「ば、馬鹿な……たった一人に……」
テロリストのリーダーは《銀》によってその場にいた十数名が床に沈んでいるのを信じられないといった顔で見ていた
銀『言った筈だ。たかが十数名でこの《銀》を討ち取れ無いとな……ましてや素人が武器を持った程度、脅威にもならん(とはいえ奴等が持っている武器……コイツ等の性格的にRF社製は無いにしてもヴェヌル社でもZCFでもない……後で一つ持ち帰って彼に見せるか)』
《銀》は床に転がっている見慣れない銃火器を一瞥した後テロリストのリーダーに向き直った
「ヒィッ!?」
銀『さて……貴様一人になったぞ。素直に投降すれば痛い思いしなくて済むぞ?些か業腹だか……』
銀はリィンとの約束でテロリストは痛めつけても構わないが殺しは駄目と言われていた
「だ、誰が降伏するものか……ッ!我々の大義を理解しない愚か者に……」
銀『ほう、そうかそうか……それは残念だな。ならその愚か者の手で痛い目に遭うのを所望するのだな?』
銀はそう言いながらもどこか嬉しそうな声をしてテロリストに近づく、テロリストはポケットから無線を取り出した。
銀『む?』
「は、馬鹿がこの船にはまだ百人以上乗り組んでいるんだよ!幾ら貴様が強かろうがたった一人で百人相手出来ないだろ!!」
テロリストは強気で言ったが、銀は寧ろ呆れて溜息をついた
銀『はぁ〜何か秘策でもあるかと思えば……結局数頼みか、少しでも警戒した私が馬鹿だったな』
「何を強がりを言ってる!謝るなら今のうちだぞ!!」
銀『ふん、まぁ良い…呼んでみるが良い。どうせお前の望む結果にはならんがな』
銀はそこら辺に倒れていたパイプ椅子を起こして自ら座ってテロリストを煽った
「ッ!!……後悔するなよ!?」
テロリストは無線で相手を呼び出した
「俺だ!、侵入者がブリッジに居る!!至急増援を……《こっちはそれどころじゃねぇ!》………は?」
《メイドが………メイドが騎士を連れて暴れ回ってるんだよ!寧ろこっちが増援を……止めろ!来るなぁァァァ!!》
そう言って通信が途切れた……
「…………」
銀『で?増援がどうしたって?』
「ま、まだだ!まだ貨物室にも相応の数が……《こちら貨物室!!》こちらブリッジ!丁度良い!至急増援を…《子供が、子供が一人、剣を片手にこっちを蹂躙している!このままじゃあ全滅だ!!誰かよこしてくれ!って頼む!命だけは……うわぁぁ!》………え?」
ー ツ ー ツ ー
「………………」
再び通信が途切れテロリストは無言で無線を床に叩きつけ……
「巫山戯んなぁぁぁぁぁ~!!?」
天井に向かって吠えた
銀はそんなテロリストの様子を笑いを堪えていた
ー 時は少し遡る ー
「お、おい、さっきからブリッジが騒がしいぞ?」
「あぁ?知らねぇよ、おおかたオルディスを攻略した後を夢想してんじゃねぇのか?」
甲板で銃を構えながら周辺を警戒していたテロリストが駄弁ってた
「オルディスか……計画では毒ガスを流して無人になった街中の金目の物を強奪するんだよな?」
「おいおい、強奪とは人聞きの悪い事言うなよ。これは『革命』を遂行する為の資金調達だ。この国を圧政から救う為に街に協力してもらうんだ」
「は、と言いつつ金目の物を自分の懐に入れるんだろう?」
「それはお前もだろう?特にオルディスはカイエン公の城館もあるからな、たんまり財宝があるだろうぜ」
「人民から搾取した財宝を我々が有効活用して、俺達の懐も潤う……革命様々だな」
「全くだ!アハハ!!」
そんな馬鹿話をしているのを通りかかった別の構成員が顔を顰めて通り過ぎた
「………(畜生、良いバイトが有るなんて言われて応募したら実はテロリスト集団で毒ガスを民衆が居る街中に巻くだと!?狂ってやがる!辞めたいが下手したら殺される……あぁ女神様どうかこの罰当たり共に天罰が下ります様に……)」
この男は家族を養う為に応募したのだが所謂闇バイトを扱う広告とは知らず高収入の謳い文句に飛びついた結果テロリスト構成員となってしまった。男は革命に興味は無く暴力で物事を全て解決出来ると狂信しているこの集団を心底嫌っていた
「……ん?」
男はふと顔を上げると船首の手すりに誰か居るが見えたが見覚えの無い人間だった
「誰だ!!この船の乗組員ではないな!?」
男が銃を構え近寄ると他の構成員も気づいて近寄って来た。そしてその人影が振り向くと美しい女性でメイド服を着て銀髪で紅い瞳が絶世の美女と呼ぶに相応しい組み合わせだった。男達はその姿を見て誰何するのを忘れ見惚れていた。
そしてその女性がカーテーシーして口を開いた
「Guten Abend(こんばんは)、テロリストの皆様。我が主は皆様を叩き潰す事を決めました。ですが我が主は寛大です……皆様がこのまま母国に帰るか、己の罪を悔い改めて近くの領邦軍に投降して裁きを受けるなら皆様の命は保証しましょう」
テロリストは一瞬呆然としたが次の瞬間爆笑していた
「叩き潰す?俺達を?おいおいお嬢さん、出来ないこと言うもんじゃねぇぜ?それよりも俺達と『イイ事』しようぜ」
テロリストの一人が下卑た顔で近づき女性の顔に触ろうとした時女性がテロリストの腕を捻り上げた
「イダダダ!!何するんだ?」
「触らないで欲しいですね。主以外に触れられて喜ぶ趣味は無いので」
「このアマ!!」
テロリストは捻り上げられて無い左手で殴ろうとしたがその前に捻られた右手がへし折られた
「ギャアアア!?」
へし折られた男は女性の足元で痛みで転げ回った
「自己紹介が遅れましたが私の名はフローラ、短い間ですが見知りおきを……」
女性……フローラが指を鳴らすと何も無い空間から甲冑姿の騎士が二十名現れた!
『………え?』
突然の事にテロリスト達の思考が追いついていない
フローラ「さぁ暴れなさい!!外道共を殲滅せよ!」
フローラの号令の元、騎士達はそれぞれ武器を構えテロリストの中に突っ込んだ!
「ハアハア………」
闇バイトに応募してしまった男は近くの部屋に隠れ地獄から逃れようとしていた
「何だよアレは!?クソ!やっぱりさっさと辞めれば良かった、あんな化け物達が居るなんて………」
男は仲間が(非常に不本意だが……)人形のように吹き飛ばされていく光景を思い出し身体が震えた
「嗚呼!この地獄から抜け出したら故郷に帰って地道に働いて家族を養っていこう」
「それが一番ですよ」
「へ?………ヒィ!?」
いつの間にか男の隣にはあのメイドと騎士達が立っていた
「ほ、他の連中は……?」
フローラ「既に沈黙しましたよ。死んではいないですが…それよりさっきの言葉は偽りありませんね?」
「さっき……って、地道に働いて家族を養うって話か?」
フローラ「そうです。もうこんな馬鹿な事から足を洗うなら見逃しても良いですよ?」
男は是非も無く頷いた
「も、勿論だ!もうこんなバイトに手を出さない!!女神様に誓う!」
フローラ「なら、さっさとこの船から降りなさい。領邦軍が来る前にね」
「は、はいぃぃ!」
男は直ぐに部屋を出て貨物船に備え付けられていた救命ボートを大急ぎで降ろしそれに乗って陸地に向かった。
3カ月後、男は故郷のカルバートで家族と慎ましくも幸せに暮らしていた