前話、エレジー達が二人で一人のハリボテエレジーという話でしたが、それに関する伏線を解説しますね。
・パピエマシェとエレジーという名前(パピエマシェは(紙の)張子細工という意味を持つ=ハリボテ)
・原作の二人で一つの馬であること
・幼少期編、間章を除いた全話を通して必ずどっちかしか現れてない。
・暗雲の空でパンダがレースしている(JWC要素)(この時点で既にハリボテエレジーを出すことを決めてた)
・『家族』での描写:父親の姓が手塚(騎手、手作 好太郎を変換)、母親がトロイ(つまりトロイの木馬)、5人家族のはずなのに4人分の食事。
・『目標Ⅲ』:パピエマシェの半端者発言とエレジーの秘密①パピエマシェとは誕生日が一緒。
・目標Ⅳ:最後、あにぃ呼びがお兄ちゃん呼びになるシーン、パピエマシェの秘密①マルチタスクが大の得意。
・間章:『125』という数字(原作における人気倍率が八番人気で『125.0』倍)、、『それはまるでヒトとしての力を二倍、ウマ娘としての力を二分の一したかのよう』、『一人でダメなら二人でと走る物語』、この話の後半の一人称がオレ/私と一纏めになってる。
とこんな感じです。もしかしたら忘れてるだけで他に仕込んだかも知れません…。
さてと、今回そんなハリボテエレジーに関するウマ娘が一人出てきます!
では続き、どうぞ!
「___以上を持ちまして新年度の挨拶を終えます。ではこれより、各自教室に向かい、後程、一年間皆さまと過ごす担任が来るまでの間、ゆっくりとしていてください」
「…お、終わったぁあああ…」
『ははははっ!やーい、エレジー、疲れてんの〜?』
「うっさいやい…!」
脳内で揶揄ってくるパピに対してムッとして言い返す。
今日は新学期開始の日。
高等部になったことで、色々なことがあった。
いきなり成長した身体のこと。
寮の部屋入れ替えのこと。
新たなクラスメイトのこと。
___そして。
『___今年度からトレーナー兼高等部の5教科の教師として勤務することになる、五呂先生です』
『ご紹介に預かりました五呂です。気軽に殺せんせーと呼んでください。よろしくお願います』
いよいよ、今日から先生兼トレーナーとしての活動を始める兄のこと。
本当に色々なことがあって。
感情のジェットコースターに乗っている気分だった。
特に兄のことに関しては事前には知っていたとはいえ、二人揃って特に緩急激しかったように思う。
片や、兄の背中を追いかけ。片や、兄の背中をずっと見てきた。
大きすぎるが故に、憧れや羨望の眼差しを向けてきたのだから。
当然と言えば当然であろうなとは思う。
___ただ。それはそうとして。
「___皆ー!担任の先生が来ましたよー!」
「ありがとうございます、シンバシルドルフさん。さてと…皆さん、こんにちは。今年一年、皆さんのクラスを受け持つこととなった五呂千世といいます。よろしくお願いしますね〜」
((はっ?えっ…ナンデお兄ちゃん/兄貴ガ担任ナノ…?ナンデ!!?))
三女神様、運命の神様。流石に兄が担任というのはどうかと思うのですが…?
周りがイケメンたる兄に対して黄色い声を出し
質問する中、まさかの事態に私達は目を遠くし、思わず、神様達に心の中で文句を言い始めるのだった___。
race10:Tとウマ娘の時間
「___あー、もう聞いてないよ…!お兄ちゃんが担任なんてさぁ…!」
「あはは…」「まぁ、なんというか、うん…」
「「ドンマイ?」」
「何故疑問形!?ていうか慰められても嬉しくないよ!二人とも!!…うぅ,,二人にはわかんないだろうなぁ。この複雑な気持ち…」
『いや…寧ろオレたちしかわかんねぇだろ。こんな気持ち…』
そんな風に脳内でパピに突っ込まれつつ、机にむくれた顔を乗せ、アイラブナースちゃんと先程から寿司を食べている栗毛のウマ娘___ギンシャリボーイ先輩を見る。
アイラブナースちゃん。
以前から付き合いのある彼女の父親___間担当医さん*1に代わり、特異身体を持つ私達の身体を気にかけてくれてる娘で、中等部時代は私達の身体のことを知ってる寮長の計らいで寮生活が安定するまではって同じ部屋だった娘。
本人無自覚だけど、何気に怪我人を運ぶ時とかになるとかなり足が速くなるんだよね。なんでだろ…?
ギンシャリボーイ先輩。
現生徒会長であり、高等部になった際の部屋入れ替えで同室になった人。本来なら中等部でも同じ部屋になる予定だったらしいけれど、さっきの理由からしばらく別々だったんだよね。
まぁ、私の寮生活が安定してきたのと、ギンシャリボーイ先輩が私達の身体に対して理解を示してくれたってことで今年から一緒になったんだよね。
なお、本人寿司が好きすぎてよく作ってるからか、手に酢飯のような匂いが染み付いている。
しかも、その無意識に漂わせる匂いがギンシャリボーイ先輩のめちゃくちゃうまい寿司を想起させて、私達の空腹を誘ってくるから困ったもんだ…。くっ!この先輩、無意識にこっちの体重増加を狙いやがって!くそう!
まぁ、そんな私とパピの身体上の秘密を知る二人だからこそ、こんな風に気を楽にして話せるんだけど。
事実、私達の身体って、医学的に見てもかなり珍しい状態だから、下手に人に話して広まってしまったら、両親が金持ちであることも相まって裏社会の人から狙われる。実際それで攫われたこともあった。
だからこそ、この秘密は一部の信頼できる人にしか伝えていないし、理事長などの学園の人に頼んで私とパピの二人分の席を用意してもらってるからこそ、今の私達が安心して入れるんだよね…。
ま、そもそも論、学園にいる間…特にこれからは、万が一にもお兄ちゃん___殺せんせーの目を盗んで私たちを攫うなんてことはあり得ないけれどね。やれるもんならやってみやがれ!
「___そういえば、エレジー」
「ん?なに?」
「君はこの後の模擬レースに出るのかな?」
「…そういえば、今日だっけ?私達は」
「うん」
模擬レース。
表向きはと言うと、体力測定的な意味合いと実際のレースの練習という意味合いが兼ねてあるものだけど…。
実際は、ウマ娘達によるスカウトアピールポイントの場所であり、トレーナー達がスカウトする為の参考にするものとなってる。
無論、参加するかしないかは決められるものの、それでもアスリート系の学部に入った子達の殆どは、自身の腕試しも兼ねて参加する。
距離は短距離1000m、マイル1600m、中距離2000m、長距離2400mとなっていて、各々が好きなレースをそれぞれ2回ずつつまで選べる形式。
好結果や目を惹きつけられるような走りができればおのずとトレーナーからのスカウトが決まるけど…。
今回、私は
「…とりあえず、出ますよ」
「そうか、最初は何にするのかは決めてるのかい?」
「確かに気になる…。どうするの、エレジー?」
『…正直に話しときな。もしナースの奴と被った時はいい宣戦布告になる』
「えっと、とりあえず中距離から行こうかな…と」
「ふむ。なら、私の出走予定と丁度被るな」
「「『げっ…』」」
「…なんだ、その『げっ…』は。しかも気のせいじゃなきゃ、マシェ含む三人分聞こえたような気がしたのだが…?」
「きっ、気のせいですって!ね!?ナースちゃん!」
「そ、そうですよ。きっと聞き間違えですって!」
『前言撤回。宣戦布告しちゃダメな相手と被っちまった!?』
そう言って表面上は取り繕っているが正直、私達は冷や汗ダラダラだった。
その理由なんて簡単だ。
会長。めちゃくちゃ強いのだ。
まず、私の入学時に練習試合が行われたのだが。
これを、余裕の走りで堂々一着。大差勝ち。
次にしばらくして行われたトレセン学園交流試合。二馬身差でこれも堂々一着。
その次に参加した製鉄祭でのレースでは4馬身差で勝利。
…そして、過去に一度、私と出かけた時に行われてた野良試合に参加した時も余裕でセーフティリードつけて一着。
自分が知るだけでもこれなのだから、どれだけこの人が強いかがわかるだろう。
だからできれば
「…ふむ。折角私に勝てたのならば、賞金代わりに私の実家である寿司屋の名店、
「「『!?』」」
「仕方がないか…。なんせ、私とレースしたくないようだしな…。勝てる見込みもないのに参加するメリットなどないか…残念だ…」
「「『ッ!?…やってやらぁああああ!!!』」」
ダメでした。はい。
餌に寿司の名店をちらつかされた上に、お前ら私に勝てないやろぉ?と言われてしまっては、引くに引けませんでした。
いつやるのか!今やるんだよ!
別に今ここで倒して一着取ってしまってもかまわんのだろう!!!
「ふふっ…なら楽しみしているよ」
「「『あっ…しまったあああああああああああ!!会長に乗せられたあああ』」」
「じゃあ、私はそろそろ行かせてもらう。ふふ…逃げないでくる事を
「「『いやぁアアアアア!?』」」
…まぁ、三人してすぐに会長の思惑通りだったことに気がついて後悔したんですけどね!!!
こんなん、どうやって勝てと!!?
「___さてと、あの娘達を焚き付けられたわけだが。これで良かったか?
「えぇ…ありがとうございます。ギンシャリボーイさん」
「気にするな、私も本気の彼女達とは競い合ってみたからな___」
賽は投げられた。
この結果がどうなるかはまだ誰にもわからない。
だがこれだけは一つ確かなことがある。
それはもうすぐ、舞台の幕が上がるということだ___。
次回、第四話:模擬レース