リィン達は共和国領から離れ何事も無くゼンダー門まで戻って来た
レクター「お〜、帰ってきたな無事に届けられた様で何よりだぜ〜」
ゼンダー門の入り口にレクターが待ち構えていてそんな事を言った
リィン「………レクターさん、アンタ最初から知ってたんじゃないのか?」
リィンは馬から降りてレクターにそう言った
レクター「ん〜、何の事だ〜?」
リィン「呆けないで下さい!《彼》についてです!最初から知っていたんでしょう!?」
リィンは惚けるレクターに詰め寄った
レクター「……ククク、確か行く時にお前さんにも言ったよな〜国にはそれぞれ《闇》があるってな………幾ら対立している共和国の醜聞だからと言って口出しする義理はねぇよ。それに……仮に知った処でお前さんが奴を救えていたか?」
リィン「それは………」
レクター「ま、確かにあんな厄介なもん押し付けたのは悪いとは思ってるぜ〜後は俺達の仕事だからゆっくり観光に戻って良いぜ」
そう言ってレクターはリィンの肩を叩いて歩き出した
リィン「………帝国は同じ事をしてはいないのか?」
リィンが問うとレクターは顔だけ振り返って答えた
レクター「ククク………あのおっさんがそんな『非効率的』な事をすると思うか?………信じる信じないかはお前さん次第だかな」
そう言って今度こそレクターは去って行った
リィン「……」
フローラ「リィン様……」
リィンは溜息一つついて気持ちを切り替えると後ろで見守っていたフローラが声をかけた
リィン「……とりあえずもう此処にいる理由も無い、次のルーレ行の貨物列車が来るまで1時間か……どうする?」
リィンはポケットから時刻表を取り出し確認するとフローラに尋ねた
フローラ「私は………少し『遠出』してきますわ……直ぐに戻りますのでご安心を」
リィン「……何処に行くつもりだ?……まぁフローラなら問題無いだろうが気をつけてな」
フローラ「はい、少し行ってまいります……『お土産』も期待してください」
リィンはフローラと別れてゼンダー門の中にある待合室で備え付けの雑誌を手に取って時間が経つのを待っていたら……
ゼクス中将「失礼、隣良いかな?」
ゼンダー門の司令官のゼクス中将がリィンに話しかけて来た
リィン「ゼクス中将……!?」
リィンは慌てて立ち上がろうとしたがゼクス中将はそれを手で制した
ゼクス中将「そのままで良い、君は私の部下では無いのだからな、隣座らせてもらうが構わないか?」
リィン「……どうぞ……」
ゼクス中将はリィンの隣に座った
ゼクス中将「……先ずは礼を言わせてもらおう。本来なら民間人の君達に頼む事案ではなかったのだが」
リィン「いえ……ゼクス中将、一つお聞きしたいのですが……」
ゼクス中将「………『彼』の素性の事か?」
リィン「……えぇ……」
リィンは頷いた
ゼクス中将「……確かに判っていた。伊達に長年共和国と対峙している訳では無いからな、共和国で極秘で行なわれた計画も含めて」
リィン「そうですか……」
リィンは眉を顰めた
ゼクス中将「納得がいかぬ、という顔だな?」
リィン「……正直に言えばそうですね。理由があるのは判っているつもりですが……」
ゼクス「別にお主が可笑しい訳では無い、それは人として当然の感情だ。だが我々は軍人だ、一度命令が下れば『敵』を討たねばならん…今回も互いに必要以上に刺激したく無いからこその返還に過ぎなかったのだ」
ゼクス中将は腕を組んで正面を見据えた
リィン「……」
ゼクス中将「お主はまだ若い、儂の様な考えに同調する必要あるまい…様々な人に出会い、話し、別れて……その上でお主の『道』を目指すのがよかろう」
リィン「ゼクス中将………」
ゼクス中将「む……?列車が来た様だな」
ゼクス中将の言葉通り貨物列車がゼンダー門の構内に入って停車した
ゼクス中将「どうやらこれでお別れの様だな、息災でな。『風と女神の加護』を」
ゼクス中将は右手を出してリィンに握手を求めてきた
リィン「……中将もお元気で、ガイウスに宜しく伝えて下さい」
リィンもその握手に応じた
リィンはゼクス中将と別れ列車に乗り込むとそのすぐ後ろからフローラが乗り込んできた
リィン「用事は済んだのか?」
リィンは座席に座るとフローラに尋ねた
フローラ「はい、『お土産』もありますので楽しみにして下さい」
フローラも座りながらにこやかに答えた
リィン「楽しみにしていよう。これからの予定だが……一旦ルーレまで戻ってルーレ空港で定期船に乗ろうと思う」
リィンがそう言うと同時に列車も動き出した
フローラ「次はどちらを行くおつもりでしょうか?」
リィン「クロイツェン州の公都バリアハートだ。あそこはアルバレア公爵の治める領地だから長居するつもりは無いけどな」
フローラ「では隣のレグラムに向かうお積もりで?」
リィン「あぁ、アルゼイド閣下との約束もあるしな」
その後順調に列車は進みルーレまで戻ってきた
リィン「ルーレに着いたか…」
フローラ「早速ルーレ空港に行きますか?」
リィン「そうだな……ん?」
フローラ「リィン様?」
ルーレの駅に降りたリィン達は空港に向かおうと歩き出そうとした時リィンの視界の先に黒い髪の可憐な少女が急ぎ足で階段を降りてきた。その少女の着ている服は…
フローラ「珍しい、アストライア女学院の生徒ですね。ルーレの出身でしょう」
フローラがそう言ってる間にも少女は階段を降りていたが急いでいる余りに脚を滑らせ……
「あ……っ」
周りの人達も状況を悟り悲鳴をあげた
リィン「ちっ……!!」
リィンは荷物をフローラに渡し自分は素早く少女の下にに行き……
「え………?」
少女を支えた
リィン「大丈夫か?」
「え……え?」
少女は何が起きたか理解できておらずリィンの腕の中で戸惑っていたが周りの乗客の歓声が耳に入って漸く自分の起きた事を理解した
「あ、あの!もしかして……」
少女は顔を紅くしてリィンに尋ねた
リィン「あぁ、脚を滑らして階段から落ちそうになった」
「そ、そうですか……」
リィン「それで、脚は大丈夫か?捻ったなら医務室に連れていくが…」
「あ……はい、大丈夫です。痛みも無いです」
少女はリィンから離れ自らの脚の状態を確認した
リィン「なら良かった、はいこれ…君の鞄だろう?」
リィンは少女の物らしい鞄を拾って渡した
「す、済みません!わざわざ……」
少女は恐縮した様子で鞄を受け取った
リィン「構わないさ、じゃあ俺はこれで……」
リィンはそう言ってフローラと合流してルーレ駅を出た
「………」
その後姿を少女は見つめたまま……