そして死神はTとなる。   作:蹴翠 雛兎

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だいぶお待たせしました!
難産でしたが先がやっと見えたので投稿です!


目標ⅰ

「___ちぇ、つまんねぇの」

「ははは…」

 

駆ける足音。

 

鳴り止まぬ歓声。

 

凄まじいほどの熱気。

 

期待に心躍らせる客達。

 

___ここは東京競バ場、その観客席である。

 

そんな中で、明らかに不機嫌そうな表情を見せるウマ娘の少女とそれに苦笑する死神がいた___。

 

race5 決意の時間・一時間目

 

___時間は数十分前に遡る。

その時の死神は家族集まっての朝食を終えており、エレジーとレースを見に行く午後までは何もする事がない為、それまでゆっくりと本を読んでいた…のだが、後十数分というところで、突如としてそのリラックスタイムは一つの声によって、破られることとなった。

 

「___あにい!わるいけど、へやに入るよ!」

 

不機嫌そうな声と表情で自分の部屋へと入り込み、膨れっ面して黄色のタコの人形を抱えて座椅子に座るエレジーと同じ姿をした栗毛のウマ娘の少女。

いかにも文句とか愚痴を言いたいです!と言った感じである。

その様子に思わず彼は察して苦笑いをしていた。

 

___パピエマシェ。

それが今目の前にいる妹の名前である。

性格は少年っぽく、のんびりと大人然としており、あまり怒ることがない。

そんな彼女がこんな時に苛立って部屋に来たのだ。その相手など簡単に想像できた。

 

 

「おはようですね、パピ。今、起きて来たということはもしかして___」

「そうだよ!エレジーのやつ、ねむいからってあにぃとのやくそくをさ、ぜんぶオレにおしつけたんだよ。しかも、ねてたのに起こしてさ」

「ははは…ですよねぇ」

 

 

そう言って、更にムーッとした顔をする妹。

しかし、尻尾を縦に振っていないところを見るに本気では怒ってはいないようで、それに思わず苦笑してしまう。

この娘は優しい少女なのだ。

眠くなってしまったものの、なんとか約束を守りたいエレジーの為に、口では文句を言い、ほんのちょっと怒りながらも、助け舟として自分が買って出たのだろう。

 

まぁ、当人はそれを指摘されると更に不機嫌になってしまうのだろうが。

 

閑話休題

 

「それで?あにぃ、どこに行くんだ?今日、エレジーからあにぃといっしょにレースを見に出かけるとしかきいてないんだけど…」

 

そう言ってあぐらをかき、むくれた顔をするパピエ。

どうやらそこから考えるに最低限しか聞かされてようである。

思わず殺せんせーは苦笑いしてしまった。

本日n回目の苦笑いである。

 

「あぁ、そうだったんですか。今日は東京…府中のレース場に行く予定なんですよ。友人達と共にね」

「ふーん…って東京に?…え、まじ!?」

 

どうやら、気になるものがあったらしい。

と知った途端、パピエマシェは目を輝やかせて来た。

 

「えぇ、まじのまじです」

「やった…!んじゃ、あにぃ、すぐ行こ!すぐ行こ!」

 

しかも、兄を急かすほどの、このはしゃぎ様であらせる。

どうやら、よほど気になるものがあるらしい。

だが。

 

「無理です。今日は車でいくのですが、約束の時間までまだありますし、それまで迎えが来ないんですよ。それまで待ってください」

 

つまりそういう事である。

今日は友人達と車で行くのだ。しかも、今回行く東京は子供のウマ娘でもまあまあ遠い距離で。

人間の子供の足ならば尚更遠いのである。

もしかしたら自分達ならば問題ないのだろうが…まぁ、今回はみんなで行くため、その辺はどうしようも無かった。

 

「むー…しょうがねえかぁ…」

「そうですねぇ。諦めて、待ってください」

「はぁい」

 

そう説明すると渋々ながら納得したのか、妹は返事をすると、何も言わずにタコの人形を枕にする様な形で寝そべり、部屋にあった本を読み始めた。

 

(さて、私も___)

 

そうして、しばらく迎えを待つ事十数分。

ついに来たようだ。

 

「___千世〜、お迎えが来たわよ〜」

「せんせー、迎えに来たよ」

「待たせたな〜!千世〜」

 

「来ましたかあぐり、沖野」

 

本から視線を外して、服装を整えて妹と玄関に向かうと、そこには幼馴染と現在通っている学校の友人がいた。

 


 

「___はぁあ。ここまで来るのにちょっと時間がかかっちまった」

「仕方がないですよ。今日は私たちの一個上、人気絶好の現役ウマ娘、時折消えるような速さと動きから幻のウマ娘と呼ばれたあのトキノミノルが走るんですから」

 

そういって、沖野がこぼした、ここに来る際に起きていた渋滞への愚痴を返す。

 

実際、トキノミノルという少女の人気はすさまじく、その人気になるまでの[早さ]と今まで無敗という足の[速さ]、それに加え、あまりメディア露出しないことから、『幻のウマ娘』という二つ名をもらわれる程である。

 

更には、今回走る日本ダービーを勝てば二冠となり、クラシック三冠へとリーチがかかるのだ。

 

 

そのことを考えるならば、ここへくるまでの道中の渋滞も納得いくことであった。

 

 

「まあだからこそ、私の父さんがうちの凄腕運転手である日山さんにお願いしたんだろけどねー。これで日山さんじゃなっかったらもっとかかったと思うよ?」

「確かにな。おまえん家が金持ちで助かったぜ、、、」

 

沖野の言う通り実際、あぐりの今世はかなり恵まれており、母親が科学者、父親が有名な役者であり、お金にも恵まれていた。

 

「にしても、ほんとすげえ人混みだな・・・」

「…そうですねぇ。はぐれな………あれ?」

 

とここで少年は気が付いた。

自身の妹がいないのだ。さっきまで確かにいたはずなのに、だ。

 

「沖野、あぐり。パピがいないのですが、知りませんか?」

「そういや、そうだな」

「あれ、さっきまでは一緒にいたよね?」

 

二人にすぐに妹のことを訪ねてみたが、知らないと首を横に振る。

 

となるとどうやら、ここに来るまでの間にはぐれてしまったのだろう。とそうなると・・・・。

 

そうしてあたりをつけると死神は少女を探し始めた。

無論__。

 

「パピを探してきます!」

「え?もうすぐ始まるよ!?」

「俺たちも手伝ったほうがいいか?」

「大丈夫です、ではいってきます!」

 

と断りをいれてだが。

 

そうして探し始めること10数分後。ついに彼女を見つけることができた。

 

まぁ、明らかにふてくされた状態ではあったが…。

 

「…はぁ」

「…見つけましたよ。パピエマシェ」

「うひぃ!?え、だれ!?…ってあにぃ!?アイエ!?アニィ!?アニィナンデ!?」

 

前世の暗殺技術で培った忍び歩きの要領でそっと近づき、とんと手を置くとかなり驚いたのか、ぎょっとして、腰を抜かしながら後ろに下がる妹の口からどこぞの忍び死すべしな漫画のような台詞が出てくる。

…ここだけの話。この反応を面白いと思ってしまったのは秘密である。

 

「ぇ、え?なんであにぃがここに…あっ」

「えぇそうですね……さーてーと?申開きはありますか?」

「えーと、、、そのぉ…ここで売り出される…期間限定ダンボーがあってさ…その、うん…誰にも言わずにこっそり、買いに行ってた。許して♪てへっ☆」

「…ふむ、有罪ですね。後でオハナシしましょう」

「……それは拒否だね!逃げる!」ことができるとでも思ってたんですか??」

 

逃げようとする妹を自身が持つ全ての技術を総動員させ、一瞬で鮮やかに引き留める。

周りから見たら何をしたかわからない、ただ普通に引き留めて、俵担ぎしただけとしか思われないだろう。

…実際は。

 

「…」(…あぁ、またあにぃには勝てなかったよ…ドナドナドーナ…)

「これでよし…ですね」

 

一瞬で足音を使った、音の爆弾で動けなくさせ、最近、知り合いのおじいさんから教わった特殊なツボの押し方で体の主導権を握り、その上で暴れられないように組みつきをしたのだが。

兄姉に勝る弟妹無しというが、この世界ではウマ娘である下の子に対して力でここまで圧倒するヒトの子も珍しいだろう。

人バ逆転の下剋上*1である。

 

「さて…行きますよ「きゃっ…!」あっ…すみません!」

 

そうして、妹を慣れたような手つきで俵担ぎして動き出そうとして___緑のハンティング帽子と緑のジャケットを被った少女とぶつかってしまう。

 

「えっと大丈夫ですか?」

「う、うん…大丈夫。平気…こっちこそ、ごめんね」

「そうですか…。……」

「…ん…?どうしたの?あたしの顔に何かついてる…?」

「……いえ」

 

そう言って、とある二つの事に気がづきつつも、敢えて気が付かないふりをすることにした。

ここでは人目がつき過ぎる。

そう思ってのことである。

 

「じゃあ、あたしはそろそろ…」

「…えぇ」

 

そう言って、緑のハンティング帽子を被った少女は一見何事もなく立ち、そこから去っていくの見ながら何かを考える死神。

その顔は前世では幾度となく生徒に見せた人を大切に想う教師の顔であった。

 

「……あにぃ?どうかしたの?」

「…ちょっと気になることが。パピ。競技者用の控え室ってわかりますか?」

「えっと…たしか、向こうだったはず…」

「案内頼めますか___?」

 

___そして、彼は、彼の運命は動き始める。

*1
本来であればヒトはウマ娘には勝てない筈が何かしらによって立ち位置が変わること。通じて同じ分野では敵わないはずの相手との力関係が逆転してしまうことを指す。例:オリンピック選手である奴と競争したら幸か不幸か、人バ逆転の下剋上をしてしまった




スノーソング(雪村 あぐり)の秘密①
実は親が日本で有名な役者と世界的権威を持つ科学者らしい。

担当ウマ娘、誰にする?(全員、実在するウマ娘です!)

  • 主従い嘲笑う切札
  • 達成の橋行く偶像
  • 麗しき春待つ少女
  • 栄光願う不屈の王
  • 上記全部!
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