ー ノルド高原行貨物列車 ー
「済まない……切符の買い方を教えて貰っただけでなく列車まで……」
リィン「気にするな、まぁ………少し驚いたのは否定しないが」
あの後リィン達は券売機で使い方を一通り教え、時刻表の見方も自信が無いと乗り掛かった船なのでリィン達はノルド高原行の列車に乗り込んだ
「そう言って貰えると助かる……恥ずかしながら列車に乗るのも切符を買うのも今回初めてでな」
男は恥ずかしそうに頬をかいた
フローラ「ノルドに住んでる方なら仕方ないかと……あちらでは機械に触れる機会は少ないかと」
「あぁ、その通りだ。機械と言えば邑にある古いトラック位しか無くてな……っと名乗るのが遅れたな……俺はガイウス・ウォーゼルという者だ。ノルドの民だ」
リィン「俺はリィン・アイスフェルトだ。こっちはメイドのフローラ・クリフト、宜しく……ガイウスは何故ルーレに?」
ガイウス「リィンにフローラ殿だな……こちらこそ宜しく、俺がルーレにいた理由は……まぁ所謂社会勉強という奴だ。俺は来年帝国の士官学院を受験したくてな。だが生憎ノルドには試験会場なんて物は無いからな、会場があるルーレまで列車に乗る必要があったんだが……」
リィン「乗り方が判らなかった……と?」
ガイウス「あぁ、邑では乗り物は馬かトラックしか無くてな……ゼンダー門の顔馴染みの兵士に乗り方を教えて貰ったんだが・・・・ルーレに着いたら着いたで初めて見る物ばかりでおまけに人も大勢居て目まぐるしかったな、しかも路線図?とやらの見方も判らなくてノルドに帰ろうにもどう行けばいいのか困り果ててたんだ………」
ガイウスの疲れきった顔にリィン達は心から同情を禁じ得なかった
リィン「それは、大変だったな……だけど社会勉強で士官学院?」
ガイウス「それは勧めてくれた人が軍人だったのもあるが、元々『外』を見てみたかったのもある。帝国という隣人がどんな国なのか、どういう人々が暮らしているのか………この眼で確かめたかったんだ」
リィン「……凄いな、同い年でそこまで考えてるとは………」
フローラ「えぇ………帝国で、いえゼムリア各地の子供で同じセリフを言えるのは何人いることか……」
リィン達は感心した目をガイウスに向けた
ガイウス「ハハッ、俺から見ればリィン達も凄いと思うがな。見たところ帝国内を旅をしてるみたいだな?」
リィン「まぁな、今はリベールに滞在しているよ。今回は事情があって帝国に戻って来たが」
ガイウス「リベールか・・・・・最近大きな事件が起きたと聞いたが、差し支えなければ教えてくれないか?他国を実際見て来た人の話も興味がある」
リィン「あぁ、構わないさ・・・・・・そうだな、どこから話そうか」
リィンは自分が体験した事を事細かく話した。ルーアンのジェニス王立学園の学園祭、そのルーアンの海に巣くっていた怪物、ツァイスの工房、そして・・・・・・王都グランセルで起きたクーデター未遂事件の顛末も
ガイウス「……非常に興味深い話ばかりだな、古の生物『オケアノス』と……それにリベールの忠臣の反旗か……」
リィン「そう言って貰えると話した甲斐があったよ……お?」
ガイウス「ふむ……アイゼンガルド連峰のトンネルに入ったか、後二時間はトンネルを入ったり出たりしてノルドに着くな」
フローラ「なら少し早いですが昼食にしませんか?」
フローラはルシアから受け取ったサンドイッチが入ったバケットを持ち上げた
リィン「そうだな……ガイウスも一緒にどうだ?」
ガイウス「それは有り難いが……良いのか?」
リィン「遠慮しなくていい。一杯あるしな」
ガイウス「それなら……頂こう」
その後はルシアのサンドイッチを三人で舌鼓を打ったり仮眠を取ったりして二時間、最後のトンネルを抜け帝国の守護するゼンダー門に到着した
ー 14:30 ゼンダー門 ー
リィン「ここがゼンダー門か……」
フローラ「今更ですが軍事施設ですよね?私達が入っても良いのでしょうか?」
ガイウス「其処は心配要らない、ノルドには偶に写真家や俺の故郷に物資を運んでくれる業者も居るから必要な手続きを踏めば簡単に許可を出してくれる。まずは窓口に向かおう」
ガイウスはそう言って窓口まで案内してくれた
「やぁ、ガイウスじゃないか……どうだったルーレは?迷子にならなかったか」
顔馴染みらしく窓口の兵士はガイウスに親しげに話しかけた
ガイウス「只今戻りました、恥ずかしながらルーレの街並みに圧倒されてしまいました」
「ハハッ……まぁ最初はそんな物だろう、その内慣れてくれば帝都も行けるさ……ところで後ろの二人は何だ?一人は偉く別嬪さんだが……」
窓口の兵士はガイウスの後ろのリィン達に気付いて怪訝な顔をした
ガイウス「彼等はルーレで親切に券売機の使い方を教えくれた人達です。ノルド高原を観光したいと言ってたので一緒に来ました……許可は降りますよね?」
「それはまた珍しいな……まぁ問題無いと思うぞ?必要な書類さえ書いて貰えればすぐに通行許可は降りる。早速申請するかい?」
ガイウス「お願いします」
「よし来た、じゃあそっちの二人はこの書類に必要事項を書いてくれ。後パスポートも拝見するから」
リィン「判りました」
リィン達は渡された書類に必要事項を書き込み窓口の兵士にパスポートを渡した
「リィン・アイスフェルトさんにフローラ・クリフトさんね……はい、問題無いから返すね」
兵士はそう言ってパスポートを二人に返した
「後一応知っていると思うけど此処は共和国とも接してるから不用意に越境はしないようにね」
リィン「判りました」
「宜しい……ようこそノルドへ!ゆっくりしていきなさい……『アレ』は使うかい?」
ガイウス「はい、お願いします」
「よし来た!じゃあ先に外で待っててくれ、直ぐに用意するから」
窓口の兵士はそう言って立ち上がって去っていった
リィン「……『アレ』って?」
ガイウス「直ぐに判るさ、俺達も外に出よう」
そう言われてガイウスと共にゼンダー門の外を出ると……
リィン「あ……ッ」
フローラ「これは………ッ!」
二人は目の前に広がるノルドの雄大な自然の風景に圧倒され息を飲んだ………!!
リィン「なんて………雄大な……」
フローラ「これは………いえ、言葉すら不要ですね」
ガイウス「ふッ……気に入ってくれたみたいで良かった」
ガイウスは二人の様子に満足気に頷いた
リィン「あぁ、話には聞いていたけどまさかここまでとは……」
すると突然馬の鳴き声が聞こえてきた。階段を降りて確認するとさっきの兵士が馬を三頭連れていた
「お、来たな」
リィン「馬……ってまさかこれに乗って?」
ガイウス「そうだ、ノルドでは馬が重要な移動手段でな」
「ゼンダー門に詰める我が軍も馬を扱っているんだ。軍用車両もあるがこっちの方が都合が良い時もあるしな」
フローラ「成る程……でも私達は馬の扱いは……」
ガイウス「大丈夫。歩かせる位は教えるさ、まずは二人とも馬に近づいてみてくれ」
二人はガイウスに言われるがまま馬に近づくと馬は二人に顔を近づけ匂いを嗅いで顔を擦りつけてきた
リィン「アハハ、くすぐったいな」
リィンも馬の頭を撫でると機嫌良く鳴いた
フローラ「うふふ、可愛いわね。あ、こら!髪留めを引っ張らないの!食べ物じゃないんだから!あ、こら!返しなさい!」
フローラも愛おしげに撫でると馬はフローラの髪を束ねてるリボンを引っ張りフローラの髪が解け馬はフローラのリボンを咥えたまま顔をフローラに擦り付けた
ガイウス「ふッ……馬も二人の事を気に入ったみたいだな、これなら歩かせる位には乗れるかもな」
その後三十分は簡単な馬の扱い方を教えて貰い馬を歩かせる位には上達した
ガイウス「それじゃあこれから俺の集落に向かおう」
リィン「判った。お世話なりました」
「何、道中気を付けてな、『風と空の女神』の加護を」
ガイウス「ありがとうございます。では……!」
ガイウスを含めたリィン一行はゼンダー門を後にした