エステル「嘘……あの決勝のロランス少尉は本気じゃなかったの…?」
激しい剣戟を目の前にしてエステルはロランス少尉が手加減していた事実に呆然としていた
シェラザード「というよりリィンも『アレ』は何なの!?確かリィンの『神気合一』?ッと言うヤツに似てるけど明らかに違うわよね!?なんか知らないのエステル!!」
エステル「わ、私も知らないよシェラ姉!リィンがこんな隠し玉もってるなんて……!?」
アリシア女王「これは……クローディア、彼は……」
クローゼ「大丈夫です、お祖母様。リィンは敵ではありません…」
ロランス「おぉオオ!」
リィン「はァァ!」
互いにクラフトを繰り出し弾かれつつ再び斬り結び、ロランスが分け身を繰り出しリィンに斬りかかるがリィンは分け身を切り捨てロランスに袈裟斬りを仕掛けるがロランスはそれを防ぎ、激しい鍔迫り合いになった
ロランス「フ、中々やる……大佐が気に入るわけだ……」
ロランスは鍔迫り合いの中リィンに話しかけた
リィン「アンタこそ、そこまでの腕をもちながら何故こんな無意味な事を……!」
リィンはロランス少尉の剣を弾き逆袈裟切りをかけたがロランス少尉は難なく避け逆にリィンの頸を刎ねようと狙ってきた
ロランス「ふ、無意味では無いさ、先程クローディア姫も言ってただろう?俺には俺の思惑があって大佐に従っているとな……まぁ、個人的に大佐は好ましい人物だと思っているのは確かだがな」
リィンは頸に迫る剣を紙一重で避けロランス少尉の胴に刺突しようとしたが『分け身』で避けられた
リィン「何も関係のないリベールを混乱させてまで達成したい目的だと、そんな物に……!?」
ロランス「それは、貴様に教えるつもりは無い!だが……」
ロランス少尉は高速移動で撹乱しながらリィンの背後から斬り込もうとしたがそれを察知したリィンは下にしゃがんで避け、そのまま足払いして床に倒れたロランスを串刺しせんとしたがロランスはそれを転がり避け素早く立ち上がった
ロランス「リベールが〘関係ない〙だと?関係ならあるさ、個人的にも……な」
ロランス少尉は冷たく言い放った
リィン「ちっ…、実力もそうだかその剣も厄介だな……」
ロランス少尉に再度斬り掛かるがロランスの剣は難なく受け止めた。その存在感は何処となくこの世の物に思えなかった
ロランス「ふ……そこらの武器とは比べ物にならない代物だからな、貴様の太刀もそこそこ良い物みたいだが貴様の腕についていけずに悲鳴をあげてるぞ。このまま戦えば間違い無く貴様は負ける……それでも続けるのか?」
リィン「……」
リィンは無言で太刀を握り直した
ロランス「……『負けるつもりは無い』……か、武人としての意地か…それともクローディア姫に対する『愛』故か……ふ、少し羨ましいな……」
ロランスは羨まし気にリィンを見た
アリシア女王「…………その瞳………なんて深い色をしているのかしら。まだ若いのに……たいそう苦労してきたようですね」
アリシア女王の発言にその場に居た全員がアリシア女王を見た
ロランス「……………女王よ、貴女に俺を憐れむ資格など無い。《ハーメル》の名を知っている貴女には………」
アリシア女王「!?」
リィン「……復讐か…」
ロランス「……フ…」
ロランス少尉は後ろに跳び下がりエントランスの手摺りの上に立った
ロランス「さて、そろそろ時間だ……お望み通り女王陛下は返してやろう」
エステル「へ……!?」
ロランス「大佐を止めたければ地下に急いだ方がよかろう。最早手遅れだろうがな……無用な被害が広がるのを食い止められるかもしれん」
アリシア女王「地下に……まさか、あの場所から地下に降りたという事ですか?」
ロランス「フ、今の貴女ならばその意味が嫌という程判る筈だ。彼等を導いてやるといいだろう」
ロランス「……それとリィン・アイスフェルト、次相まみえる時を楽しみにしているぞ。その時まで新たな太刀を用意して腕を磨いておけ」
ロランス「……それでは、さらばだ」
ロランス少尉は手摺りから湖に飛び降りた
エステル「な……!?」
シェラザード「しょ、正気!?」
エステルとシェラザードは慌てて手摺りから湖を覗き込んだ
エステル「い、いない……湖に落ちたのかな……?」
シェラザード「それにしては……湖面が波立ってないわ……あの男、いったい………」
リィン「……次再び戦ったら叩き潰すってか……」
リィンは太刀を収めアリシア女王に向き直った
リィン「アリシア女王陛下、武器を保持しての謁見…無礼者の無作法どうかお許しください」
アリシア「ふふふ、どうか顔を上げて、私を助ける為に駆けつけた戦士にどうして咎める事が出来ましょうか、それより……貴方がリィン・アイスフェルト殿ですね?リシャール大佐から貴方の事は伺ってます」
リィン「リシャール大佐から……?」
アリシア女王「えぇ、ルーアンの現代に甦った古代種『オケアノス』討伐戦やツァイスとグランセルのテロリスト鎮圧に貢献したと大佐から聞きました」
クローゼ「ちょ、ちょっと待って下さい。お祖母様!オケアノスは兎も角テロリストとは!?」
エステル「そ、そうよ!リィンどういう事よ!?」
リィン「落ち着いて……ちゃんと説明するから」
リィンはこれまでツァイスとグランセルで起きた事を説明した
クローゼ「王制を否定する……そんな人達が………」
エステル「しかもクローゼ達だけじゃなく無関係な人達を巻き添えにする事も厭わないって……巫山戯んじゃ無いわよ!!」
シェラザード「それがテロリストという存在よ。まぁ捕まったなら安心だろうけど……」
アリシア女王「それとリィン殿は孫娘……クローディアと『そういう』仲らしいですね?」
クローゼ「…あ……」
リィン「……その通りです…」
アリシア女王「そう警戒しなくても大丈夫です。貴方の人柄はこの目で見ましたが信頼するに値すると私は判断しました」
クローゼ「お祖母様それって……!」
アリシア女王「フフ、どうか孫娘のこと宜しくお願いしますね。リィン殿」
アリシア女王が頭を下げるとクローゼがリィンに抱きついた
クローゼ「嬉しい!お祖母様のお墨付きよ。リィン!」
リィン「そうだな、俺もホッとしたよ」
リィンもクローゼの頭を撫でた
アリシア女王「但し、清い交際でお願いしますね。国民の目もありますし、それに……まだ全て終わった訳ではありません」
ヨシュア「エステル!!」
ユリア「陛下!!」
アリシア女王がそう言うのと同時にユリア中尉とヨシュア達が突入してきた
エステル「ヨシュア!?良かった、無事だったみたいね!」
ヨシュア「エステルの方こそ……リシャール大佐とロランス少尉が城内に居なかったから心配だったんだ」
エステル「えっと……あの赤ヘルムはさっきまでリィンと戦ってたよ」
ヨシュア「え?」
シェラザード「あの手摺りを飛び越えて湖に逃げていったわ、とんでもない化け物だわ、アレは……」
ヨシュア「そ、そうだったんですか……本当に良かった……君が無事でいてくれて……」
エステル「ヨシュア……」
ヨシュア「それとリィンも……よくあのロランス少尉とやり合って無事だったね?実力は少尉の方が上なのに」
リィン「……実際ロランス少尉の実力と剣は厄介だったな」
リィンは自分の太刀を抜いて皆に見せた
エステル「!?……うわ、太刀がボロボロ……!」
シェラザード「これは……修復も無理そうね」
リィン「全く、折角買った新品がパァだ。フローラ、直刀はあるか?」
フローラ「はい、こちらに……」
フローラは鞘に収められた剣をリィンに渡した
フローラ「まさか万が一の為に予備として買った剣が役立つとは思いませんでしたが……」
リィン「予想外は何時でも起こり得るものさ、ん……悪く無い」
リィンは一振りして感触を確かめる
アリシア女王「貴女は……この城のメイドではありませんね?」
フローラ「お初にお目にかかります。リィン様にお仕えしておりますフローラ・クリストと申します女王陛下」
アリシア女王の視線に気付いたフローラはカーテシーして女王に敬意を示した
アリシア女王「……そう、フローラさんと言うのですね。貴女の私を見る目がまるで懐かしい人に会えた様な目をしていましたが、何処かでお会いしたかしら?」
フローラ「いいえ、初めてお会いしますわ。ご不快になられたなら謝罪致します」
フローラは頭を振って否定した
アリシア女王「いいえ、ですが……」
ユリア「陛下!お怪我などは…」
ユリア中尉がアリシア女王に近づいた
アリシア女王「ユリア中尉……えぇ私は怪我一つありません。貴女にも苦労かけましたね。他の皆様にも、感謝の言葉もありません」
オリビエ「フ、女王陛下過分なお言葉、ありがたき幸せであります」
ジン「お役に立てれたなら幸いです」
ユリア「勿体無い御言葉です。ですが……事態は切迫しています。城内の特務兵は制圧しましたが各地の正規軍が王都に向かっているとの報告が……恐らく情報部の統制下にあるかと…」
アリシア女王「そうですか……」
ユリア「失礼ながら、時間がありません。どうか飛行艇ですぐここから脱出なさってください」
アリシア女王「いいえ、それは出来ません」
ユリア「陛下!!」
アリシア女王「それよりも……どうやら大変な事になりました。なんとしてもリシャール大佐を止めなくてはなりません」
ユリア「そ、それはどういう事ですか?」
アリシア女王「昨夜、大佐と話をしてみて漸く真の目的が判りました。どうやら彼は《輝く環》(オーリオール)を手に入れる積りの様です」
エステル「《輝く環》……そ、それって何処かで聞いた事がある様な……」
ヨシュア「古代人が女神から授かった《七の至宝》(セプト=テリオン)の一つ……全てを支配する力を持つと言われる伝説のアーティファクトの事ですね」
エステル「あぁ、アルバ教授が言ってた……でもそれって教会に伝わる只のお伽話なんでしょう?」
フローラ「………」
フローラは他の人に気付かれぬ様に唇を噛み締めた…
アリシア女王「………………」
エステル「え………」
オリビエ「ふむ、察するに実在するのですね?このリベール王国の何処かに」
アリシア女王「王家の伝承にはこうあります」
アリシア女王「《輝く環、いつしか災いとなり人の子らの魂を煉獄へと繋がん。我ら、人として生きるが為に昏き闇の狭間にこれを封じん………》」
ジン「《人の子らの魂を煉獄へと繋がん》………なんとも……不気味な言葉ですな……」
アリシア女王「この言葉は代々の国王への戒めとして語り伝えられてきました。恐らく《輝く環》と呼ばれるモノはその危険性故に、王家の始祖によって封印されたのだと推測出来ます」
フローラ「………………」
アリシア女王「そして王都の地下から検出された巨大な導力反応……この二つを結びつけて考えたら……」
ヨシュア「王都の地下深くに《輝く環》が封印されている………そう考えるのが自然でしょうね」
アリシア女王「えぇ……大佐もそう考えたのでしょう。《輝く環》がどういう物なのかは伝承にも残っていませんが……もし蘇らせてしまったら大変な事がおきるかも知れません。それこそ過去に起きたという伝説の《大崩壊》に匹敵する可能性も……」
クローゼ「そ、そんな……!!」
シェラザード「参ったわね。こりゃあ……」
エステル「あ、あの女王様!ロランス少尉は『地下に行け』って言ってましたけど……あれってどういう意味何でしょう?」
アリシア女王「このグランセル城には不思議な部屋があるのです。特に何も保管されていないのに昔から立ち入り禁止とされた場所……」
クローゼ「あ……」
ユリア「宝物庫の事ですか!?」
アリシア女王「大佐が頻繁に宝物庫に『何か』をしていたと目撃証言もあります。恐らくは……」
ユリア「で、では直ぐに確認しましょう!」
そう言って全員で宝物庫のある場所に向かった…リィンとフローラを除いて……
フローラ「…………」
リィン「フローラ……」
フローラ「リィン様……私、とんでもない罪人ですよね?《輝く環》を造り、仕えた国を滅ぼしただけに飽き足らずセレスト達が築いたこの国に未だに『災い』を振りまいて……」
フローラは弱々しく笑いながら壁に寄りかかり項垂れた……
リィン「それは違う!確かに《輝く環》は君が造ったのかも知れない!!だけどそれはそう命じられたからだし、ましてや運用したのは古代人達だ!滅びたのは彼等の自業自得だ!決してフローラの責任じゃ無い!」
フローラ「でも……!?」
まだ納得していないフローラにリィンは抱き締めた
フローラ「リィン……様?」
リィン「それでも罪の意識感じるなら俺も一緒に背負おう。主としてその重荷……背負わせてくれ」
フローラも震える手をリィンの背中に回した
フローラ「……馬鹿ですわリィン様、こんな血の通わない機械人形の罪を背負おうなんて……人が良すぎますわ……」
リィン「あぁ、実際俺は馬鹿だからな、『家族』を見捨てるくらいなら一緒に煉獄にだって堕ちてやる」
フローラ「リィン様………」
リィン「さ、皆を待たせると悪い……行こう」
フローラ「はい………!!」