生き残った共和国軍の兵士が仲間の手当てをしたり残骸を片付けたりする中、ハーリング中将は語りだした……
ハーリング中将「………全ての始まりは四年前、一部の政治家、軍の高官の発案から始まった。当時帝国の戦力分析を検証していた分析官からの報告は機甲戦力、空軍力は互角であると……だが、こと個人においては分析不可能と言われた人間が居た」
リィンはその言葉を聞いて彼等を思い浮かべた
リィン「アルゼイド子爵閣下やオーレリア伯爵ですか……」
その言葉を聞いたハーリング中将は頷いた
ハーリング中将「そうだ……その他にヴァンダイク元帥やその部下達の『個』の技量は我が共和国軍には無い物だった。無論今更個人の武が戦局に影響を与える時代では無いだろう……だが彼等が万が一戦場に出て来てその武を我が軍に振るったら……?」
ハーリング中将はそう言って近くの残骸に腰を下ろした
ハーリング中将「そうした心理的な恐怖は無視も出来なかった。我が軍に武芸に長けた人材も居なかったしな、かと言って民間から探すのも現実的では無かった。そう言った武芸者は既に囲われているか、或いは軍に興味が無いかのどちらか……だ」
ハーリング中将はそこで溜息をついた
ハーリング中将「行き詰まって頭を抱えた上層部で誰かがこう囁いたそうだ………」
《居ないのなら我々の手で最強の『兵士』を創れば良いでは無いか》
ハーリング中将「………そうして始まったのが《超兵計画》だ……」
フローラ「………その、『超兵計画』とやらは軍全体の総意ですか?」
ハーリング中将「……いいや、さっきも言ったがこれは極一部の政治家や軍部だけで進められた計画だ。私自身知らなかったからな……·」
リィン「一体どうやってそんな兵士を造り出そうとしたんです?」
ハーリング中将「………被験者に薬物投与と魔獣の細胞を移植したんだ……」
「「ッ!?」」
ハーリング中将「志願兵四百名に『碧い錠剤』と魔獣の細胞を移植して知能、筋力、瞬発力、判断能力を高めた兵士を造り出す。これが『超兵計画』の構想だった」
リィン「碧い錠剤とは何ですか?」
ハーリング中将「それは私も知らない……現物や成分表といった物は全て失っていた。話を戻そう……投薬と手術を受けた兵士達は最初こそ当事者達が期待した能力を発揮したが、次第に人間では無くなった」
フローラ「………彼の様に、ですか?」
ハーリングは頷いた
ハーリング「そうだ、形態は様々だが彼等は魔獣となり人間としての尊厳や知性すら無くなった。計画は失敗と判断され、責任者は全て秘密裏に処断され生き残った志願兵達も大多数は闇に葬られた………これが全貌だ」
リィン「……彼もその犠牲者の一人という訳ですか……確かに秘密にしておきたい話ですね。自軍の兵士を人体実験に使ったんですから」
リィンは溜息をついた
ハーリング「……君達には感謝している。彼の暴走を止め、人として終わらせてくれて………ありがとう」
ハーリング中将はそう言って頭を下げた
リィン「………」
ハーリング「……私からも一つ聞きたい、君達は一体何者なんだね?強化された彼をあそこまで圧倒するとは……」
リィンは黙ってフローラが連れてきた馬に跨り数歩進めて振り返り答えた
リィン「只の民間人ですよ………武術を少し齧った、ね」
ハーリング「そうか……そうなのだろうな、判った。これ以上は問うまい……最後にもう一度礼を言う、部下を……娘を助けてくれてありがとう」
そう言ってハーリング中将はまた深々と頭を下げた……
リィンもそんな中将に目礼した後隣に居たエミリア中尉に話しかけた
リィン「これでお別れだな」
エミリア「……えぇ、出会いは最悪だったけどね。でも……ありがとう、仲間を…父さんを助けてくれて……この恩は何時か必ず返すわ」
リィン「恩も何も………俺は唯帝国領に迷い込んだ『観光客』を送り届けた……それだけだ」
そう言ってリィンは惚けた
エミリア「フフ、なにそれ………でもそうね……何時か帝国に観光旅行に行くのも良いかもね」
リィン「そうだな……敵対するよりそっちの方がいいな」
エミリア「その時になったらガイドお願いするわね」
リィン「………機会があればな、ではさよならです!」
リィンはそう言ってフローラと共に馬を疾走らせその場を後にした………