【完結】走れないTS転生ウマ娘は養護教諭としてほんのり関わりたい   作:藤沢大典

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主人公視点。

ナリタブライアンは筆者がまだ競馬もよく知らない頃に一番最初に認識した馬名でした。


Case05:養護教諭とナリタブライアンたち

季節は遂に夏真っ盛り。ここ中央トレセン学園でも連日の猛暑・酷暑によって、午後のトレーニングは暑さのピークを過ぎた15時以降の開始を推奨される程度には危険な暑さが続いております。

どうもお暑うございます、メルテッドスノウです。

 

さて、というわけで夏がやって参りました。

夏といえば皆様お分かりですね、そう、夏季合宿でございます!!

 

本格化を迎え終え、ある程度シリーズのレースにこなれたウマ娘ちゃん様達が、更なる飛躍を目指して挑む強化合宿。普段とは違った環境、違った訓練法で集中的にトレーニングを行うことで大きく力を伸ばす期間です。

またチームメンバー達だけで過ごす長期合宿は、炊事洗濯掃除も含めて全て自分達の力で行うため、チームの結束力を高める絶好のイベントでもあります。

 

そして、何より最も注目すべきこと。それはもちろん、水着! そう、MI・ZU・GI!! スイムウェアー!!! でございます。

学園でもプール訓練時にはその姿になりますが、合宿期間中のトレーニングは基本水着姿! もうね、いけません。いかに昨今のスクール水着がセンシティブに配慮したデザインになって来ていても、どうしたって普段の姿より顕になってしまうそのボディライン、全体を占める肌色率。意識するな見るなって方が無理あるに決まってるでしょおがあああああ!!!

ですが! 決して相手に不快な思いを抱かせるのはいけません。お触りはもちろん、ジロジロと眺めるのもNGです。イエスウマ娘ノータッチの精神で常に心は紳士に! セクハラ野郎は潰れてくたばれゴミクズがぁぁぁっ!!

 

おっとっと軽く脱線しかけてしまいました。いけませんね、それもこれも夏の魔力がわたくしの胸を刺激してしまうせいです。生足魅惑のマーメイドです。

話を戻しましょう。そんなウマ娘ちゃん様達と自由時間にはビーチサイドでキャッキャウフフする可能性がワンチャンあるかも知れない、そんな合宿にわたくし!

 

行けておりませぇん!

イエエエエエエエェェェェェェェェェイ!!!

 

……や、冷静に考えればそうですわ。わたくし別にチームの専属とかじゃないですし。よしんばどこかのチームに付いて行ったとして、砂地を車椅子で動けるわけが無いんですよね。

夏季合宿の参加条件はデビュー後のクラシック級以降から。それ以前だと本格化を迎えてなかったり基礎が出来上がってなかったりして身体の方が合宿メニューに着いていけず、変な癖がついたり怪我したりしちゃいますので基本的に参加出来ません。

アプリで1年目に合宿無いの何でだろーとか思ってましたけどそういう理由だったようですね。

 

そう、つまり夏季合宿は臨海学校のように全員が行くものではないので、学園は夏休みを除いて通常通り開かれているのです。

もちろんわたくしは学園付きの職員ですので、今日も今日とて保健室でのんびりおやつタイムを楽しんでおります。

この間食堂から何か新メニューの案は無いかと聞かれ、適当に提案したところ先程サンプルを持ってきてくれましたので、水出しアイスコーヒーと共に食べております。

周りの声をすぐに取り入れて実行に移すその精神、流石トレセン学園の職員ですねもぐもぐ。そしてやっぱり食堂の料理は美味ぇでございますもぐもぐ。

 

――タッタッタ

 

そんな時に、スノウちゃんイヤーがここ保健室の方へ走って向かってくる足音を拾います。

急患かな? いやでも軽やかな足音的に誰かを担いでる感じでは無さそうなので患者のところにわたくしを呼びに来たとか?

ガラリと戸を開けたと思いきや、中に入って来るなり後ろ手ですぐにピシャリと戸を閉めたのは、艶やかな黒鹿毛を注連縄っぽい紐でポニーテールにまとめ、鼻にテープを貼った学生です。なんか良く分からない草を高楊枝のように咥えています。

 

ナリタブライアン。

『シャドーロールの怪物』とも呼ばれた彼女。

 

アプリ版では基本的に他者を寄せ付けない寡黙で不遜な態度を取る一匹狼気質が強い彼女。ですがアニメ版では感謝祭での仕事をなんやかんやでしっかりこなし、子供たちに群がられたりと、要所々々の表情も柔らかく頼れる姉御感満載のウマ娘です。

それなのに妹キャラとか凄すぎない? 彼女の私服ってお姉ちゃんのセンスとよく似てます。もしかしてお下がりなのかも? たまんねぇなぁそういうのもっとちょうだい。

でも彼女ってチームリギル所属だったと思いましたけど合宿は? 生徒会優先で学園にいなきゃいけないとかなのかしら?

 

「すまん、何も聞かず匿ってくれ」

 

開口一番、彼女はそう言います。事態は全く分かりませんが、まぁそれは後々彼女が落ち着いて話せる状態になってからでも良いでしょう。

何よりなんか面白そうなのでとりあえず全力で乗っかります。わたくしはベッド側にある窓に目線を投げながら短く指示します。

 

「……窓を一つ開けて、そこのベッドの下に」

 

やや怪訝そうな表情をされましたが、素直にわたくしに言われたまま、窓を開けてベッドの下にさっと滑り込みます。

そうして遅れて数秒後、またしてもこの部屋に駆け込んでくる足音が一人分。ただし今度の足音の主は部屋の前で立ち止まった後にノックしてきました。

入室を促して中に入ってきたのは高身長の美人さん。ボリューミーな芦毛のウェービーロングに赤いハーフリムの眼鏡を掛けた、『眼鏡が似合うインテリ系ウマ娘』ランキング第1位(スノウちゃん調べ)ビワハヤヒデさんです。

このランキングに関しては幾らでも異論を述べるが良い! わたくしはその全てを受け入れよう!!(突然の魔王ムーヴ)

 

「失礼する。高等部のビワハヤヒデだ」

 

凛とした声で名乗る彼女。うむ、良いですね良いですね。可愛い系のウマ娘ちゃん様達には愛でたくなる情動が溢れますが、こういった格好良い系の方々には全てをお任せしてリードしてもらいたい気持ちになっちゃいます。お姉様とお呼びしても?

 

「突然申し訳ないが、ここにブラ……ナリタブライアンは来なかっただろうか? 黒髪の、鼻にテープを貼った奴なのだが」

 

そんな脳内欲望駄々漏れのスノウちゃんなどお構いなしに、ハヤひーは言葉を続けます。やはり先程のブライやんを追っかけて来たみたいですね。

まぁここでバラしてしまうのもそれはそれで面白いかもしれませんが、約束通り匿わせていただきましょう。ごめんねハヤひー。

 

「ん、来た」

 

短くそう言い、目線を開いた窓へ向けます。自然とハヤひーの目線もそちらに向きます。視線誘導することでベッド下には意識が向かないよう仕向けます。

ここでのポイントは、わたくしの言動には一切嘘が無いことです。

ブライやんは確かに来ましたし、わたくしは開いている窓を見ただけです。その後何処に行ったかを言ってないだけです。

ですが、冷房をかけている部屋の窓が開いている不自然さとわたくしの回答にハヤひーは僅かに考えを巡らせ、思い至ります。『ブライアンはこの部屋を通り、窓から外に逃げていった』というわたくしが用意した分かりやすい答えに。

良く言えば手品師のテクニックですが、悪く言えば詐欺師の手口です。悪いわースノウちゃん真っ黒だわー。

 

「くっ、遅かったか」

 

悔しそうに眉間に皺を寄せるハヤひー。うん、ごめんね。多分ブライやんがこちらに何も言わずおもむろに隠れ出してたら教えたかも知れないけど、先にあっちに頼まれちゃったからね、仕方ないね。

 

「邪魔をした、では……まて、何だそれは」

 

この場から早々に出ていこうとしていたハヤひーだったが、わたくしが頂いているおやつの香りが気になったのか足を止めます。うーん、しまった。何でよりによって()()を頂いている時にハヤひーに遭遇してしまったのか。

致し方ない、ここは()()以外に意識が向かないよう気を引きつつ乗っかっておきましょう。ブライやん、もうちょっと辛抱しててね。

 

「これ? ピサンゴレン」

「ふむ……それはデザート、なのか? 何やらバナ……甘い香りがするが」

「ん。簡単に、言うと、()()()()()

「…………ほう?」

 

なんか目の色変わった。前世知識でバナナが好物なのは知ってましたが、本当に目がないようですね。

 

「食堂の、新メニュー、開発で、サンプルの、試食を、している」

 

このピサンゴレンという東南アジア発祥の料理、名前に馴染みは無いと思いますがレシピはびっくりするほど超お手軽です。一口大に刻んだバナナをホットケーキミックスにくぐらせてドーナツのように揚げるだけ。お好みでホイップやチョコをかければそりゃもうパクパクですわの絶品スイーツとなりまする。

 

「よかったら、食べてみる?」

 

皿ごと彼女の前に差し出します。もう彼女の目線はピサンゴレンに釘付けです。完全にロックオンしてます。エース級パイロット並です。いつでもFOX2してきそう。味っ噌ぉ。

 

「良いのかっ!? いや、待て、しかし……」

 

人様の食べ物を横から頂いてしまうことにやや申し訳なさがあるのでしょう。食べたい欲望と人前ではしたないという理性が熱い鍔迫り合いを繰り広げている模様です。ではその均衡を、崩してしまえホトトギス。

 

「意見は、多いほうが、いい。是非、感想、聞かせて」

「そ、そそそういうことであれば、仕方ないな。あぁ、仕方ない。で、では一つ……」

 

はい欲望の勝ちー。てかやば、クール系真面目ちゃんが好物を前にして頬を緩めるってギャップ萌えじゃん。破壊力高いぞこれ。なんかキュンとしちゃう愛しい。

皿を受け取り、数個盛られているピサンゴレンの一つをフォークで突き刺し、ゆっくりと口に運んで行くハヤひー。

 

「はむっ……! ~~~~~~~!!!?」

 

なんか目に星飛んでるぞ大丈夫か? マーベラス空間まで飛んでないか?

ゆっくりと咀嚼し、同じく、ゆっくりと飲み込む。そして漏れる艶めいたため息ひとつ。微かに、んー色っぽい。

 

「……これは、美味い。サクサクに揚がった衣と、中の熱が通って柔らかくなったバナナ。この対比が実に素晴らしい。何より、温かいバナナがこんなにも味わい深いものだったなんて初めて知った」

 

うっとりとした表情で食レポするハヤひー。

じっくりゆっくりと余韻に浸っているようですが、そんなに美味しかったのなら一切れだけでは酷でしょう。

 

「良ければ、全部、食べて。わたしは、もう食べたし」

「!! すまない、お言葉に甘えよう……!」

 

すっかり虜になったハヤひー。

折角ですので最後まで平らげてもらうことにしました。

あのね、仕事出来るOL風美人が眉尻下げて美味しそうに食べてる様って、すっごく尊いの。わたくし、この光景だけでもうお腹いっぱい。はー幸せMAX。

 

「ふぅ、ごちそうさま。……ときに、先程これは食堂の新メニューと言っていたが、これは今後食堂で食べられるようになるのか? いつからだ? 数や期間は限られているのか? レシピは公開されるのか?」

 

すげぇ食いつくなこの娘。

まぁ無理もない。わたくしも初めてこの料理に出会った時は感動したもんだ。それが好物とあれば尚更でしょう。

 

「まだ、選考中。味は、良いけど、見た目が、地味だから、どうしよう、って。レシピも、簡単だから、食堂で、聞いてみて」

「なるほど。ありがとう、いいことを教えてもらった」

「あ、ついでに、バイタル、測らせて」

 

このまま食堂に向かいそうだったので、とりあえずいつものを。

というかブライやんのこと忘れすぎじゃね? いいけど。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「……もう、行ったよ」

「……あぁ」

 

ハヤひーの足音が遠ざかっていくのを確認し、目線を向けないままブライやんに声を掛けます。本人も分かっていたのでしょう、のそのそとベッド下から這い出てきて制服をパンパンと手で払います。

 

「何故、私を匿った?」

 

わたくしの方をじろりと睨み、彼女は尋ねます。いやあんたがそうしてくれって言ったんやないかーいとか思いますけど、特に今まで彼女と接点も無かったわたくしがすんなり匿ったことに疑問の一つも覚えるでしょう。ここは素直に答えておきます。

 

「理由が、分からない、からね。だから、とりあえず、なんとなく?」

「そうか。あんた変わってるな」

 

要求に従ったら変人扱いされたでござる。解せぬ。

くそぅ、逃げた理由如何によっては今からでも引き渡す可能性が微レ存ですぞ。

 

「で、何で、追われてた、の?」

「あんたには関係ないことだ」

「聞く権利、あると、思うけど?」

「くっ……」

 

なんやかんやで匿われた手前、強く拒めず顔をしかめるブライやん。そんな表情を『逃げられたと知った時のハヤひーとそっくりだやっぱり姉妹なんだなー滾るなー』と心の中の単気筒エンジンが順調に回転数を上げます。排気量すっくな。

 

「…………野菜だ」

「ん?」

「姉貴が野菜を食わせようとしてきたから、逃げた」

 

こちらから目を逸らして腕組みして答えてくれます。尻尾もなんだかそわそわと忙しなく揺れています。かーわい。

そういえばこの娘、極度の野菜嫌いでしたっけ。ハンバーガーに挟まれた僅かな野菜すら抜いてしまう程の偏食さん。こんなキリッとした見た目で実に可愛らしい。お姉ちゃんが好きな食べ物でギャップ出してきて、妹ちゃんは嫌いな食べ物で、ですか。何だこの仲良し姉妹は推すぞコラ。

 

「……ふむ。野菜、嫌い?」

「肉のほうがいい」

「なるほど。まぁ、人による、よね」

 

わたくしがそう答えると、ブライやんは意外だと言わんばかりに目を見開く。

 

「……あんたは言わないのか? 野菜を食えとか。養護教諭だし言いそうだと思ったんだが」

「もちろん、食べられる、なら、食べたほうが、いい。けど、嫌々、食べるなら、野菜に、失礼」

 

食べ物というのは文字通り、食べられる為に用意されるものです。ものすごく脱線しそうなのでかなりざっくりとした話にしておきますが、その食材が当たり前のように食卓に出てくるのは、料理の作り手、販売業者、流通業者、生産者の並々ならぬ日々の努力の賜物です。自分一人でサバイバル生活をしているとかいう人でも無い限り、必ず見知らぬ誰かのおかげで我々はそれを口にすることが出来ています。

そういった経緯で眼前に出された食べ物を、まだその辺の道理が理解できないような子供ならまだしも、分別の付いた人間が嫌々食べるというのはわたくしの性分が許しません。出されたものは感謝し、美味しく頂くのが礼儀だと思っています。

好き嫌いをするなとは言いませんが、ありがたみを知らずにさも不味そうに食べたり、捨てたりするのはいけません。わたくしにだって嫌いなものはあります。徹底して調理前に抜いてもらってるだけです。まかり間違って出てきてしまったらありがたく頂きますが。

 

「ふっ、なるほど。野菜に失礼か。やっぱり変わってるなあんた」

 

ほんのり口元に笑みが見られます。けどまたわたくしのこと変人扱いしよった。おかしい。至極まともな一般的意見を述べただけなのに。

 

「……まぁ、野菜は好きじゃ無いが、食ったほうがいいのだろうかと思う時はあるんだ」

 

ぼそっとそんな事を呟くブライやん。まぁお姉ちゃん以外からも言われてるだろうしね、多少気にしてしまうのも分かります。同じ副会長のエアグルーヴとかからも言われてそうだし。あの娘も世話焼き気質が見え隠れしてるもの。

 

「なぁ、あんた養護教諭だろう? 何かいい手は無いのか」

 

無茶振ってきたなぁこの娘!? 一介の養護教諭を何だと思ってるんだ。わたくしは貴様の専属栄養士では無いのだぞー?

だがしかし、無茶振りとはいえ自分を頼って相談してきたのは事実! ならばわたくしはそれに全力で答えるまでである。

 

「ん。提案なら、いくつか」

「あるのか」

 

あるんじゃよ。イヤイヤ期の幼児に食べさせるのは無理ゲーだけど、理屈が分かる相手への提案くらいなら出来ます。実際にやるかどうかはブライやん次第だけどね。

わたくしはとりあえず彼女を椅子に座らせます。定番となったバイタルチェックをサラッと済ませてから話を続けましょうか。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「解決法、その1。サプリ」

「何だその錠剤は」

 

仕事用引き出しの奥の方から小さなガラス瓶を取り出します。その中には十数粒の錠剤。ただし、色が限りなく黒に近い深緑。何かしらでコーティングされてるのでしょう、ツヤツヤテカテカしてます。ほんと何でしょうねこの毒々しさ。

 

「ここの、生徒が、開発した、1錠で、1日分の、栄養が、採れる、サプリ。安全性は、わたしが、保証する」

 

以前、わたくしと同じように白衣を纏っていたウマ娘が治験協力者を探しておりましたので、面白そうだと思って参加させていただきました。

まぁ彼女もトレーナーが相手でも無ければ発光したりするような代物は飲ませてこないだろうと思いまして。一体何ネスタキオンだったのでしょうね……。

実際に発光はしませんでしたし、数日飲み続けても直接的な身体の異常は覚えなかったのでとりあえず安全ではあるはずです。

 

「ほう」

 

割とあっさり解決できそうな方法に興味を惹かれるブライやん。ええそうでしょうとも。これを飲めば栄養摂取の問題はスッキリ解決、それ以外の食事は食おうと食わなかろうと完全に自由。嫌いなものを食べる理由が無くなるのですから。

まぁけど、そんな美味い話がそうそうあるわけもなく。

 

「問題は、副作用。すごく、苦い。1日中、苦い。噛まずに、飲んだ、はずなのに。普通に、野菜を、食べたほうが、1000倍、ましと、思える、くらいには」

「それは勘弁願いたい」

 

ブライやんが何とも言えない微妙な表情になります。

はい、さっき直接的な身体被害は無いと言いましたが間接的にはあるんだなこれが。

苦味で寝付けないって初めての体験でした。何日か続けて服用したのでしばらく寝不足に苛まれましたとも。

多分これ、あの数々のウマ娘ちゃん様達を無間トレーニング地獄に叩き落とした悪魔の飲み物、ロイヤルビタージュースのプロトタイプみたいなもんなんじゃないですかね。そりゃあやる気下がるわこんなん。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「解決法、その2。野菜ジュース」

 

ブライやんにお願いして、冷蔵庫から目的の野菜ジュースを取ってきてもらいます。普段飲み用に何本かストックしてましたので。

 

「野菜の、味が強い、ものもある。けど、フルーツの、味が強い、ものもある。飲んでみる?」

 

野菜汁100%のやつがわたくしは好きですが、果汁と野菜汁が50%ずつ入ってるやつとかは飲みやすさがかなり向上しています。

繊維感も無いですし、普通にただのジュースとして飲めます。

というわけでブライやんにはそういった飲みやすいやつを進呈。もしダメだったりして残してもわたくしが責任もって美味しく頂きますのでぐへへへへ。

 

「確かに、これは飲みやすい。まぁ、そんなに嫌いじゃない」

「デメリットは、決して、野菜の、代わりには、ならないこと。あくまで、野菜不足の、補助。それと、糖分が、多いこと。採り過ぎ、注意」

「かなり現実的な案だな」

 

砂糖不使用でも果糖が結構ありますんでね。

あ、全部飲んだか。残ねnゲフンゲフンいや良かった良かった。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「解決法、その3。発想の、転換」

「発想の転換?」

「嫌いな、ままで、構わない。今は、敢えて、野菜を、食べる。そうする、ことで、肉を、食べたときの、美味しさや、感動に、はずみを、つける」

「つまり、我慢してから肉を食べたほうが美味しく感じるから、肉のために野菜を食う、と?」

「ん」

 

筋トレ食事制限下におけるチートデイみたいなもんですかね。何か違う気もしますけど。

要はいくら好きなものでも食べ続けてると飽きるから、緩急つけようぜってだけですね。

 

「ふむ……悪くない案かも知れん。が、それは野菜に失礼なのではなかったのか?」

「それは、あくまで、わたしの、意見。共感、してくれる、のはいい。けど、強制、する気は、ない」

 

所詮は一個人の一意見に過ぎませんのでね。

 

「割と適当なんだなあんた」

「臨機応変、と言って」

 

なんか呆れられたぞ。つくづく解せぬ。

 

・ ・ ・ ・ ・ ・

 

「解決法、その4。諦めよう」

「解決とは」

 

スポーツ栄養学的には確かに野菜の栄養素は必須でございます。が、この世界ではあまりそこまで大きな説得力を持たないんですよねそんな科学は。

というのも、ウマソウルや根性がなんやかんやしちゃう傾向が強いんです困ったことに。計測不能な不確定要素が多大に影響するせいもあって、あくまで参考レベルなんですよね。

適当抜かしてないでちゃんとやれってんなら誰かオグスペ胃袋の神秘を科学的に説明してみろやチクショーメッ!

 

「色々、提案は、したけど、無理に、やる必要は、ない。結局は、自分が、やりたい、ように、やるのが、一番」

「あんた的にそれでいいのか」

 

なんかすっかり呆れられてしまったみたいですね。まぁ特に最後のは日和見な意見ですし致し方のないことと思います。けどね、

 

「まぁ、敢えて、言うなら……」

 

養護教諭、無礼(なめ)るなよぅ?

 

すぅっと心を落ち着けて、冷静に、冷酷に、冷淡に。

まっすぐ彼女を見据え、低めの声で言い放ちます。

 

「四の五の、言わずに、全部食えよ。苦手が、どうした。酸いも甘いも、全て喰らって、己が血肉に、変えてやれ。野菜、食えなくて、負けましたとか、言い訳、したいのか?」

 

今までのわたくしの口調とは一転、超々挑発的に上から目線で煽ってやります。

ブライやん、お目々まんまるで固まっちゃってます。あ、咥えてる草も落ちちゃった。さてさて、これを受けて怒り狂うか、はたまた……

 

「……くっくっく、はーっはっはっは! やっぱりあんたとんでもなく変わってるな! 面白すぎるだろう!」

 

イエス! 『ザ・北風と太陽作戦』成功デース!

押しても駄目なら引いてみな。色々提案してみて反応鈍かったので、なら本人から『出来らあっ!』と言い出してくるように仕向けてみました。

乗るかどうかは兎も角、興味を引けただけで十分成功です。

あ、ちなみにさっきの冷たい声は演技ですので本性見たりとか思っちゃやーよ?

……振りじゃないよ、本当だよ?

てか、成功して良かったわ。怒って出ていく可能性、そんなに低くはなかったので内心バックバクでした。はふぅ。

 

「お褒めに、預かり、恐悦、至極。まぁ、試すも、善し、試さないも、善し。好きにしたら、いい。投げやり、じゃなく、本心で」

「あぁ、好きにしてみるさ。礼を言う」

 

ブライやんがニイッ、と笑って見せてくれます。良いですね、目の奥にギラギラした炎が燃えてるのが分かります。

これで野菜を食べるかどうかは本人のみぞ知るところですが、モヤっと感は解消出来たとみていいでしょう。

いやぁいい仕事しましたわ。

 

――ガラガラッ

 

「失礼する。先程のピサンゴレンの事なのだ、が……」

「「あ」」

 

あ、ハヤひー戻ってきちゃったやっべ。会話に集中して周りの音聞こえてなかったやっべ。

 

「じゃあな」

 

ノータイムで開けていた窓へダッシュし華麗に飛び越え、今度こそ本当に逃げるブライやん。颯爽という表現が似合いますね。うわぁ速い。もう見えなくなっちゃった。というか一応解決したんだし、もう逃げなくても良かったんでは?

 

「メルテッドスノウ先生……これは一体どういうことなのか、説明してもらえるだろうか?」

 

ブライやんのいなくなった窓を見ていたわたくしの背後から聞こえてくる、先程のわたくしの演技なんかとは比べ物にならない、地の底から噴き出すような凍てつく波動と、有無を言わせぬ感情の無い静かな声。怖い。怖くて振り向けない。プレッシャーはんぱない。

移動率にパッシブでデバフ持ってるわたくしは逃げられない。詰んだ。




■FOX2 味っ噌ぉ
戦闘機の短距離赤外線誘導ミサイル発射を指します。最も一般的(?)なミサイルですね。
筆者はエースコンバット大好き人間ですが軍事には明るくないので詳細はおググり下さい。
味噌はミサイルをネイティブ発音すると「ミッソー」と聞こえるというスラング。

■雑記(2022.12.17)
眼鏡の話をしてたらロブロイさん実装されましたね。
1700万人DL記念でもらった無料石を使うか悩み中。
固有スキル、約束された勝利の剣(エクスカリバー)は見たいなぁ(違)
フォトスタジオ機能は神です。ありがとうございます。

割とどうでもいいかも知れないご報告です。
次作以降、ウマ娘名のタグを外します。
まだまだ色んな娘が登場予定で書き切れなくなっちゃいますので。
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