「ウオォォォォォォン!!」
人狼と化した脱走兵は雄叫びを挙げ兵士達を威嚇し、兵士達もまた突然の事に理解が追いついていなかった
「………(ギロッ)!」
「ひ………ッ!!」
人狼は近くに居た一人の兵士を睨みつけ、その兵士は怯えた声を出した
「……」
そして人狼は右手をゆっくりと振り被ると次の瞬間、人狼の右手が兵士に振り下ろされたと思ったら兵士の上半身は『消えて』いた。正確に言うなら人狼によって細切れにされた……残った下半身が思い出したかのように血を噴き出しながら倒れた
「う、う………ウワァァァァァ!?」
その惨状を目撃した一人の兵士は上官の命令を待たずに発砲し、それに釣られて全員が発砲した
「グルァァァァァァ!!」
人狼はその弾幕をいとも容易く躱し兵士達の中に突っ込みそして……蹂躙劇の始まりだった
ある兵士は喉笛を噛み千切られ自身の血に溺れながら苦しみながら息絶え、ある兵士は頭を鷲掴みされザクロのように砕かれ残った身体を別の兵にぶつけ全身の骨を砕かれ正に地獄絵図の様相だった
フローラ「リィン様!!」
リィン「これが隠しておきたかった事か!」
リィン達は怯えている馬を宥めながら敗走する共和国軍兵士を見ていた
ハーリング中将「ク……ッ、君達は早く逃げなさい!」
リィン「……何ですって?」
ハーリング中将はホルスターから拳銃を取り出しリィン達に逃げる様に促した
ハーリング中将「これは共和国の問題だ。他国民の君達が我々に付き合う道理は無い!」
リィン「……しかし、勝てますか?今も奴は軍用トラックを持ち上げてますが…」
リィンの視線の先には人狼が軍用トラックを持ち上げ、機関銃座に取り付こうとした兵士に向かってトラックを投げ飛ばし機関銃座は荷台に入っていた弾薬ごと誘爆し、大爆発を起こしたのが見えた
ハーリング中将「………確かに厳しい戦いになるかもしれない、私も戦死するかもしれん。だが私は共和国軍人だ…この様な事態が起きた時にすぐさま動かなければ税金泥棒と市民に言われかねないからな」
ハーリング中将はそう言って苦笑した
ハーリング中将「だからこそ民間人を守るのは軍人の義務である。これは帝国だろうが共和国だろうが政体が違っても同じだと私は信じてるし、そうであるべきだ!」
ハーリング中将はそう言って真っ直ぐリィンの眼を見据えて言った
ハーリング中将「だから君達は気にせずに逃げたまえ…何、時間を稼ぐ事ぐらいは出来るさ……さぁ行きたまえ、君達に女神の加護を」
ハーリング中将はそう告げて部下達を引き連れ戦場に向かった
リィン「……」
フローラ「リィン様、如何なさいますか?」
リィンは無言で少し馬を進めた
リィン「フローラ……君は先にゼンダー門に、」
フローラ「リィン様……それ以上は何も言わないでください。私もお供します」
リィン「………済まない、行こう!」
フローラ「はい……!」
リィン達も駆け出した
エミリアsite
エミリア「この、この……!いい加減に倒れなさいよ、この化け物!!」
エミリア中尉は数人の仲間と一緒に人狼に対して銃撃を仕掛けていたが芳しく無かった
「駄目だ!!アイツ幾ら撃っても直ぐに傷が塞がってやがる!」
同僚の言う通り人狼に弾が当たっても直ぐに傷が塞がり倒れる気配は無い
「エミリア、残弾が無い!ここは撤退しよう!?」
エミリア「駄目よ!今此処で奴を倒さなければその代償は私達が払う事になるわよ!!」
エミリア中尉は弾切れを起こした自分の銃を捨てて近くの倒れた仲間の銃を拾って再び攻撃した
ハーリング中将「エミリア!状況は!?」
そこにハーリング中将が部下を連れて合流した
エミリア「父さん!?いえ閣下……最悪です。ご覧の通り此処にいる十数名しか生き残っていません……」
ハーリング中将「そうか………重火器は?」
その問いに別の兵士が頭を振った
「最初に奴に投げ飛ばされたトラックごと……」
ハーリング中将「クソッ!………ん?あの戦車は使えないのか!?」
ハーリング中将は動いていない戦車を指さした
「戦車兵がいません!乗る前に奴に殺られました!!」
ハーリング中将「だが戦車自体は使えるんだな!?」
「そうですが……?まさか!?」
ハーリング中将「援護しろ!私が戦車に乗って奴に攻撃する!!」
「無茶です!?戦車に辿り着く前に殺られてしまいます!」
兵士は慌てて止めようとした
ハーリング中将「無茶だろうが何だろうが、やらないとどの道奴の餌食になるだけだ!!問答する時間も惜しい、私は行く………」
エミリア「待って下さい!」
そこにエミリアが声を上げた
エミリア「私も同行します!」
ハーリング中将「何……!?」
エミリア「装填係も必要でしょう?」
ハーリング中将「……死ぬかもしれないぞ?」
エミリア「大丈夫、死にたい訳じゃ無いわ。『お父さん』」
ハーリング中将「閣下と呼びなさい………エミリア中尉、同行を許可する!他の者は援護を!」
『『『『YES・Sir.』』』』
そうして生存者達は一斉に銃撃を奴に浴びせ怯ませ、その間にハーリング中将達は戦車に乗り込んだ
ハーリング「主砲は……!良し、異常無し!!中尉、砲弾は!?」
エミリア「何時でもいけます!」
ハーリング中将「よし………弾種を榴弾に装填!仕留めるぞ!」
エミリア「了解!」
エミリア中尉はそう言うと榴弾を装填しハーリング中将は砲を人狼の方向に旋回した
エミリア「装填完了!!」
人狼は戦車が動いているのに気がついた
ハーリング中将「今更気付いても遅い…!撃てぇー!!」
エミリア中尉が引き金を引いて榴弾が人狼に命中した……
ハーリング中将「やったか………?」
爆煙が晴れると下半身が吹き飛んだ人狼が藻掻いていた。その姿を他の兵士達は歓声を挙げた
エミリア「やったわ!!父さん!とどめを刺しましょう………父さん?」
エミリア中尉も笑顔で振り向いたが肝心のハーリング中将は険しい顔のまま
ハーリング中将「アレを見ろ…!」
なんと人狼の吹き飛んだ下半身が瞬く間に再生された
エミリア「なっ!?……化け物……」
人狼は己の下半身の具合を確かめた後戦車を睨みつけたと思ったら姿が消え……砲塔に立っていた
ハーリング中将「疾い!?」
次の瞬間砲塔は引き剥がされ中にいたハーリング中将を片手で首を持ち上げ締め上げた
エミリア「お父さん!?」
ハーリング中将「に……逃げなさい。エミリア……」
エミリア「出来ないわよ!?この…!お父さんを離せ!!」
エミリアはナイフを取り出し人狼に刺したが人狼は意に介してない
ハーリング中将「……グッ……もう、意識が……」
意識が朦朧としていたハーリング中将に聞き覚えのある声が聞こえた
「黒神一刀流、零の型 『双影』」
次の瞬間人狼の右手が切断されハーリング中将は解放された
エミリア「お父さん!!」
エミリアはハーリング中将に駆け寄った
ハーリング「い、今のは……?」
リィン「ご無事ですか、ハーリング中将……」
ハーリング中将の目の前にリィンが剣を構え油断なく人狼を睨みつけた
人狼は左手でリィンを引き裂こうとしたがそこに一発の銃弾が人狼の左手を吹き飛ばした
フローラ「……」
フローラは大口径拳銃を構えリィンの側に寄った
ハーリング「君達は……何故?」
リィン「何故って……放っておく理由は無いでしょう?コイツは国を問わず脅威です。知り合いを守る為にも加勢しました」
リィンは事も無げに言った
ハーリング中将「だが……!!」
フローラ「リィン様、やはり奴の両腕が……」
フローラがそう言うと人狼の両腕が再生した……
リィン「最早、人間とは言えないな」
フローラ「はい……もう彼は『戻れない』でしょう」
リィン「なら………せめて此処で『終わらせる』のが彼の為だな、行くぞ!」
フローラ「はい……!」
リィンと人狼の戦いの火蓋が切られた