そして死神はTとなる。   作:蹴翠 雛兎

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お待たせしました。

さてとやっと区切り。
次から新章…なのですがその前に今回は妹目線の物語となります。

では、続きどうぞ。


間章

「___えっと…125…125…125…」

 

あの約束を兄と交わしてから、数年が経った現実(いま)、私は中央トレセン学園に来ていた。

 

理由は一つ。

 

この中央トレセン学園の合否発表を知る為。

 

「まだわかんねぇのかよ、エレジー。オレはもうとっくに結果を知ったってのに」

「あのねぇ…私はパピエマシェみたいに記憶力の化け物って訳じゃないんだよ?寧ろ、パピエマシェに比べると頭弱々なんだからね?」

「はいはい……ったく。せっかく、見つけてやるってのに…はぁ、ちゃんと『自分だけで探す』って言ったんだから自分で探せよ?」

「そりゃ勿論」

 

そうやって軽口を叩き合う私たち。

普段ならばもう少しお互いに張り合って話していた気もするが…今はそこまで言い合う気にならなかった。

私が入れるか緊張してるってのもあるのだろう。

マシェがそんな私を気遣って見守っているってのもあるのだろう。

 

けれど何よりの理由として。

 

「…あっ……125……あった」

「おめでとうさん。良かったな」

「…なんか、私よりもずっと先に結果を知ってたマシェにそんな風に言われても嬉しくない」

「なんでだよ…そこは素直に受け取れよ」

「やだ。それすると、ここがゴールみたいになるようで嫌だ」

「…確かにな」

「うん。…………ここからだよ、パピエマシェ」

「あぁ…。やるぞ」

「わかってる」

 

最初の一歩を踏み締めたからだろう___。

 

 

exhibition race/『つぎはぎ』

 

 

___小さい頃に(オレ)達が悟ったことが一つある

 

それは誰もが平等に不平等であること。

 

例えば、好きなことに対して必ず才能があるかと言うとそうでないように。

望んでいる身体的特徴が自分にはないように。

ヒトであれば強みであったことがウマ娘としてはそれほどではないように。

 

誰に対してもそう言う『不平等』がある。

 

(オレ)達にもそれは当てはまる。

 

ヒトとしては並外れた身体機能にちょっと違う姿。

ウマ娘としては異常なまでのスタミナと回復力、そして学習能力。

それはまるでヒトとしての力を二倍、ウマ娘としての力を二分の一したかのよう。

よく言えばハイブリッド。

悪く言えば中途半端な存在。

 

(オレ)達がそれであった。

 

故にエレジー()というウマ娘はその身に足りぬ希望を(いだ)き。

故にパピエマシェ(オレ)というヒトはその心に過ぎた絶望を(かか)えた。

 

だからこそ、私は足を進めた。

だからこそ、オレは足を止めた。

 

『どうしても勝たくて粘った

 どうやっても負けて諦めた』

 

『遅くてもいいと思って

 早かったんだと思って』

 

幻想(ユメ)を知るたびに

 現実(うつつ)を知るたびに』

 

『追かけたんだ

 逃げたんだよ』

 

まるで言い訳のように互いにその言葉を使って。

そうして、気がつくといつのまにか(オレ)達は鏡のように正反対な存在になっていた。

 

(エレジー)がウマ娘らしく生きる一方でパピエマシェ(オレ)はヒトらしく生きようとして。

オレ(パピエマシェ)が過去ばかりに囚われ続ける一方で、エレジー()は明日を目指し続けた。

 

心を通わせられるが為に、すれ違い始めてた。

頭が良いが為に、すれ違うようになっていた。

 

けど、そこに待ったをかけた存在(ヒト)がいたんだ。

 

私達はあの日を覚えてる。

あの日、親父(父さん)が一人の黒髪の少年を連れてた時のことを。

 

『___今日から君たちの兄になり、家族になる子だ。仲良くしなさい』

 

そうして始まった義理の兄との生活。しかしその兄に対して抱いたのは、共通して『うざい』だった。

だって殺したくなるような笑顔で、気にかけるようにずっと(オレ)達に接してきたから。

それも、嫌になるくらいに。

 

けど、そんな日続いたある日。

 

『___こっちへこい!』

『やめてッ!痛いッ!いやッ!』

『速く乗れッ!!!』

『離せよッ!離せッ!』

 

___(オレ)達は誘拐された。

元々、(オレ)達がレギュラー番組を幾つも掛け持ちする有名芸能人と引く手が数多の世界的権威を持つ科学者の間に生まれた金持ちの子供ってこともあって昔から狙われやすかったのは狙われやすかったのだが、その度に、両親か周りの人たちが助けてくれた為、なんとかなってきてたのだが…。

 

しかし、この時ばかりは運が悪かった。

母親は論文発表の為に海外出張中、父親は当時24時間テレビの司会を務める為に泊まり込みでテレビ局におり、一緒にいたのはお兄ちゃん(兄貴)とおばあちゃんの二人だけ。

しかも、その二人も他の場所にいてすぐに駆けつけれる場所にいなかった為、意図も容易く攫われてしまったのだ。

 

最初は絶望した。なんせ誘拐犯の中にウマ娘もいたから。

どうやっても逃げれない。と、わかったし、これからどうなるんだろうと不安になった。

多分、下手すれば殺されるかも知れないとすら。

 

けど…。

 

『何もんだ!?』

『私ですか…?そうですねぇ…『死神』…とでも名乗っておきましょうかねぇ…?」

『死神…まさか!!』

『ぬるふふふ…さて、手入れの時間です。私の妹に手を出したこと…高くつきますよ?』

 

あの日あの時、お兄ちゃん(兄貴)は一人で誘拐犯達のアジトにくると、大多数いたのにも関わらず、一方的な蹂躙をし、(オレ)達を救ってみせたのだ。

それも、相手の中にはウマ娘もいたし、刃物や拳銃などを持ってたのにも関わらずに。

 

まるでそれは___ヒーローのようだった。

 

『…さてと手入れ終了…これで真っ当な道に行ってくれればいいですがねぇ…っと、大丈夫ですか!?怪我はしてませんね!』

『う、うん…』

『…なら、良かった……』

 

___思えばこの時、(オレ)達はお兄ちゃん(兄貴)の目を疑うような強さと、三日月のような、優しい笑顔にやられたのかもしれない。

気がつけば自然と自分達はこの人を家族であると、兄であると認めていて。

 

『実は自分達にはね___』

 

あまり他の人に話していない秘密を話していた。

まぁ、それに対してただこの兄は。

 

『___あぁ、それなら初めに会った時から気がついてましたよ』

 

と、さも当然のように言ってのけたのだが。

正直、そう言われて腹は立たなかったのか?と言われれば、腹はたったのだけれども。

けど、それ以上に。

 

『___けど、話してくれるだろうと思って黙ってました。…良く話してくれましたね』

 

そう言われて、心が救われて、それ以上に受け入れて嬉しかった気持ちが上回っていた。

 

((___いつか、この人に何か返そう。))

 

そう決意もして。

 

___そうして気がつけば数年経っていて、あれから色々なことを学んで(オレ)達はここにいる。

 

途中悩んだこともあったけど、不貞腐れてた時もあったけど、それでも前を向き続けた結果がここにある。

 

信念は曲げない。

 

何度崩れてもつぎはいでいく。

 

何度こけても追い上げる。

 

足りない所は庇い合う。

 

例え、ウマ娘としてもヒト娘としても半端でも。

 

私達はこの学園で生きていくのだ。

 

兄がトレーナーとして来る日を待ち侘びながら___。

 

 

「___準備はいい?」

「あぁ、行こう___!」

 

 

___これは私達が伝説を作る物語。

 

___一人でダメなら二人でと走る物語だ。

 

 

 





next stage/つぎはぎテープだらけの三人三脚
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