あの後男の子の母親が何度も頭を下げて感謝してその場を離れリィン達も帝都を奔る路面電車……導力トラムに乗り込んだ。
リィン「ふぅ……到着早々面倒な相手とトラブルになったな」
トラムの中でリィンは溜息をついた
フローラ「全くです。が、傲慢とは聞いてましたが聞くのと実際に見るのではかなり違いましたね、悪い意味で……」
リィン「だな……まぁだからこそ革新派なんて勢力が台頭してきたのだろう。特にオズボーン宰相を筆頭に貴族派の権益を侵して改革を推し進めたから大多数の平民は革新派を支持してるが、当然貴族派は面白くないから対立する……アルゼイド閣下の仰ってた通り根深い問題だな」
フローラ「帝国時報やその他マスコミはこの対立を表面的にしか書いてませんね……上からの圧力があったか、睨まれたくないから書かないのか」
フローラは空港で買った各新聞を見比べてた
リィン「両方……だろうな、まぁ……民衆も馬鹿じゃないからその辺りの事情は察してるだろうな」
リィンもフローラから受け取った新聞を読んでみた
フローラ「アルゼイド子爵閣下やオーレリア閣下の様な聡明な方もいらっしゃるみたいですが前者は中立派、後者は先程遭遇したカイエン公の派閥に属してます。到底和解は無理かと……」
リィン「今は均衡が保っているが、何らかのきっかけがあればその時は……帝国を二分する内戦になる……」
二人が話してる間にもトラムは進みバルフレイム宮があるドライケルス広場に到着しリィン達もトラムを降りた
リィン「……ここも存在感が凄いな」
フローラ「帝室の住む居城でもあり帝国政府庁舎も入っていますから、伝統という意味ではグランセル城に引けはとらないでしょう」
「まぁ〜あっちと違ってここは馬鹿広いから慣れない奴は直ぐに迷っちゃうがな〜」
リィンとフローラが話してると背後からそんな声がかけられた。振り向くと………
「よ、久しぶりだな〜」
スーツを着た男が立っていたが……
リィン「………」
フローラ「………」
「お?なんだ、俺がイケメンで誰だか判らないか?いや〜美青年はつらいね〜」
フローラ「えぇ…と、レ・クターアランドールさんでしたっけ?」
レクター「ガクッ………レクター・アランドールだ!!変な覚え方すんな!それだと俺の名が『レ』しかねぇじゃねぇか!?」
フローラ「失礼しました。レク・ターアランドールさん」
レクター「アンタ本当は判って言っているだろ!?」
レクターの絶叫がドライケルス広場に響いた
レクター「たく……お前さんのメイド良い性格してんじゃねぇか」
リィン達はドライケルス広場の隅にある移動式のジェラート屋でジェラートを注文して近くのベンチで座って食べていた
リィン「ハハ……で、レクターさんはそんな格好して……仕事ですか?」
レクター「それ以外何ものでもないだろう?ま、リベールで休暇を満喫したら同僚達に留守中に溜まった書類押し付けられたがな〜酷くね?」
リィン「一人だけ休暇貰ってリベール旅行なら同僚達だって殺意湧くでしょうよ。というより政府関係の仕事なんですね?クローゼが聞いたら驚くでしょうね」
レクター「おう、これでも書記官を務めてるんだぜ。それで?クローゼとはどうなんだよ?」
リィン「まだ付き合ってますよ。レクターさんが想像するような事は無いですよ」
レクター「おーお、お熱いことで……にしてもカイエン公にケンカ売るとは、お前さん度胸あるなぁ」
リィン「……見てたんですか?なら止めてくださいよ」
レクター「無理、お前さんも知っての通りカイエン公は四大名門の一角だ。たかが一書記官の言葉を聞くと思うか?」
リィン「……思いませんが」
レクター「だろ?この国はリベールとは違い貴族がそれほど権力がある。カイエン公なら尚更な」
リィン「………」
レクター「納得いかねぇって面だな?」
リィン「……えぇ、正直」
レクター「ま、変な貴族に関わらなければこの国だって悪くない、そう捨てたもんじゃないさ」
レクターはそう言って残ったジェラートのコーンも平らげ立ち上がってリィンの肩を軽く叩いてバルフレイム宮に向かって歩き出したが首だけ振り返って言った
レクター「そうそう、お前さんの『お友達』についてだけどな、確かにエレボニアで目撃されてたわ。最も今はどこに居るかは判らねぇがな」
リィン「………一言も言って無いのにこっちの目的を知ってるなんて、貴方只の書記官では無いでしょう?」
レクター「クククッ、さぁな?適当にカマをかけただけかも知れねぇぜ?」
リィン「……まぁ素直にありがとうと言っておきます」
レクター「おう、感謝したまえよ〜因みに目撃した場所はリーヴスだとよ〜」
レクターはそう言って今度こそバルフレイム宮に向かって歩いて行った
リィン「………」
フローラ「あの男、何者でしょうか?ヨシュアさんのことを把握してるとは……」
リィン「さぁね?ただ言えるのは書記官の肩書きは多分表向きの身分……本当は諜報畑の人間だろう」
フローラ「信じても良いものでしょうか?」
リィン「仮に偽情報だとしても俺達を騙してまで得られるメリットは無いけどな、今回は信用しても良いと思う」
フローラ「ではリーヴスに?」
リィン「まぁ、どの道リーヴスに顔出す予定だったしな。少しヴァンクール大通りで町長に土産を買ってから鉄道で向かおう」
フローラ「承知しました」
そうしてリィン達はドライケルス広場を後にした
ー 帝国宰相執務室 ー
オズボーン「………」
レクター「よぉ、おっさん。言われた通り接触したぜ〜」
レクターはノックも無しにドアを無造作に開けた
オズボーン「フフフ、御苦労だったなレクター」
そんなレクターを咎めるでも無く労いの言葉をかけるオズボーンにレクターは珍しい物を見たかの様な顔をしたが直ぐに普段の顔に戻った
レクター「いや〜、アレがおっさんの息子とはね〜全然似てないじゃね?」
オズボーン「フ、『アレ』は妻の血の方が濃かったからな。私と似てる部分は少ないだろう……で?あのメイドについて何か判ったのか?」
レクター「い〜や全く、アイツに仕えていてリーヴスで一緒に暮らして居ることしか判らなかったぜ。というか今までどこで何をしていたのかすら掴めなかった……」
オズボーン「ふむ……?」
レクター「まだ必要ならまだ調査するぜ〜?」
オズボーン「いや、充分だ。お前は業務に戻れ」
レクター「はいよ〜」
レクターは手をひらひらさせながら退室した
オズボーン「フローラ・クリフト……『黒の史書』にも載ってない人間、何者で何のためにリィンに近づいた……?」