リィン「ニナ・フェンリィ………」
リィン空中に浮かぶ少女を見て呟いた。
ニナ『ニナ、と呼んで構いませんよ。教会に身を置いている小娘に過ぎませんから』
ニナはニコリと笑ってそう言った。
リィン「小娘……か、彼等が貴女に頭を下げている時点でそれは些か無理があるのでは?」
リィンはチラリとニナに頭を下げているアイン総長とケビンを見た
ニナ「アハハ……彼等の事はお気になさらず、それと……お名前を伺ってもよろしいですか?」
リィン「あぁ、俺はリィン・アイスフェルト、っでこっちが……」
フローラ「…………フローラ・クリフトです。リィン様にお仕えしているメイドです」
フローラはムスッとした顔のままで自己紹介をした。まだ怒りが収まらないようだ。
ニナ「フローラさん、とお呼びしますね。貴女の怒りは尤もですが、どうかこの場は怒りを鎮めて頂けませんか?図々しいのは百も承知でお願いします」
ニナは再び頭を下げた。
リィン「フローラ…………」
フローラはリィンが心配そうに自分を見ているのに気づいて暫くして溜息をついて言った。
フローラ「…………はぁ〜、大丈夫です。もう怒ってませんから、ただでさえこの様な少女に頭を下げられているのにこれ以上謝罪させたら私が心苦しいですから、但し!あの神父にはこの様な事が二度と無いよう指導して頂きたいです」
アイン「それは当然の主張だな、責任を持って此方で指導しよう」
ニナの変わりにアイン総長が頷いて答えた
アイン「という訳だ、グラハム卿。今回の任務が終わったら私が直々に指導してやろう」
ケビン「ゲェ!?堪忍して下さいよ総長!!俺、めっちゃ反省してますから!」
アイン「だったら今回の任務で挽回してみせろ、そうしたら指導は考えてやる」
ケビン「ホンマでっか!?よっしゃ、やったるでぇ!!」
リィン(………アレは実は考えるだけで指導はするんじゃないかな?)
フローラ(でしょうね……まぁ自業自得ですし、私達が教えてやる義理はないでしょう)
リィンは憐れみの視線をケビンに向け、フローラは冷ややかな視線をケビンに向けていた。
ニナ「ところでリィンさん…………厚かましいのは承知ですが、その太刀についてお聞きしたいのですが……やはりそれは…」
リィン「……」
リィンは無言でリヒトを抜いてニナ達の前に刀身を見せた。
ニナ「これは………!なんて、なんという《蒼さ》……!」
アイン「なんという存在感だ…………とても人の手で創れる物では無いのは確かだ……!アーティファクトなんて生優しい物では無い!正しく《至宝》と呼ぶに相応しい…これ程の品、何処で……いや、やっぱり言わなくても結構、聞いたらこれまでの常識が崩れかねん」
アイン総長は事態の重さに頭を抱えてしまった。
ケビン「……もしかしなくても俺、結構やばかったり……?」
ニナ「もしかしなくてもやばかったでしょうねぇ。この太刀で斬られたらグラハム卿の魂もどうなっていたか……最悪《滅されて》たかもしれません」
ケビン「あ、アハハ……マジですかい……」
ケビンは顔を青ざめた。
アイン「ですがどうしますか?グラハム卿の言い方はアレでしたが確かに我等教会はアーティファクト及びそれに類する物の回収が使命、例外を認めるのも……」
ニナ「ですが、総長殿も見たならわかる筈です。アレは彼にしか持てない代物。無理矢理引き離せばどんな事態になるか、検討もつきません」
アイン「では……?」
ニナ「やむを得ないでしょう。猊下には私から説明します。アイン総長、『アレ』を用意して下さい」
ニナはリィンに向き直って言った。
ニナ「リィンさん、教会としても非常に異例の判断になりますが、その太刀を暫定的に新たな《至宝》と認定しその所有権をリィンさんの物とこの場を借りて宣言します。アイン総長彼にアレを……」
アイン「ハッ……」
アイン総長は懐からA4サイズの紙を取り出しペンでサラサラと書き、書き終わったその紙をリィンに渡した。
リィン「これは……?」
アイン「貴殿がその太刀の正統な所有者である事を七燿教会が認める旨の書状だ。これを見せれば貴殿に手出しする馬鹿は出ない筈だ」
リィン「良いんですか?こんな書状を書いて……」
ニナ「構いません。元はと言えば此方の落ち度、それに至宝を有する方との繋がりは此方としても結んで損は有りませんから……」
リィン「……なら有り難く頂戴します」
ニナ「えぇ、是非受け取って下さい。さて……私もそろそろ退散しますね。リィンさん……今度は映像無しでお会いしましょう」
ニナはそう言って姿を消した。
アイン「やれやれ……では私も帰るとするか…………ケビン!」
ケビン「は、ハイ!?」
アイン「ちゃんとお前からもう一度彼等に謝っとけよ。七燿教会の沽券に関わるからな」
ケビン「そ、そりゃあ勿論……」
アイン「なら良い、ではさらばだ」
アイン総長もそう言って姿を消し、その場に残ったのはリィン達とケビン神父だけになった。
リィン「…………」
ケビン「あ〜、その、何かすんません。確かに一方的に決めつけて君等の話碌に聞こうとしなかった俺が悪かったわ。俺の印象悪くなるのは自業自得やけどせめて教会の事は信じて欲しいねん。決してアーティファクトを悪用したりしないんや」
ケビン神父は深々とリィン達に頭を下げた。
リィン「……俺は赦しますよ。ケビン神父、貴方も任務で動いたんですから」
フローラ「リィン様が赦すなら私は何も言いませんが、二度とこの様な事がおこさないで下さいね」
ケビン「は、ハハ……肝に銘じますわ」
「あら?リィン……?それにフローラ?」
リィン達の背後から声がしたので振り向くとシェラザードとエステルがそこにいた。
リィン「エステル、シェラザードさん久しぶりですね」
シェラザード「えぇお久しぶりね。随分滞在したみたいね?フローラ、帝国の酒ある?」
フローラ「相変わらずね。後で渡してあげるから我慢なさい」
エステル「もう〜!久しぶりじゃないでしょ!帰って来たなら連絡一つ寄越しなさいよね。ってあれ?ケビンさん?」
ケビン「あ、アハハ、久しぶりやなぁエステルちゃん。どないしたんや、こんなところで?」
シェラザード「私達はちょっと依頼ついでにこっちに寄っただけよ。アンタ達こそこんなところで何してたの?」
ケビン「い、いや〜ちょいとリィン君達とお話をやなぁ……」
リィン「それより依頼って何かあったので?」
シェラザード「あ〜うん、怪我人が出たとかじゃないのよ。ただねぇ……」
エステル「お化けの調査で聞き込みをやっているのよ。それでマノリア村に居るマーシア孤児院の子達に用があったの」
未来の話、サルバットでの会話
「ねぇねぇラーちゃん!簡単にミラを稼げる方法ないかな?」
「うーん、ならアーティファクトを見つけて売り捌けば?結構言い値で売れるよ?」
ケビン「アーティファクトは最寄りの教会に!?個人の所有は禁じられてるんやで!!」
「ふむ?……だが例外が存在するでは無いかね?教会以外で」
ケビン「な、何のことやら、ワイ知らへんな」
「そういえばそのきっかけ作ったのはケビン神父、アンタって話だけど?」
「あ〜なーちゃんも聞いた事あるかも喧嘩売ってアイン総長にコッテリと絞られとか?」
「君ら、何でそんな事知ってんの!?」
「ねえねぇルーファス、こういうのは人はなんて言うんだっけ?」
「フ厶……こういうのは『黒歴史』と言われるらしいのだよ。ラピス」