閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第19話

ー 温泉郷 ユミル ー

 

ノルティア州北部、アイゼンガルド連峰の麓に位置する山間部の都市・集落で、冷涼な気候から降雪量く冬季は雪に閉ざされる事も多い。

 

帝国内では皇帝家所縁の温泉郷として、主に貴族階級を中心に一定の知名度がある。

湧き出る温泉は万病に効力があると言われ、併設されている凰翼館は皇帝から恩賜された格式高い宿泊施設として、皇族や爵位の高い貴族等の名のある名士が保養に訪れる事が多い。

 

リィン・シュバルツァーの故郷である、本来ならば……

 

リィン「……」

 

フローラ「此処がユミルですか……」

 

ルーレを出たリィン達はスピナ間道を歩きそこからケーブルカーに乗り継いでユミル駅に到着した

 

「やぁ、観光かい?」

 

ケーブルカーを降り小さな駅を出ると若い男が話しかけて来た

 

リィン「……えぇ、温泉があると聞いて」

 

「やっぱりそうか、まぁそれぐらいしか無いからねぇ此処は、冬ならあるスポーツも楽しめるんだがね」

 

フローラ「あの広場にある屋根だけ付いた施設はなんですか?湯気が出ているようですが……」

 

フローラはユミルの中心にある設備を指差して尋ねた

 

「あぁ、あれは『足湯』だよ。足だけ温泉に浸かれるんだよ」

 

フローラ「足だけ……それ意味あるのですか?」

 

「ハハハ!最初は皆そう言うよ。でも浸かってみれば分かるさ、まぁ兎に角、ようこそユミルへ!ゆっくりしていってくれ!」

 

そう言って男は離れていった

 

フローラ「えっ……と、どうしましょうか?」

 

フローラは困惑した顔でリィンに聞いた

 

リィン「まぁ……浸かってみるか?」

 

リィンも苦笑していたがそのまま足湯の方へ向かった。

 

フローラ「………本当にくるぶしの高さ位しか湯が張ってませんね?」

 

リィン「だな、じゃあ足いれてみようか」

 

リィンは腰掛けに座り靴を脱ぎそのまま足湯に足を入れた

 

リィン「ふぅ……気持ち良い、足が暖まる。フローラも一緒に入ろう」

 

フローラ「……では、私も失礼して……」

 

フローラも腰掛けに座って自分の靴を脱ぎリィンの隣で足湯に足をいれた

 

フローラ「これは……確かに暖まりますね。しかも足だけだからタオルで拭くのも楽ですね」

 

リィン「ハハ…だな、この郷は良い処だ……」

 

フローラ「……リィン様、失礼を承知てお尋ねしますがもしかしてここが……?」

 

リィン「……あぁ、父オズボーンが幼かった俺を連れて目指していたのはここ、ユミルだ……」

 

リィンはあの時の事を語った

 

リィン「……フローラには以前少し話したと思うが父オズボーンは貴族に疎まれ、帝都の自宅は猟兵の仕業に見せかけられて焼失した。母はその時に命を落とし父は生き残った俺を背負い安全な場所に逃がそうとしたんだ。それがここ……ユミルだったんだ」

 

リィン「……あの時の父の背中は今でも覚えている。母を失った哀しみ、襲撃をしてきた者たちへの怒りや憎悪、でもそれ以上に生き残った俺を心配かけまいと振る舞おうと明るい声でユミルの事を話す父の姿を……」

 

フローラ「リィン様………」

 

リィン「……もしも……いや、これは無意味な問いだな、忘れてくれ」

 

フローラ「………『もしも』と思うのは確かに無意味かも知れません。ですがそう言う思いを抱くのは決して恥ではないと思います」

 

リィン「フローラ?」

 

フローラは己の胸に手を当てた

 

フローラ「起こってしまった『過去』は変えられないし、変えてしまっては過去の己の決断を否定してしまう、そう思うのは当然でしょう。でも『もしも』を考えてしまうのは人として当たり前の感情ですし、そう思う程大切に想っていたんですよね?なら……無意味では無いと私は思います」

 

リィン「……フローラ、ありがとう」

 

リィンはフローラの頭を撫でた

 

フローラ「あ………」

 

フローラは顔を紅くしながらも嬉しそうに目を細めた

 

リィン「正直、気になっていたんだ。父が幼い俺を託そうとしたユミルの郷を……そして実際に見て……父の愛情を再確認出来た。これ以上無い位嬉しかった……」

 

リィンはフローラの頭を撫でていた手をフローラの頬に添えた

 

リィン「だから………父を……否、《イシュメルガ》を止める。それが今の俺が出来る精一杯の親孝行だ……改めて力を貸してくれるか?フローラ………」

 

フローラ「………」

 

フローラは頬に添えたリィンの手を取り優しく両手て握った

 

フローラ「………何度でも応えましょう、私は貴方と何時までも共に在ります。貴方が最後を迎える時、私が力尽きるその日まで貴方を支え続けます」

 

リィン「フローラ………」

 

どちらからとも無く互いの唇が近づき触れようとした時……

 

「コホン……!」

 

「「!?」」

 

咳払いが聞こえ振り向くとユミルの神父らしい男性と顔を紅くして手で顔を覆った風に見えるが指の隙間からこちら覗いているシスターがいた

 

「お邪魔だったかな?」

 

リィン「い、いえ……済みません」

 

「謝る必要は無いよ。何か深刻そうな顔をしていたから神父として相談に乗ろうかと思っていたけど……その必要は無かったみたいだね?」

 

リィン「えぇ……彼女のお陰で」

 

リィンは顔を紅くして目を背けてるフローラを見た

 

「そうか……ユミルの郷を見て感想はどうだね?」

 

リィン「……とても良い郷だと思います。人々は暖かくて都会の喧噪とは無縁で……」

 

「それは良かった。ユミルは領主様が気さくな方でね。もし良かったら挨拶していくと良い、む…………?」

 

神父様がそう言ってるとアイゼンガルド連峰に向かう道から一人の男性が息を切らしながら駆け込んで来た

 

リィン「彼は?」

 

「この郷て狩人をしている男性ですが……何があったのでしょうか?」

 

そう言うと神父達はその男性に近づいていった

 

リィン「俺達も行くぞ」

 

フローラ「はい」

 

リィン達も足湯から足を出し靴を履いてその男性の元にいくと既に人だかりが出来ていた

 

「おい!何があった!?」

 

「ぜぇ……ぜぇ……み、水を…」

 

リィンはフローラに目配せするとフローラは自分が持っている水筒を男性に差し出すと男性はそれを受け取り一気に飲み干した

 

「た、助かった……済まない姉ちゃん……」

 

「一体何事なのですか!?と言うか貴方確か領主様と一緒に………」

 

リィンは次の言葉を聞いて血の気が引いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その領主様が見知らぬ獣に襲われてラインフォルトのご令嬢と友人、メイドが離れ離れになったんだよ!!」

 

 

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