ー 翌日 ー
テオ「もう行くのか?」
ルシア「もっとゆっくりしていっても良いのよ?」
麓に降りるケーブルカーの前でリィン達とルーレに帰るアリサ達にシュバルツァー夫妻が見送りに来ていた
リィン「えぇ、充分にユミルを観させて貰いましたし……それに元々別の用がありますから長く留まれないんです」
テオ「そうか……でも本当に良いのか?ギリアス兄さんに知らせなくて」
リィンは頭を振った
リィン「多分父さんはそれは望まないでしょう。それに……父さんの立場を考えると……」
テオ「そうか……そうかも知れないな。アリサ嬢、エマ嬢も今回は災難に巻き込んで本当に済まなかった」
テオはアリサ達に頭を下げた
アリサ「いえ……前にも言いましたがアレは閣下のせいではありません」
エマ「そ、そうです!だから御自分を余り責めないでください」
テオ「そう言ってくれるならありがたい、気を付けてルーレに帰りなさい」
アリサ「はい……」
ルシア「リィン、これを……」
ルシア夫人はリィンにバスケットを差し出した
リィン「これは……?」
ルシア「お弁当よ……食べやすい様にサンドイッチにしたから良かったら旅の途中に食べて頂戴」
リィン「……ありがとうございます。後で美味しく頂きます」
リィンはバスケットを受け取った
ルシア「えぇ、そうして頂戴……フローラさん、と仰ったかしら……どうか彼を……『息子』を宜しくお願い致します」
ルシア夫人はそう言ってフローラに頭を下げた
フローラ「………必ずリィン様をお守りする事をお約束致します」
そんなルシア夫人の姿にフローラも敬意を払いカーテシーをした
テオ「……また遊びに来なさい。今度は私達の館で一緒に食事と、娘も紹介したいしな……」
テオは右手をリィンの前に差し出した
リィン「……はい、必ず」
リィンも右手を出して握手した。そしてケーブルカーに乗り込むと動き出し麓へ降り始めた
リィン「……」
フローラ「良い郷でしたね」
無言でルシア夫人に渡されたサンドイッチ入りのバスケットを見つめていたリィンにフローラは優しく声をかけた
リィン「……あぁ、本当にな……」
リィンも優しく微笑んだ
フローラ「では次は何処に向かいますか?」
リィン「その前に……答えは出たのかな?」
リィンは一緒にケーブルカーに乗車したアリサ達の顔を見た。アリサ達はその言葉に頷いて言葉を紡いだ
アリサ「あれからエマと一緒に考えたわ。確かに私達が好意を抱いていたのはリィン・シュバルツァーであってこの世界のリィンを見ていなかったと思うわ……」
エマ「だけど……それでも私達にはリィンさんは大切な人なのには変わりがありません」
リィン「だが……」
アリサ「それに……リィンは自分で言う程違っていないわ」
リィン「………どういう意味だ?」
エマ「そのままの意味ですよ。リィンさんはあの古代種から私達を逃がす為に殿を務めましたよね?私達の知るリィンさんもあの状況なら確実に同じ事をしました。ですから………今改めて宣言します。私達は貴方が………好きです。愛してます」
エマとアリサは真っ直ぐにリィンを見た
アリサ「勿論リィンの気持ちを無視する積もりは無いわ。今のは本当に只の宣言、先ずは仲間として信頼関係を築く積もり……宜しくリィン」
アリサとエマはリィンに右手を差し出してきた
リィン「………シャロンさんはアリサのメイドでしょう?諌めなくて良いのですか?」
リィンはニコニコ顔のシャロンに視線を向けた
シャロン「うふふ、確かに私はアリサお嬢様のメイドですが事この件に関して異は唱える積もりは御座いませんわ。寧ろ大歓迎ですので……」
リィン「そうですか……」
リィンは今度は己の従者に視線を向けた
フローラ「リィン様の状況を考えましたら有益な申し出かと……勿論リィン様の判断次第ですが」
リィンは少し考えてから溜息をついてアリサ達に問うた
リィン「正直に言って俺は好意を抱いてる女性や複数の女性に告白されている。そんな女の敵みたいな男にそれでも好意を向けるか?」
アリサ達はキョトンとした顔をしたが笑って答えた
アリサ「あぁ、やっぱりね……リィンの事だからそうだと思ったわ」
エマ「あ、あはは……やっぱりリィンさんですね」
リィン「……そっちの俺は何やらかしたんだ?普通こんな話題は嫌悪されるのだが……」
アリサ「まぁそれは何れね、それにリィンはその人達を捨てたりする?」
リィン「そんな事は絶対にしない!」
アリサ「なら良いじゃない、私達は気にしないわ。で、答えは?」
リィン「ふぅ……負けたよ。宜しくアリサ、エマ」
リィンは二人と握手を交わした
ルーレ迄戻って来たリィン達一行はルーレ駅で別れる事になった
アリサ「そう……折角ルーレまで来たんだからゆっくりしていけば良いのに」
エマ「まぁまぁ、アリサさん……聞けばリィンさんも予定があってルーレに来ただけなんですから…」
エマは落ち込むアリサを宥めた
リィン「済まないな、次の機会があったら是非に」
シャロン「うふふ、その時には私が腕によりをかけて料理を振る舞いますわ」
フローラ「リィン様に料理を振る舞うのは私の役目、貴女は自分の主に振る舞いなさいよ」
シャロン「あらあら、客人に料理を振る舞うのはホスト側として当然では?」
フローラ「本当にそれだけかしら?」
また二人が謎の火花を散らしていた
リィン「ほらほら、喧嘩するな……それじゃあ二人ともまた、何れ」
アリサ「うん……」
エマ「お気をつけて」
シャロン「またの来訪をお待ちしておりますわ」
三人の声を聞いてリィン達は駅の構内に入って行った
フローラ「さて、どうしましょう?この先は……ノルド高原ですが帝都に戻りますか?」
リィン「そうだな……「済まないちょっと良いか?」……うん?」
振り向くと褐色肌の偉丈夫な男がリィン達の後ろにいた
リィン「あぁ、済まない邪魔だったかな?」
リィン達は駅の通路の真ん中に居たので邪魔したかと思ったが
「いや……そっちでは無くて尋ねたい事があるんだ」
リィン「尋ねたい……?俺が判るなら応えるが……」
偉丈夫は気まずそうに頬をかいた
「いや……まぁ簡単な話なんだ………
切符の券売機の使い方を教えてほしい」
リィン「………………はい?」