翌日から早速カプア元男爵達の行方を街の住人に尋ねたが……
「前領主様?……う〜ん、確かに家にも来てたが、どこに行ったかまではなぁ……」
リィン「そうですか……」
「あの人達?さぁ……家では見かけて無いからねぇ……」
フローラ「成る程……」
「ジョゼットお嬢様となら同じ位の年頃の男の子を連れてデートしてたわよ」
リィン「………(何やってんだヨシュア!?)」
フローラ「結局有力な証言はありませんでしたね」
リィンとフローラは近くのレストランで早めの昼食を取りながら話した
リィン「目撃したとか話したって言う人はそれなりに居るみたいだけどな、何処に行ったかは揃って知らないとは……」
フローラ「でも最後にリーヴス駅で見かけたという目撃証言がありますから少なくともリーヴスを発っているのは間違い無いですね」
リィン「そうなると何処に向かったか……だ」
リィンは地図を広げた
リィン「まずこのリーヴスを列車で離れた前提で考えるとこのままラマール本線で西に向かうと歓楽都市ラクウェル、更にその先……紺碧の海都オルディスだな」
フローラ「先日のカイエン公のお膝元ですね。そして海運を使えばジュライ特区に行く事も可能……ですが」
リィン「あぁ、そこまで行く『理由』が無い、正確にはカプア一味だけなら可能性はあるがヨシュアが一緒なら低いと見てもいいと思う」
フローラ「そうなると一旦ヘイルダムに戻ってからまた乗り換えたとして……帝都から出るのは大陸横断鉄道の他にクロイツェン本線、ノルティア本線、サザーランド本線……この五つですね」
リィン「そうだな……一応カプア一味は犯罪者だから大都市に潜伏するとは考え難いが」
フローラ「いえ、却って辺境より大都市の方が潜伏しやすいと思います」
リィン「その根拠は?」
フローラ「まず第一に大都市の方が人の出入りが多い、そして大都市なら人が多く集まる場所や施設も豊富、そして何より『情報』が集まりやすい事です。辺境は余所者は目立ちますし情報も集まりにくいですし」
リィン「成る程ね……ならヨシュア達は帝都に居る可能性もあるかな?」
フローラは頭を振った
フローラ「どうでしょう?確かに交通や潜伏のしやすい場所もありますがそこに固執する程愚かだとも思えません」
リィン「確かに……そうなると厄介だな、帝都ヘイルダム以外にも大都市は幾つもあるからな。さっき挙げたオルディスの他にセントアーク、バリアハード、ルーレ……それにクロスベルもか」
フローラ「……いっその事全部回ってみませんか?」
リィン「何?」
フローラはそんな提案をしてきた
フローラ「どの道ヨシュアさんが何処に行ったのか判らないのですし、エステルさんの修行も時間がかかります。それに……」
リィン「それに?」
フローラ「今のエレボニア帝国の『現状』を見て周るのも決して無駄じゃないと思うんです。リベールと違うこの国が何処に向かうのか……それはきっとリィン様とは無関係ではいられないと思います」
フローラはそう言い切った
リィン「……そうだな、焦っても状況は変わらないしな……帝国を周るのも一興か」
リィンは腕を組みながら自分の考えを言った
フローラ「では、最初にどこから向かいますか?」
リィン「オルディスに向かおうと思う。それと万が一『転移』も使え無いなんて事はないよな?」
フローラ「それは大丈夫です。いざという時は『アンファング』は勿論、リベールすら転移出来るように整備していますから」
リィン「なら良い、早速オルディス行きのチケットを取ろう」
フローラ「はい」
リィン達はランチを食べ終えるとランチの会計を済ませてから店を出た足でリーヴス駅でオルディス行きのチケットを取ろうとしたが……生憎オルディスまで行く列車は明日まで待たなくてはいけなかった
リィン「出鼻くじかれたな……」
フローラ「リィン様、一度私『アンファング』に戻っても良いでしょうか?」
リィン「構わないが……何をするんだ?」
フローラ「丁度良い機会だからアップデートしようかと思いまして……」
ー 翌日 ー
フローラは街の郊外でリィン立ち合いのアップデートのお披露目をしていた
フローラ「それではいきます………アーツ駆動……ファイアボルト!」
フローラからアーツ特有の光を纏うと手から炎が出て標的に当たった
フローラ「うん、身体にも異常無し、アーツも威力は問題無し……アップデート成功ね」
リィン「アーツに対応するためのアップデートだったのか」
フローラ「はい、以前の身体は飽くまで間に合わせの物でしたからアーツは使え無かったので……しかし『アンファング』の工廠も完全に復旧したので戦闘用の義骸に換装しました。以前より大幅な戦闘力が上昇しました」
リィン「そりゃあ頼もしい、でもまた何でこの段階で強化を?」
フローラ「いえ……封印区画でリシャール大佐やトロイメライを相手した時に限界を感じてたのでこの機会にと思いまして」
リィン「成る程、だがそんな気にしなくても……」
フローラ「これは私の矜持でもあります。主に負担をかけておいては従者の意味がありません……貴方の従者として相応しく有りたいのです」
フローラはそう言ってリィンを見据えた
リィン「……判った、だが気負うなよ、何度でも言うが俺達は家族だ。役に立ちたい気持ちは素直に嬉しい、でもそれでフローラが無茶をしてほしくない……」
フローラ「リィン様……」
リィンは懐中時計に視線を落とした
リィン「そろそろオルディス行きの列車が到着する時間だ。行こう」
フローラ「はい……!」
こうしてリィン達は町長に挨拶をして再び列車に乗り込んだ
フローラ「オルディスまではどうしても一日かかりますね」
乗り込んだ列車の座席に座ったフローラはそう言ってバスケットからサンドイッチを取り出してリィンに手渡した
リィン「こればかりは仕方無いさ、今は風景を楽しもう」
リィンはサンドイッチを受け取り頬張った。暫く他愛のない話をしてると前の車両から軍人が入ってきた。しかも只の軍人ではなく……
リィン「TMP(鉄道憲兵隊)か……」
フローラ「珍しいですね……?一般車両に彼等がいるのは……」
周りの乗客も同じ事を思ったのか怪訝な顔をしている。そうこう思っていると彼等の上官らしい女性士官が先頭にリィン達の車両に進んできた。どうやら手荷物検査をするらしい……そしてその女性士官がリィン達の前に立ち優しく微笑みながら言った
「初めまして、鉄道憲兵隊のクレア・リーヴェルト少尉です。お手数ですが手荷物検査にご協力願います」