと)です。

 

1週間ごとに各チームを回っていくとのことでして、トップバッターはてっきり最大手のチームリギルあたりだろうと思いきやまさかのチームスピカでございます。

うっひょう、主人公チームついにキマシタワー!

 

というわけで前日からワクワクして寝られない小学生状態だったわたくしですが、いざ合宿の練習風景を見ていると別の意味で興奮が冷めません。

 

肌を焼く陽射し。

視界一杯に広がる海。

寄せては返す波。

白い砂浜。

 

そして水着。

ウマ娘ちゃん様の水着姿。

ウマ娘ちゃん様の水着姿。

ウマ娘ちゃん様の水着姿。

 

あーーーーーー!!

あーーーーーーーーーーーー!!!

 

覚悟はしていましたが、やっぱりかなり心にクるものがあります。

タンキニ型と呼ばれる、下がハーフパンツ状で鼠径部のラインを隠して各方面に配慮されたデザインのスクール水着でございますが、それでも肩を大幅に露出させ、水の抵抗を小さくするために極力肌に張り付くような作りのそれは、アスリートとして引き締まった肉体美を余すところ無くさらけ出し、とてもとてもダイレクトに視覚から精神を攻撃してまいります。

24時間とは言いませんが、トレーニング中はずっとそんな格好をしているウマ娘ちゃん様達に囲まれるわけで。しかも借り切った同敷地内に複数チームが同時に合宿しているらしく、トレーナーという一部例外を除いてどこを見てもウマ娘ちゃん様達しかいないわけで。

 

なんと……なんと素晴らしい……。

天国、極楽、ニルヴァーナ。

もうね、いけません。出来る限り冷静になろうと出来得る限りテンション上げずに淡々と語ったにも関わらず、溢れるリビドーが全く抑えられていません。

このままではとても正気を保っていられそうにありませんので、一度海に向かって叫んで発散しときましょう。

ただし心の中で。大声出せませんし、何より声に出せるようなシロモノではありませんので。

せーの。

 

ちちしりふとももーーー!!!!!!

 

……ふぅ、ちょっぴり落ち着いた。危うかった。

わたくしが色香に負けて正気を失うなど唾棄すべきことです。あってはいけないことです。万が一そうなってしまった時はこの腹かっ捌いて自ら畑の肥やしになりに行く所存です。

出来ればやりたくないので頑張れマイ鋼の意志。

 

というわけで毎日SAN値がゴリンゴリンと鬼おろしで削られているわけなんですが、さてお仕事の方はどうなのかというと、とてもありがたいことにメッチャクチャ暇です。

統計的に発生率が高いとはいえ、実際に怪我なんてそうそうあるものでも無いようで。それにチームスピカの面々はベテランなだけあって自己管理もしっかりしていますので尚更です。

……あれ、これもしかしてたづなさんとルドりんに担がれた可能性ありません? 実は怪我が多いとか言うの、建前だったりしません? 単純に夏休みを貰ったような感じなんですけど。

 

そういった訳で特にやることも無いわたくしは暇潰しを兼ねて、メンバーのトレーニングのお手伝いなんかをさせてもらっています。

今日はスタミナ強化ということで長距離ランニングです。スタート&ゴール地点にトレーナー、折り返し地点にわたくしを配置して時折休憩しながらそこを何度も走り込む、といったものとの事です。

 

わたくしに課せられたのは、ビーチパラソルの下でドリンクと濡れタオルを詰め込んだ大きなクーラーボックスを脇に、ビーチチェアに腰かけながら水分摂りつつ、時折やってくるみんなを激励するお仕事です。

……ほぼほぼただのバカンスじゃんねこれ。

まぁ泳ぐ予定も走る予定も無いのでわたくし自身は当たり前のように普段着ですけど。

いつもと違うと言えば白衣を着てないことと帽子を被ってることですかね。髪の色が暗色系なので熱溜めやすいんで。

 

それと流石に砂浜じゃ移動不可なので車椅子は近くにありません。ここまでの移動も設営も全てチームのみんながやってくれました。

わたくしを運ぶために何故かゴルシちゃんが麻袋を被せようとしてきましたけどみんなに止められてました。

で、ウオすけにおんぶしてもらって運ばれてきたんですが、わたくしの身体前半分と彼女の身体後ろ半分が激しく密着して歩く度に擦り付けられてそれはそれでSAN値直葬一番搾りでしたので、結果としては俵担ぎされてた方が精神的にはマシだったのかも知れません。絵面的には最悪ですけれど。

 

まぁそんなわけでして、身を焦がす直射からパラソルと帽子で身を守りつつ、キラキラ光る水面を眺め、さざめく波の音を聞きながらみんなが来るのを待っているわたくし。

少し前にスタートしたとトレーナーさんから連絡も頂きましたし、そろそろ誰か来るんじゃないかな。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「っだあああああああっしゃあああああ!!」

 

「まあぁけえぇるうぅかあぁあああああ!!」

 

最初に聞こえてきたのは言わずもがな、格好良さを求めるくせに可愛さが天元突破してるウオすけことウオッカちゃんと、ティアラがとても良くお似合いのツインテツンデレないすばでー、実質ギャルゲヒロインのダイワスカーレットちゃん二人の叫び声アンド激しく砂を巻き上げる走行音。

おい二人とも、まだトレーニング始まったばかりなのにいきなりそんな飛ばしてて大丈夫なのか。

 

「二人とも、お疲れ」

 

「はあっ、はあっ、スカー、レット、俺の、勝ちだ……!」

 

「ふうっ、ふうっ、まだ、まだ、これから、よ……!」

 

ねぇ、長距離トレーニングって分かってる?

あっダスカさん、ごめんなさいその膝に手をついて前屈みになって息する体勢止めて下さい。ダスカさんのダブルダスカさんが息する度にゆっさゆっさしてるの強調されちゃってますので眼福です待って違うちゃんと仕事しろソッチに行くな帰って来いわたくし。

 

「ほら、水分、摂って。がんば」

 

「サンキュ、先生……んぐっ、んぐっ」

 

「……ぷはっ! こっから先は全部アタシが勝つんだからね!」

 

二人にクーラーボックスから冷えたスポドリを差し出します。

まだ始まったばかりなのにそんなに汗かいて。水分と塩分はしっかり摂れよ二人ともー。

 

「ハッ、そのセリフそっくりそのまま返してやるぜ!」

 

「わー声が大きーい。ビッグマウスも程々にしときなさいよ、後で恥かくのはあんたなんだから」

 

「「ぐぬぬぬ……」」

 

睨み合う二人。わー、どうして公式カプってこう尊さに満ちてるんでしょう。

お互いに相手を上回ろうと切磋琢磨し合う理想的なライバル関係。こんなん推すなって方が無理です。仲良く喧嘩しな。

 

「どりゃあああああああぁぁぁ……」

 

「たあああああああああぁぁぁ……」

 

どちらが合図したわけでもないのに同時に再びダッシュする二人。

頼むから倒れるなよー?

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「スカーレットもウオッカも元気だなぁ……本当に長距離トレーニングだって分かってるのかなー?」

 

「お二人とも、相変わらずですねー」

 

先程の二人が豆粒くらいに遠ざかった頃に来たのが、長いポニーテールが萌え可愛いはちみー狂のテイテイ、トウカイテイオーちゃんに、三つ編みハーフアップの似合い方が尋常ではない、異次元の腹を持つ日本総大将のスペシャルウィークちゃんです。

アニメ一期と二期の主人公が揃ってやって来ましたよ、と。

あーもうこの絵面が見れただけで死んでもいい。死にませんけど。

 

「お疲れ、テイオー、さん、スペちゃん」

 

「やっほセンセー」

 

「スノウ先生、どうもです」

 

この二人は駈歩といったペースで無理なく走っています。

ちゃんとトレーニングの趣旨を理解したペースですね。いやそれが普通なんですけど。先の二人がアカンのですけど。

 

「水分、摂っとく?」

 

「ボクはまだいいかな。まだ身体あっためてるレベルだし」

 

「私も大丈夫です。ありがとうございます」

 

「ん」

 

実際、二人ともまだまだ大して汗もかかず余裕がある感じです。

まぁ長距離トレーニングですしキツくなってくるのはこれからでしょう。がんばえー。

 

「さっ、そろそろ行こうかな。マックイーンも脚が治ってからどんどん調子戻してきてるし、ボクもうかうかしてられないモンニ」

 

「私も早くスズカさんに追いつけるようにならなくちゃ。じゃ、行ってきます先生」

 

「行って、らっしゃい」

 

嬉しそうに二人はそう語って再度走って行きました。

仲間の復帰を素直に喜ぶその姿、実に眩しいですね。はぁ尊い、尊すぎる。良いぞー。その表情を拝むためにこの仕事に就いたんで、もっと供給お願いします。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「よっす先生。景気はどうだい?」

 

その後にやって来たのが解説さんに悲鳴を上げさせた伝説のウマ娘、すなわちゴルシちゃん。

彼女らしいスロースタートで、息を切らせてる様子は全くありません。

なんだかんだ言って長距離レースでロングスパート出来る力を持つ娘なだけあって、スタミナ管理はバッチリなのでしょう。お見事ですね。

 

「ぼちぼち、でんなー」

 

「そっか。何かあったらすぐ呼べよ。かっ飛んで来てやっから」

 

そう言い、シュッシュッと口で言いながらシャドウボクシングを披露するゴルシちゃん。

結構サマになってるんですけど、何でパンチの時じゃなくスウェーする時にシュッて言うんです?

ってか動きがだんだんデンプシーロールになってきてるぞこいつ。ええい無視だ無視。ツッコんでいたら切りが無い。

 

「ん。ゴルシちゃん、飲み物、いる?」

 

「いや、まだいらねーわ。この後しんどくなってくるだろうしな」

 

確かにトレーニングはまだ始まったばかり。この夏の暑さと、砂浜という足場の悪さがどんどん体力を削っていくでしょう。倒れないように気をつけて下さいね。

 

「ん。がんばって」

 

「おう、今年こそゴルシちゃんの年だって分からせてやるぜ。それと遅くなっちまったが先生には今度、マックイーンの分のお礼参り計画中だから楽しみにしとけ」

 

そう言い残してゴルシちゃんは再び走っていきました。

……まぁ、ゴルシちゃんにはバレてますよねそりゃ。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「ふっ、ふっ……ふぅ」

 

ゴルシちゃんとすれ違う形でやって来ましたのはすみれ色の艷やかなロングヘアを靡かせるウマ娘、メジロマックイーンちゃんです。

正真正銘、生粋のステイヤー。こちらも全然疲れた様子は見えません。

ペースはややゆっくり目ですが、ここ最近までは療養期間で衰えてしまっていた筋力や体力を取り戻すことに重点を置いていたようですし、妥当なペースと言えるでしょう。

普段から主治医監修のもとで無理のない自主トレーニングも続けているようですし、恐らくこの夏合宿で本来の力を完全に取り戻すと思われます。

素晴らしい。実に素晴らしい。

 

「マックイーン、さん。お疲れ様」

 

「まだまだ、この程度は準備運動ですわ」

 

実際全く呼吸は乱れてませんし、フィジカル面はほぼ全盛期の力を取り戻しているようですね。

ファサッと髪をかき上げるパクパクさん。実にお美しい。

水着姿でも溢れる気品と優雅さを損なっておりません。

あ、水着姿やば……萌える。たまらん。

いかんいかん、お仕事モード側に意識を集中させませんと。

煩悩退散、どーまんせーまん。

 

「あれから、脚は、大丈夫?」

 

「ええ、むしろ以前より調子が良いくらいですわ」

 

「それは、良かった」

 

約半年前、バレンタインの時にメジロの方々にはわたくしの能力をバラしています。

ただし、転嫁能力としてではなく治癒能力として。そして一切の他言を許さないという条件で。

そしてその上で、とある要望をメジロ家に後押ししてもらう代わりとしてパクパクさんの繋靭帯炎を回収(なお)させて頂いております。

本当はこういった使い方はしたくは無かったのですが、ちょいとわたくしの野望達成には独力での限界がありましたので、権力やら何やらに頼るため止むを得ませんでした。

 

「本当にありがとうございます、スノウ先生。こうして練習に打ち込めるのも、先生のお陰です」

 

良い良い、気にすんな。お礼なら当時に死ぬほど貰いましたよ。

治した時に真顔のままボロボロ泣かれた時は超焦りましたわ。

助けを求めようと周りを見たら主治医さんも執事さんも同じように真顔で泣いてるんですもの。

え、ご当主様はどうだったかって? それを聞くのは野暮ってもんですよ。

 

「いいって。それより、まだ先は、長いよ?」

 

「そうですわね。それではまた」

 

「ん」

 

軽く足首をほぐした後、再び走り出すパクパクさん。その表情はとてもとても晴れやかです。

真夏の陽射しの下、清々しい面持ちで真っ直ぐに前を見据え、波打ち際で水飛沫を上げながら砂浜を走る、スクール水着姿のパクパクさん。

うーんこれはSRスチルものですね。あざまーす!

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

さて、これでメンバーが一通り1巡しましたね。正確には0.5巡ですけど。

けどこれ、何往復するつもりなんでしょうかトレーナーさん。特に終わらせるタイミング聞いてないんですけど。

 

……んえ? メンバーが足らないですって?

そうですね、もう1人のスピカメンバーであるサイレンススズカちゃんは去年のテイテイが勝った有馬記念を観戦後、再び海外遠征に戻ってしまったんです。年末には戻ってくるらしいですが。

アニメでヤバげな骨折してたので念の為にも状態確認しておきたかったのですが、未だに直接はお会いできていません。

その後の戦績を見る限り不安は無さそうですけど念の為にね。

え、もし何か見つかったらどうするのかって? 言わせんな恥ずかしい。

 

「お、あんなとこに超可愛いコいるジャン」

 

「な? マジヤバイだろココ。超穴場なんだって」

 

あれ? 男の人の声?

そちらを見やると、黒く焼けた肌に染めた髪、トランクスタイプの水着にピアスやネックレスと、さも遊んでますといった風貌の男性が二人。誰だこやつら?

スノウちゃんブレインが学園関係者リストから検索しますがヒットしませんでした。部外者かな。

一応、合宿を行うにあたって周囲一帯は学園の貸し切りになっているはずです。マスコミ対策や一般人対策の為に。

 

「だな。お嬢ちゃん一人? お兄さん達と遊ばなーい?」

 

「マジ退屈させないから、一緒に遊ぼうぜー?」

 

わたくしに近寄りながらそう言ってくる二人。

ふむ。この場所に勝手に入っているという現状だけでもブラック判定ですが、貸し切りだとは知らずに迷い込んだ可能性も若干残っています。

とはいえウマ娘ちゃん様でも知り合いでも無いこやつらに優しくする理由はありませんので、強めに退去勧告させてもらいましょう。

 

「……ここは、関係者、以外、立ち入り、禁止。今なら、咎めない、から、すぐ、出ていき、なさい」

 

「おーこわっ。お嬢ちゃんもトレセン学園の生徒? 超可愛いネ!」

 

「ちょっとくらいサボっちゃってもマジバレないって。てかLANEやってる? マジ交換しよ?」

 

ぐぬ、声量が出せないので大して効いていない。

うざいですねぇ……。てか話聞けよ。

世間一般ではイケメンに分類されそうな二人ですが、こちとらヒト息子に興味はこれっぽっちもナッシングなのでゲスよ。

 

「だから、あなたたち」

 

「ほらほら、せっかく海来てるんだし遊ばなきゃ勿体ないって」

 

だから話を聞けってのナンパ野郎ども。

 

「うわ、マジ手ぇ細っ、白っ。綺麗な手ぇしてんねマジで」

 

「ちょっ」

 

一人がいきなりわたくしの手を掴んで立ち上がらせようとグイッと引きました。

当然立つことの出来ないわたくしは急に接触されて身体が強張ってしまったのと、頭が軽くパニクってしまったせいで受け身を取ることも叶わず。

 

「ぶべふっ」

 

砂浜に顔面ダイブ。

……おかげで冷静になりパニックからは復帰しましたが、何してくれてんねんコラ。

 

「ちょっ、足痺れてた? ウケんね」

 

「マジ大丈夫? 一緒に休めるとこ行く?」

 

人が倒れてるのを見て『ウケる』だと? 貴様らがやったことに対して悪びれる様子も無いだと? あまつさえご休憩できるような場所に誘い込んであんなことやこんなことをしようとするだと?

その上これ、無差別なナンパだよな? もし当事者がわたくしじゃなかったら他の娘にこういうやりとりしようとしてたってことだよなぁ?

可愛いくて愛しくて尊い存在であるウマ娘ちゃん様達にこんな下衆なナンパしようとしてたってことでファイナルアンサーなんだよなぁぁァ!?

ゆ゛る゛さ゛ん゛!!

 

「……警告は、したよ」

 

そう短く言って、わたくしは首から下げていたアクセサリーの紐を引き抜きます。

 

«ビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビビ!!»

 

大音量で響く電子的なアラーム音。

ええ、防犯ブザー発動です。

 

もともとわたくしが倒れてしまった時に誰かに発見してもらう為の爆弾対策として身に着けていたのですが、まさかこういった本来の使い方をすることになるとは。

 

「え、いやちょっ、そういうの無しだって」

 

「それ止めてマジで。マジヤバいからマジで」

 

ふははははもう遅いわー、そぅれ誰かが来るぞ、捕まりたくなければ今の内に尻尾を巻いて逃げ去るがよいわー。

 

「おう、マジヤバいぞ。まぁもう既に手遅れだけどな」

 

「貴方がた……ウチの先生に何をしていますの……?」

 

……あ、ゴルシちゃんとパクパクさん来ちゃった。

よりによってこの二人とは……かわいそうなナンパ君達。

声のトーン低いっすよお二方。こえぇ。

 

「えっ、うおお、超絶美人が二人増えた! 超パねぇ、激烈パねぇ!!」

 

「やっべ、マジやっべ。ねぇねぇ三人ともマジ一緒に遊ぼうぜ? マジ絶対楽しいからマジで」

 

この状況でまだナンパ続けるのかよメンタルすげぇなぁこやつら。まあもしかしたら現実逃避かも知れないけれども。

 

「あい分かった。辞世の句はそれでいいんだな?」

 

バキリボキリと指を鳴らすゴルシちゃん。

 

「……えぇ、そのように。宜しくお願い致します」

 

どっかに電話してるパクパクさん。

 

「「……ファッ?」」

 

南無。だが同情はせん。

 


 

その夜。砂浜の一角にて。

 

――ザザーン

 

「昼間の娘たち、メッチャ美人だったな」

 

「マジヤバかったな」

 

――ザザーン

 

「ところでさぁ……首から下、砂に埋もれて完全に動けなくね?」

 

「マジヤバいな」

 

――ザッパシャーン

 

「……さっきより海の水、近寄ってきてね?」

 

「マジヤバいな」

 

――ザザーン




■ちちしりふともも
ウマ娘作品でこのワードを使っていいものかどうか、かなり悩みました。
出典元もギャグ漫画ですので、どうか面白ワードの一つということでご容赦いただきたい。
おキヌちゃん可愛い。マリア可愛い。小竜姫さま可愛い。

■デンプシーロール
とあるボクシング漫画で主人公が使う必殺技的な動き。
上体を∞の形にスイングしてその勢いを乗せて重い連続パンチを叩き込みます。
練習で堤防に丸太を根本まで打ち込んでいた描写があり、こいつ人間じゃねぇ……とか思いました。

■解説さんの悲鳴
アニメに解説役として出演されている細江さんが、2015年の宝塚記念の120億円事件で思わず上げてしまった悲鳴をそのままOVA版で大阪杯の中で再現したらしいですね。なんでも当時はその件でレポーターの仕事をクビになりかけたとか何とか。本当にご愁傷様です。
当然ゴルシ自身にも非難の声は上がったらしいですが、往年のファン達による「ゴルシを信じた奴が悪い」の一言で締めくくられるというエピソード好き。
またこういった場合には騎手や調教師などが責められがちなようですが、彼らにはむしろ同情的・擁護的な声の方が多かったというのも好き。

■雑記(2023/07/21)
ナンパ野郎が使ってる『ウマイン』という得体の知れない謎アプリを公式の『LANE』に変更しました。
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