主人公の近くに居れば安全だと思ったんだよ!   作:花のお皿

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血盟騎士団? んな危なそうなとこ入るかよ!

 第一層をクリアし、何カ月か経った頃。

 俺は未だに最前線に立っていた。

 第十層はとっくの昔に通り過ぎていたが、それでもキリトの背中に追いつきたくて、攻略組の中にはいつも当然のように俺の名前があった。

 

 だからだろうか。

 俺が、攻略に前向きだとでも思われたのだろうか。

 

「君に、血盟騎士団への入団を願いたい」

「お断りします」

 

 今、俺の眼前には鉄灰色の髪に深紅のローブに身を包んだ男――名を、ヒースクリフと名乗った男が、そこに立っていた。

 

「……一応聞いておきますけど、なんで俺を血盟騎士団に?」

「我がギルドの副団長、アスナ君からの推薦でね。主力メンバーの意見を、それも副団長の意見を無視するわけにもいくまい」

「ちっ、あのフード女……!」

 

 何なんですかねあの子は! 僕に何か恨みでもあるんですか!?

 

「攻略会議の度に、君はアスナ君と……もう一人、キリト君に声をかけているだろう。てっきり仲が良いものかと思っていたのだが」

「キリトとは仲が良いですよ」

 

 ただアスナとは大して仲良くないです。問題を持ち込むに決まってるヒロイン女と仲良くなるなんて、幾ら美人でも御免です。

 あと――ラスボスとも仲良くなりたくないです。だから断ってるんだ、察しろ。

 

 と、そこまで考えた時点でふと、思う。

 目の前の男、ヒースクリフはキリトとも互角以上に渡り合うことのできる猛者だ。勝とうと思って勝てる相手でもない。ついでに言えば、戦える機会もそう多くはない。

 このデスゲーム――《ソードアート・オンライン》のラスボスが如何ほどの者なのか、知りたい気持ちは確かにあった。

 

「ふむ、仕方がない。今回の件はアスナ君に言って――」

「分かりました。入ります」

 

 突如として乗り気になった俺に、ヒースクリフは目を丸くしていた。

 

「ただし、条件が一つだけ――アンタが俺と闘って勝てば、俺はアンタの下につきます」

 

 俺の言葉にヒースクリフは意外そうに俺の目を見つめた後――獰猛な笑みを小さく浮かべ、

 

「いいだろう。我が《神聖剣》、その身を以て味わって頂こう」

 

 ……いや、怖いよ。

 

 ***

 

 《神聖剣》

 ボス戦で幾度も見たことのある鉄壁の如き剣技。

 アレを見る度に、ユニークスキルってずるいよなぁ、って思っている。ていうか今も思ってる。

 対抗するには、あの鉄壁の盾を崩す必要があるのだが、その手段がないのが今の所だ。

 ヒースクリフが反応できない程の、対抗できない程の反応速度で連撃を喰らわせられれば、話は変わってくるのだが。

 

「刀、なんだよな俺のメインウエポン……片手剣にしとけばよかった」

 

 キリトと被ってしまうからと無理に刀を選ばなければよかった。

 いや、刀でもソードスキルが連撃に向いていないだけで、素での攻撃であれば何撃でも攻撃を繋げられるのだが、しかしあの鉄壁の固さを崩すには至らないだろう。

 

――キリト君はどうやってアイツを下したのだか、不思議でしょうがないな。

 

「せめて、この刀だけでもどうにかしたいもんだ」

 

 鞘に刃を守られている一刀の名刀。

 銘はないけど、俺が名刀だと思えば名刀なんだ。

 この刀には、第二十層を超えた辺りからずっと世話になっている。

 というのも、この刀は世にも珍しいグレードアップが出来る刀なのだ。俺のレベルが上がると共に、この刀も強度を増していった。

 最早、この刀に込められた俺の情は溢れんばかりのものとなっている。

 

――しかし、この刀ではヒースクリフには届かない。

 

 威力が足りない、耐久力が足りない。

 あのキリトと並び立つラスボスに、俺と共に育った程度(・・)の刀では足元にすら及ばない。

 

「――ふっ。《放浪侍》ソラル、進化の時、か」

 

 《放浪侍》なんて呼ばれたことないけど。

 しかし、刀を新調しようにもボスからのドロップアイテムにはコレより使い勝手の良い刀は早々ないだろう。以前にキリトから紹介してもらった腕利きの情報屋ですらそのようなドロップアイテムの存在を認知していないのだから、まず間違いなく無料での新調は叶わない。

 となると、鍛冶屋に行く事になる訳だが、

 

「確か……あったよな。フード女が良く使ってる鍛冶屋――」

 

 リズベット武具店、と言ったっけか。

 

 ***

 

 48階層。

 『リンダ―ス』と呼ばれる主街区に訪れた訳だが、素晴らしく穏やかな場所だという印象を受ける。街の中には水車がそこかしこに配置されていて“水の街”とも表すことができるだろう。

 正直ここに住みたいぐらいに気に入っているのだが、生憎と血盟騎士団の本部が55階層と意外にも近い階層に置かれているので俺の定住地としては却下である。

 

――いやマジで、俺を入れたきゃ本部の場所移動しろよ。

 

 などと思いながら、人の行き交う道を通り抜けて『リズベット武具店』との看板が飾られている店の前に辿り着いた。

 フード女兼アスナの話ではいつもここの店主である“リズベット”なる女性に細剣(レイピア)の“研ぎ”を任せているらしい。あのバーサーカーの知り合いというのは少々不安ではあるが、あの【閃光】の剣を取り扱っているというだけでも鍛冶師としての腕に信憑性がある。

 

 期待に胸を膨らませて、俺は店の扉を開けた。

 

 チリン、と鈴の音が店内に鳴り響く。店の中を見渡すと至る所に剣が飾ってあり、種類は細剣から大剣、刀から斧まで多くある。

 これら全てを例のリズベットさんが作ったのなら大したものだ。《ソードアート・オンライン》の中でも随一の鍛冶師と言えるだろう。それ故に性格が心配だけど。

 

 数々の分野の達人においてよく聞く話だが、大抵その道を極めたプロは性格が捻じ曲がっているらしい。その話通りだとすると件のリズベットさんにも不安感が募る。

 彼女の友人を名乗るのがアスナだからなぁ、不安で仕方ないよ。

 

 と、俺が待ち惚けになっているところで店の奥から髪色をピンクに染めた女の子が小走りで出てくる。可愛らしく大きな瞳、顔にはそばかすが目立っているがそれは欠点としてではなくチャームポイントとしての役割を果たしている。

 一見すれば普通の少女に見えるが、彼女が片手に持つ小槌が彼女の役職を示している。

 

――なるほど、彼女が。

 

「リズベット武具店へようこそ!」

 

 リズベットさんですね、可愛い!

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