七耀暦1197年リベール王国ロレント市 ブライト邸
ユン老師side
儂とカシウスの再会はそこそこにカシウスはウッドデッキの机の上に盃と酒用意して儂に渡した。カシウスの娘は「真っ昼間からお酒を呑んでどーすんのよ!」と小言を言っていたが流石に大事な話があるのを察してヨシュアという少年とリィンを連れて家の近くの池で釣りを楽しんておるのう。
カシウス「いやはや、リベールに来られるのなら連絡の一つでも寄越して頂ければお迎えに上がりましたのに…」
ユン老師「何、儂はその様にされたくないのはお主も知っておるじゃろう?儂は気紛れに吹く風の如くじゃよ」
カシウス「ハッハッハッ!老師はお変わりないようで安心しました!」
カシウスは盃の酒を唇に浸る程度に口をつけていたが…
カシウス「…老師、申し訳ありません…」
此奴はそう言って頭を下げて謝罪してきおった…やはりあの件か…
ユン老師「…お主が剣を置いた話か?」
カシウス「はい…老師に奥伝まで授かった身で有りながら…我ながら情けない話です」
此奴は力無く笑っておった…
カシウス「5年前…《百日戦役》の終盤、帝国軍の砲撃がロレントの時計塔に直撃して妻と娘…エステルがあの時計塔の真下にいました…エステルは妻が庇ってくれたお陰で掠り傷一つ有りませんでしたが、妻は…還らぬ人になりました…」
カシウス「私がその事を知ったのはリベール全土で帝国軍を駆逐した後でした…私は情けない旦那です、妻の死に目にも立ち会えず、娘が哀しむ中でも傍に居られず事後処理に追われていました…人々は私の事をやれ救国の英雄だとか剣聖と持ち上げますが、私は肝心の時に大切な家族を守れなかった唯の男です」
そう言ってカシウスは度の強い酒を勢いよく呷った…
カシウス「せめて娘の傍にいようと軍を辞め、遊撃士になり老師から教わった剣を置いた癖に八葉一刀流を棒術に落とし込みました…フ、剣聖が聞いて呆れますよね」
ユン老師「…カシウス、お主は今までの修業が無駄だっと思うか?」
カシウス「まさか!老師に教えて頂いだ事は今でも私の糧になっております!!
ユン老師「なら良い、お主はお主の《八葉》を極めれば良い…棒術に落とし込んだ?結構な事じゃ、その棒術でもって今度こそ大切な物を守ってみよ」
カシウス「あ…」
カシウス「…フフフ、矢張り老師には敵いませんね。そんなことを言われたら弱音を吐けないじゃないですか…」
ユン老師「吹っ切れたようじゃな?」
カシウス「ええ、お陰様で…」
ユン老師「なら、早速頼みたいことがあるのじゃが…」
カシウス「あのリィンという少年のことですか?」
ふむ、まぁ当然判るか…
カシウス「彼自体は何の問題は無いでしょう…寧ろユン老師の《最後の弟子》としては賛成です。ですが…彼の〘中〙にある禍々しい《黒いナニカ》が私は気に掛かります。彼はそのことは…?」
ユン老師「無論知っておる。その上でリィンはその事実を否定しない、したくないと言いおった…その《チカラ》が自分の命を救った事実を向き合い、この《チカラ》を大切な人達を守る為に使いたいと言うなら儂はそれに応えるまでよ…お主にも協力してもらいたいが如何に?」
カシウス「…其処までの覚悟を彼が示したのなら私がどうこう言うのは筋違いですね、良いでしょう…私も彼の修行の手伝いをさせて頂きますよ」
ユン老師「決まりじゃな…では明日早速ミストヴァルトの森に入り儂とお主や魔獣達との稽古を始めようかのう、儂が鞭でお主は飴で頼むぞい」
カシウス「フゥ…(やれやれ老師のスパルタ稽古か…リィン君頑張れ、老師の修行はきついが必ず君の求める強さを手に入れられる筈だ)」
リィンside
リィン「ゔ?寒気が?!」
エステル「大丈夫、風邪?」
リィン「いや、只寒気を感じただけだから心配ないよ(それにしてもフローラ連絡ないな…大丈夫かな?まぁ彼女なら危険なことはしないか…)」
カルバート共和国首都イーディス〘黒芒街 闘技場〙
フローラ「疾っ!」
「グハァ!?」
解説者「決まったー!メイドの拳が《熊殺しのジョン》の顎を捉えたー!!《熊殺しのジョン》起き上がれない!『五十人抜き』賞金百万ミラを手にしたのはなんとなんと、戦いとは無縁そうな美女メイドだぁー!しかもあれだけの人数を連戦したのに息切れ一つしていない?とんでもないメイドだぁー!?皆様彼女に惜しみない拍手を〜」
ウ ォ ぉ ぉ ぉ ぉ!
チンピラ「いいぞー姉ちゃん!」
チンピラ「何処の店だ〜?絶対いくぜー!」
フローラ「…どうしてこうなったのかしら?」