閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第34話

ー ノルド高原 帝国軍監視塔付近 ー

 

エミリア「ちょッ、ちょっと!もうちょっとゆっくり走ってよ。お尻が痛いわ!」

 

エミリア中尉を送り届ける為にリィンとフローラは共和国軍が実効支配している南東の基地に向かって馬を駈けていたが馬に慣れていないエミリア中尉はフローラの腰に必死にしがみついていた

 

フローラ「と申しましても……」

 

リィン「そもそも共和国軍は乗馬の訓練はしないのか?」

 

並走しているリィンは呆れた声でエミリア中尉に聞いた

 

エミリア「そんなのしないわよ!?専ら移動は自動車を使えば良いんだし、馬なんて儀仗兵しか使ってるとこ見たことないわ!」

 

エミリア中尉は顔を蒼くしながら反論した

 

リィン「それはまた……だが気持ち良いだろう?」

 

エミリア「それは……そうね、風になったみたいで気持ち良い……馬は怖いけど」

 

フローラ「慣れさえすれば良い子なんですけどね……しかし、その男ずっと目を覚ましませんね」

 

フローラはチラリとリィンの馬に乗せている男を見た、未だに意識が無くしかも両手足を拘束して猿轡を噛ませてる徹底ぶりだ

 

リィン「確かにな……脱走兵という事を抜きにしてもこれは……しかも気になる事を言われたしな」

 

 

ー    一時間前     ー

 

ガイウス「済まないリィン、俺も一緒に行ければ良かったんだが」

 

ガイウスは家族が心配しているかも知れないと集落に戻る事になりリィン達に別れを告げガイウスは握手を求めた

 

リィン「気にするな、ラカンさんに宜しく伝えてくれ」

 

リィンも求めに応じて握手を交わした

 

ガイウス「そう言って貰えると助かる。リィンに『風と女神の加護』を、気を付けてな」

 

ガイウスはそう言うと馬を操り集落の方を駆けて行った

 

レクター「ダチとの別れは済ませたか〜?」

 

リィン達が離れていくガイウスの後ろ姿を見送っているとレクターが現れた

 

リィン「……えぇ、もっと観光したかったですがね。で、エミリア中尉達は?」

 

レクター「もう来てるぜ〜ほら」

 

レクターが顎をしゃくった方を見ると帝国兵に連れられたエミリア中尉と脱走兵が居たのだが……

 

リィン「……随分厳しい拘束してますね」

 

エミリア中尉は拘束らしい拘束をされていないのとは対照的に脱走兵は拘束衣までされていてそのままリィンが乗る馬に荷物の様に置かれた

 

レクター「ま、訳ありでな〜詳しい話はそこの中尉殿に聞いた方が早いぜ〜、最も………答える気は無いだろうがな」

 

リィン「…………」

 

リィンはチラッとエミリア中尉の方を向いたが中尉は顔を逸らした

 

レクター「ま、気楽に行ってこいや、向こうさんも民間人相手なら無茶は言わないだろうしな」

 

レクターは笑ってリィンの肩を叩いた

 

リィン「……クローゼが苦労した訳だな、気楽に言ってくれる」

 

レクター「おいおい、アイツがどんな風に話をしたかは知らないが俺は至って真面目に生徒会を務めていたぜ〜?」

 

リィン「へぇ?本校舎の屋根に登って授業や生徒会をさぼったり、ルーレのホテルのスロットを回してたりしてたと聞いたのだけど?」

 

レクター「♫〜」

 

レクターは口笛を吹いてそっぽを向いた

 

フローラ「リィン様、準備が出来ました」

 

フローラはエミリア中尉を後ろに乗せて近づいて来た

 

リィン「すぐ行く!……では行ってきますね」

 

リィンも自分の馬に跨りそう言った

 

レクター「……余計なお世話かもしれんが一応言っておくぜ、国っていうのは何処も《闇》があるもんだぜ。帝国も共和国にも、な………迂闊に深入りすると碌な目に遭わねぇぜ?」

 

レクターは冷酷な表情になりリィンに警告した

 

リィン「……忠告、感謝します」

 

リィンはそう言うと共和国方面に馬を奔らせた

 

ー   現在    ー

 

フローラ「……もしかしなくても、只の脱走兵では無いのでしょうね。それもかなりの厄介事……」

 

リィン「だろうな……ま、下手に関わらずに彼女等を共和国に引渡したらさっさと戻れば良いだけの話だ

 

リィンはチラッとエミリア中尉の顔を見て呟いた

 

エミリア「……何度も言うけどこれは共和国の機密事項なのよ。おいそれと話して良い物じゃないのよ。ましてや民間人には、ね」

 

リィン「機密事項……ね」

 

エミリア「それより、私からも一つ聞いて良いかしら?」

 

リィン「……聞きたい事?アンタが俺に?」

 

エミリア「そうよ……ズバリ!クローゼって誰!?もしかして彼女!?なら何処まで『シタ』の!」

 

リィン「恋愛に興味津々なお年頃の女学生かッ!?アンタ立場判ってるのか!?」

 

リィンは思わずツッコミをいれた

 

エミリア「だって……気になるじゃない!ウチの基地は男が殆どで女性隊員が数える程しか居ないから恋バナに飢えてるのよ!ね、貴女だって興味あるでしょ?自分の主の恋愛事情!」

 

エミリア中尉は同性であるフローラに話しを振った

 

フローラ「えっと……どう答えたら…?」

 

フローラもこれには戸惑いを隠せなかった

 

リィン「フローラ、答えなくて良いから……それよりここから先は共和国の実効支配している領域だ。気を抜くな」

 

フローラ「はい!」

 

エミリア「あ、誤魔化したわね……まぁ良いけど、この辺で我が軍のパトロールが来るから直ぐに見つかると思うわよ」

 

リィン「向こうの出迎えが来るなら尚更好都合だな……さて、鬼が出るか蛇が出るか」

 

リィン達が共和国領域に入り十分後……遂に共和国軍と遭遇した

 

フローラ「リィン様、前方に共和国軍の戦車1、装甲車3、軍用トラック3、後は歩兵多数です!」

 

リィン「出迎えの部隊だな……フローラ、白旗を掲げてくれ。一応敵意は無い事は伝え無くてはな」

 

フローラ「了解です」

 

そう言ってフローラは白旗を掲げた。共和国軍兵士も此方に気付き減速する様にジェスチャーをして来たので指示に従い馬をゆっくりと減速させて共和国軍の目の前で止まった

 

「何者か!!」

 

共和国軍兵士は銃を構えながら此方を誰何してきた

 

リィン「俺達は帝国の民間人です!貴国の『迷子』になっていた『観光客』を送り届けに来ました。引き取りを願いたい!!」

 

それを聞いた兵士はピクリと眉を上げ構えを解いた

 

「了解した。少し待て」

 

そう言って誰何してきた兵士は奥に向かって行ったかと思うと直ぐに将校を連れて戻って来た。その将校を見たエミリア中尉は驚いたかと思うとフローラの背中に顔を隠した。

 

「帝国から君達の事を聞いたよ。此の度は迷惑をかけたね。公私ともにね」

 

将校が穏やかな声でそう言った

 

リィン「いえ……公私ともに?」

 

リィンは首を傾げた

 

「あぁ、それはな…………いつまでも隠れて居るんだ!?」

 

将校はフローラの後ろに隠れているエミリア中尉に怒鳴った

 

エミリア「だ、だってお父さん……」

 

「お父さんは辞めなさい!!今は軍務中なんだぞ!エミリア中尉!!」

 

エミリア「は、は!失礼しました!ハーリング中将!!」

 

リィン「………中将!?」

 

その言葉を聞いてリィン達は驚いた

 

「そういえば名乗っていなかったね。失礼した」

 

中将と呼ばれた将校は軍帽を脱いで敬礼してきた

 

「共和国軍、ノルド方面軍司令官のダニエル・ハーリング中将だ。以後見知り置き願おう、帝国の若人よ」

 

そう言ってハーリング中将はニコリと笑って軍帽を被り直した

 

リィン「これはご丁寧に…俺はリィン・アイスフェルト、こっちはフローラ・クリフトです。早速ですが中尉と脱走兵をそちらに引き渡します」

 

ハーリング中将「判った……オイ!」

 

ハーリング中将頷いて自分の部下達に目配せし、兵達はリィン達に近付いて脱走兵を降ろし、彼の両脇を抱え厳重に拘束した

 

エミリア中尉はフローラが気を利かせて馬を座らせて降りやすくしたのでエミリア中尉は馬から降りて共和国軍の兵士に駆け寄り仲間達から手荒く帰還を祝られてた

 

リィン「人望あるんですね…」

 

ハーリング中将「アレは人当たりは良いからね。年配の兵には可愛がられているんだ」

 

リィンの呟きにハーリング中将はリィンに近付いて答えた

 

リィン「そうですか……しかし驚きました。中将自らとは…」

 

ハーリング中将「不思議かね?不要な火種は取り除きたいと思ってるのは何も帝国だけでは無いのだよ」

 

リィン「………」

 

ハーリング中将「納得いってないという顔だね?」

 

リィン「えぇ……ですが深入りはしませんよ。あの脱走兵は『只の脱走兵』…それだけでしょう?」

 

ハーリング中将は深く頷いた

 

ハーリング「賢明な判断だ。君達も速く帰りなさい、そして……」

 

 

「ぎゃぁぁぁ!?」

 

 

突然の悲鳴に振り向くと意識が無く拘束された筈の脱走兵が意識を取り戻し拘束衣を破り仲間の一人を殴り殺していた

 

「貴様!?大人しく……ぎゃあァぁぁ!お…俺の腕がぁ…あ…?」

 

それを見た兵士が再び拘束しようと近付いたら脱走兵が素早く腕をへし折ったと思ったら兵士の首がへし折られ崩れ落ちた

 

余りの惨劇に周りの兵士達も凍りついた

 

「グ、グォォォ!?」

 

突然脱走兵が胸を押さえ苦しみ出したと思ったら脱走兵の身体が大きくなり拘束衣が破け…身体中に毛が生え…尻尾も生え手足は爪が伸び歯も犬歯が鋭く伸びた。その姿は…

 

リィン「………人狼…!?」

 

 

 

 

「ウオォォーォン!!」

 

ノルドの地に化け物と化した脱走兵の咆哮が響いた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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