第1話
ー リベール王国王都グランセル ー
リシャール大佐によるクーデター未遂事件から一週間、女王生誕祭を恋人のクローゼとデートをした夜。リィンとメイドのフローラは王都のホテルに宿泊した。クローゼはグランセル城に泊まれば良いと言ってくれたが流石に王城にホテル感覚で泊まれる図太い神経はしていなかったので断った。クローゼは不満げだったが翌日も会う事を条件に納得してもらえた。そして翌日リィンが寝ている客室でドアのノックで目を覚ました。
フローラ「リィン様、おやすみのところすみません。フローラです!エステルさんが至急リィン様にお会いしたいと!」
リィン「判った!直ぐに着替えるから少し待っててくれと伝えてくれ!」
リィンは直ぐに起き上がりフローラにそう言ってから自分の服に着替え始め準備を整えたらフローラに部屋に招くように頼み直ぐに慌てたエステルが入って来た
エステル「リィン!ヨシュア見ていない!?」
エステルは開口一番にそう訊ねた
リィン「ヨシュア?見てないぞ。というか一緒じゃ無いのか?」
エステル「居ないの!城の何処にも!!それで………!」
エステルの話によると昨晩グランセル城の空中庭園でヨシュアとエステルは夜風にあたって……他愛のない話に華を咲かせて……そして……ヨシュアはエステルにキスをした。そこまでは良かった……しかし、ヨシュアは口内に睡眠薬を仕込んでいたらしくそれを飲み込んだエステルは急速に眠くなり……そして眠らされたエステルはヨシュアに運ばれてヨシュアのベッドに寝かされていた。
エステル「………という訳よ」
リィン「成る程、で目が覚めたら既にヨシュアの姿が無かったと……?」
エステル「うん………」
リィン「で、事態を知っている人は他に誰かいる?」
エステル「えっと……、シェラ姉だけ……」
リィン「カシウス師兄は?元々カシウス師兄とヨシュアは同じ寝室使ってたんだろう?ならなにか知ってるんじゃないか?」
エステル「!!」
エステルは大慌てで部屋を出ていった……
リィン「………………」
フローラ「ヨシュアさんが行方を晦ませた……何かありそうですね?」
リィン「あぁ、俺達も後を追うぞ」
リィン達も急いでグランセル城に向かった。幸い城門を護る番兵はリィン達も関係者である事を知っていたので直ぐに城に入れた。
シェラザード「リィン!フローラ!来たのね」
フローラ「シェラザード、エステルさんは!?」
シェラザード「今カシウス先生が空中庭園に居るって伝えたら上に上がっていったわ……アンタ達も聞いたみたいね」
リィン「えぇ……シェラザードさんも見てないのですよね?」
シェラザード「全く見てないわ…一体何処に行ったのかしら……?」
フローラ「兎に角カシウス殿の処に行きましょう」
フローラに促されて空中庭園に続く階段を登ると……
エステル「父さんのバカ!!」
エステルが勢いよく走ってきてリィン達に気づかないまますれ違いに降りて行った……
カシウス「やれやれ……」
リィン「派手に喧嘩しましたね?」
カシウス「シェラザード達か……みっともない場面を見せてしまったな」
シェラザード「子供の頃から見てきてるんです、今更ですよ。しかし……アタシ達も納得していないです。説明、してくれますよね?」
カシウス「……ヨシュアが家に来た経緯は知っているな?」
リィン「えぇ……怪我してたヨシュアを師兄が連れてきて治療して、養子として迎えたと……」
カシウス「そうだ……だが、怪我してたのはヨシュアが俺を暗殺しようとして仕掛けたのを返り討ちにしたからだ」
リィン「………」
カシウス「《身喰らう蛇》………そう呼ばれている組織がある。《盟主》と呼ばれる首領に導かれ、世界を闇から動かそうとする秘密結社。ヨシュアはそこに属していたらしい」
カシウス「正直、遊撃士協会でも実態が掴めない組織でな。世間への影響を考慮してその存在は半ば伏せられている。だが、それは確実に存在し、何かの目的を遂行しようとしている。……今回のクーデターの様にな」
シェラザード「アタシも資料を拝見して存在を把握してましたが……あの少尉もその一員だと……?」
カシウス「あぁ、間違いあるまい。最も、関与していたのはその少尉だけでは無い筈だ。……ある意味ヨシュアも協力者の一人だったようだからな」
シェラザード「ちょっ、ちょっと待って下さい!それはどういう意味ですか!?」
カシウス「ヨシュアはこの五年間、遊撃士協会に関する様々な情報をその結社に流していたらしい。どうやら自分ではそれと知らずに報告する暗示をかけられていたようだ」
シェラザード「な、なんて事…」
カシウス「正直、得体のしれない連中だ。だから深入りするのはやめておけとエステルに言ったんだ……」
リィン「……で、そう言ってエステルは納得しましたか?」
カシウスは無言で頭を振った
リィン「でしょうね、エステルとヨシュアは端から見ても絆が深かった。それを姿が消えてしかも今後関わるなと言われてはい、そうですか……とはならないでしょう」
カシウス「……そうかもしれん。だが、ヨシュアも辛い決断だった筈だ。俺には止められる術は無かった」
リィン「………そうですか……」
カシウス「……軽蔑するか?」
シェラザード「いえ……私もそれなりの事情があって先生のお世話になったクチですから……先生とヨシュアの気持ち、どちらも判らなくもないんです」
リィン「自分も同じく、エステル達に話して無い事ありますからね。偉そうなこと言えません」
カシウス「そう……だったな」
シェラザード「でも、同じ女としての立場から言わせて貰えれば……」
シェラザードは溜息一つ付いてそう言ってカシウスに視線を向け……
カシウス「うん?」
シェラザード「先生もヨシュアも、かなり最低ですよ」
非難の言葉を容赦なく言った……
王都グランセルは雨が降ってきたがエステルは未だに王城に戻ってこない……
シェラザード「エステル……何処に行ったのかしら……?」
シェラザードは降り続く雨が窓に当たるのを見ながら心配していた
リィン「今、フローラに遊撃士ギルドに行ってもらってます。何か掴めるでしょう」
カシウス「………」
カシウスは腕を組みながらソファーに座って静かに待っていた。すると部屋の扉をノックする音が……
カシウス「誰か?」
フローラ「フローラです、只今ギルドから戻りました。」
カシウス「……入りなさい」
扉を開け中に入ったフローラは一礼してから報告した。
フローラ「エステルさんの行方が判りました」
シェラザード「ッ!……あの娘何処に居たのよ!」
フローラ「グランセル支部に問い合わせに行きましたが。丁度グランセル支部に巡回神父のケビン神父を名乗る男性がエステルさんと共にロレント行の定期船に乗ったと通報がありました」
シェラザード「ロレント……?」
リィン「ヨシュアが家に帰って居ると思ってる……いや思いたい。そんな心理状態なんでしょう」
カシウス「……シェラザード、最速のロレント行の貨物飛行船のチケットを直ぐに抑えてくれ。俺は陛下に事情を説明してから船に乗る」
シェラザード「アタシも行きますよ?姉に心配かける妹を一言言わなくては気が済みませんし」
リィン「俺も行きます」
カシウス「……済まん……」
そうしてカシウスとシェラザードが部屋を出て行って部屋にはリィンとフローラが残っていた
リィン「ケビン神父……ね」
フローラ「リィン様……?」
リィン「いや……何でも無い。俺達もシェラザードさんに続こう」
その後グランセル空港で貨物飛行船に乗り込み無事ロレントに到着しブライト家の家に急ぎ足で向かい、中に入って二階のヨシュアの部屋に入った
エステル「父さん、シェラ姉、リィンにフローラさんも……どうしてここに?」
「悪い、エステルちゃん。定期船降りた時、ギルドの王都支部に連絡させてもらったわ」
エステルの疑問に隣に立っていた緑色の髪の男……神父の格好しているから彼が……
シェラザード「全く驚いちゃったわよ。アンタを探しにフローラがギルドに行ったら丁度連絡が入ってきたんだもの。で慌てて先生達と一緒に出発直前の貨物飛行船に乗ったわけ」
エステル「あ……」
カシウス「まぁ、そういう訳だ。ケビン神父と言ったか?連絡してくれて本当に助かった。礼を言わせてくれ」
カシウスはケビン神父に向き直り頭を下げた
ケビン「いやいや、とんでもない。部外者が出しゃばったりしてホンマ、すんませんでしたわ」
エステル「あ、あの……父さん、アタシね……」
カシウス「判っている。……深入りするなと言ったのは俺のエゴだ。男として……父親としての論理をお前に押し付けてただけに過ぎん。そう、シェラザードに叱られてな」
エステル「シェラ姉……」
シェラザード「フフ……アタシも今回は全面的にアンタの味方よ。勿論リィンもフローラもね」
リィン「俺も同じ気持ちだ。ヨシュアは大事な友人だ、このまま行方を晦ませるのは納得がいかないからな」
フローラ「ブライト家の日常を見てきた私としても物足りなさがあります」
エステル「リィン……フローラさん……」
カシウス「………覚悟はしていたがアイツが去っていった事が思っていた以上に堪えたらしい。だから、せめてお前だけは危険な道から遠ざけたかった。生命と引き換えにお前を守ったレナの様にはなって欲しくなかった。……だが、そういう風に考えるのはお前にも、母さんにも失礼だったな。今更ながら思い知らされたよ」
エステル「父さん……」
カシウス「……軍を立て直す為俺は暫く身動きが取れん。恐らく奴等の狙いもそこにもあったのだろうが……今度こそ、俺はお前の事を碌に手助け出来んだろう。それでも決意は変わらないか?」
エステル「……うん。アタシはまだまだ未熟者だけどそれしか方法はなさそうだから……ううん、こしれしか思いつかなかった。だからアタシ、やってみる。《見喰らう蛇》の陰謀を阻止してきっとヨシュアを連れ戻してみせる!」
カシウス「そうか……ならば俺はもう何も言うまい。遊撃士として……そして一人の女として、お前はお前の道を往くといい」
エステル「……父さん……」
エステルはカシウスに抱きついた
エステル「アタシ……アタシは……」
カシウス「あぁ、そうだ……大事な事を言い忘れてたな」
エステル「え……?」
カシウス「エステル、ヨシュアを頼んだぞ。あの馬鹿息子を連れ戻してくれ」
エステル「……あ……うん……判った……またこの家で……皆と一緒に暮らす為にも……絶対にヨシュアを連れ戻すから……!」
カシウス「うむ……どうだ?折角家に帰って来たのだからこのまま食事していかないか?腹が空いただろう」
エステル「あ、賛成!色々あり過ぎてご飯食べてないや」
シェラザード「フフ、そうね。どうせなら酒を一杯……」
フローラ「駄目に決まってるでしょ、昼間っから酒なんて遊撃士の信用に関わるわよ」
カシウス「ハハ、どうだね。ケビン神父……君も腹が減っているだろう。一緒にどうだ?」
ケビン「お、ホンマですか?いや〜実を言うと俺もペコペコでして……ご相伴に預ります」
ケビン神父は腹を抑えながら言った
カシウス「決まりだな」
フローラ「なら私が料理しましょう。厨房借ります」
リィン「手伝うよ。フローラ」
リィンとフローラは食事を作る為に出ていった
ケビン「……カシウスさんあの二人は?」
カシウス「ん、リィンとフローラ君がどうかしたかね?」
ケビン「いえ、なんでもありまへんわ……」
そうして出来上がった料理を全員で囲んで舌鼓をうった
エステル「ご馳走様でした!あ〜美味しかった」
フローラ「はい、お粗末様でした」
カシウス「さて、腹が膨れたところで今後の事を話していこうと思うが……」
するとリィンが手を挙げた
リィン「カシウス師兄、良いでしょうか?」
カシウス「ん?どうしたリィン?」
リィン「俺はフローラと一緒に一旦リベールを離れようと思います」
するとカシウス以外が驚きの声が上がる
エステル「えぇ〜!ど、どうして……クローゼはどうするのよ!?」
シェラザード「エステル、落ち着きなさい。理由、あるんでしょう?」
リィン「えぇ……俺の太刀も使い物にならなくなりましたから、新しいのを探したいのが一つ、もう一つはヨシュアの捜索ですね」
エステル「ヨシュアの……?」
リィン「あぁ、消えたヨシュアが国内に居るとは限らないからな。他国に目を向けてみようと思ってな……」
シェラザード「成る程ね……悪くない考えね。そういう事ならアタシは賛成よ。先生はどうですか?」
カシウス「……俺も反対する理由は見つからないがな……アテはあるのか?」
リィンは頷いた
リィン「えぇ………エレボニア帝国に帰郷ついでに探してみようかと思います」
関西弁難しい