レン「うふふ、お久しぶりね。お兄さん?」
結社の執行者No.ⅩⅤ《殲滅天使レン》は静かに、上品に微笑っていた。
エステル「えっ…と、リィン?この子誰、知り合い?」
リィン「……あぁ、前エステル達と一緒にジェニス王立学園の学園祭の手伝いしただろう?本番の日に案内した子だ」
エステル「え?あの時来場したお客さんの…?」
レン「うふふ、お姉さんの演じた史劇も面白かったわよ?『白き花のマドリガル』……だったかしら?男女入れ替えての配役、斬新だったわ」
エステル「あ、あはは……観てたんだ?流石にむず痒いわね」
エステルは恥ずかしそうに頬をかいた
シェラザード「あぁ、アンタとヨシュアが演じたっていう劇ね。結構愉快な役だったらしいじゃない?……見てみたかったわ」
フローラ「あら?なら私が撮った写真をみる?舞台裏での姿だけど」
フローラはそう言って自分のポケットから小さいアルバムを取り出してシェラザードに見せた
シェラザード「へぇ~これね、うわ!これがヨシュア?違和感ないわね〜」
エステル「う、う〜ん……ヨシュアが見たら悶絶しそうね」
ヨシュアのお姫様姿に女性陣が騒いでいるとレンと同じ髪の色をした男女が近付いてきた。
「こら、レン!他所様に迷惑をかけ……おや?貴方は……」
リィン「……お久しぶりです」
「アナタ、お知り合い?」
「あぁ、以前学園祭にレンを連れて参加した事を話しただろう?その時に案内してくれたのが彼だ」
男性……ハルロド氏は妻らしい女性にそう言った。
「まぁ、貴方が……主人と娘から聞きましたわ。私は夫ハルロドの妻ソフィア・ヘイワースと申します。娘がお世話になったそうで……あの、後ろの方達は?」
シェラザード「これは失礼しました。アタシ達は遊撃士協会の者です。ご家族で旅行ですか?」
ハルロド「えぇ、私は外国で交易商を営んでおりまして大陸諸国を周ってますが、リベールの美しさにすっかり魅了しまって……」
ソフィア「それで今回夫の商談がてら、娘と私を連れてきてくれたんです。フフ、珍しい事もあるものです」
エステル「あはは、仲のいい家族ですね?」
レン「うふふ、羨ましいでしょう?パパはいつも出張ばっかりだけどいつも沢山のお土産を買ってきてくれるし……ママはいつもニコニコしてて美味しい料理を作ってくれるのよ」
エステル「そうなんだ。う〜ん、お姉ちゃん羨ましいぞ」
ハルロド「はは、参ったな」
ソフィア「すみません、まだまだ子供なもので……」
レン「うふふ、ねぇお姉さん達のお名前を教えてくれない?」
エステル「おっと、そういえば名乗って無かったわね。私はエステル、エステル・ブライトよ」
レン「ふぅん、エステルお姉さんね。ねぇ、遊撃士さんってこわい魔獣をやっつけたりするんでしょ?」
エステル「うん、そういう時もあるかな?それだけがお仕事でもないし」
ハルロド「ほう……!その齢で遊撃士とは…」
ソフィア「とても優秀な方なんですね」
エステル「あはは、まだまだ新米ですけど……」
エステルはハルロド夫妻の賞賛に頬をかいた。
シェラザード「リベールの五大都市にはギルドの支部があります。もし旅行中に何かお困りごとがありましたら遠慮なく頼って下さいね」
ハルロド「これはご丁寧に……そのような事態がおきないのが望ましいですが……その時には宜しくお願いします」
レン「うふふ、ねえパパ……今日ここに宿泊するんでしょう?もうちょっとお兄さんとお話していい?」
レンはそう言ってリィンの手を掴んだ。
ハルロド「こら、お兄さんも忙しいんだ。我儘言わない」
レン「大丈夫よ。そんなに時間取らないから、ねえお兄さんいいでしょ?」
リィン「……えっとエステル?いいのかな?」
エステル「うん構わないわよ。まだまだ時間あるからゆっくりその子の相手してあげて、私達は入り口で待ってるから」
エステルは笑顔でそう言ってエア=レッテンの入り口に向かった。
リィン「……」
レン「クスクス、改めてお兄さんお久しぶりねぇ」
レン周りに人が居なくなったのを確認するとさっきまでの無邪気な笑顔を一転、齢に似合わぬ妖艶な顔をした。
リィン「……やはりこのハルロド夫妻は君が操っていたんだな」
リィンは無表情になったハルロド夫妻を見て呟いた。
レン「えぇ、コレは私のお人形。本物は今頃何も知らないで幸せに暮らしてると思うわ……レンを捨てた癖に」
レンの瞳には嫌悪の色が浮かぶ。
リィン「レン……君は」
レン「私がどれだけ待っても来ない日々…何日、何週間、何ヶ月、何年……約束した癖に」
レンはハルロド夫妻の人形を忌々し気に睨んだ。
リィン「……」
リィンはそんなレンの頭を静かに撫でた。
レン「あ……」
リィン「憎しみに身を委ねるな、君はまだまだ子供。君が知らない真実があるかも知れないんだ」
レン「……そんなの、あるわけない」
リィン「迎えにくると約束したのだろう?捨てる積りならそんな約束交わさない筈だよ」
レン「……」
リィン「いきなり憎しみを全て捨てろとは言わない、でも向き合うべきだと俺は思う」
リィンはレンの頭を撫でながら言った
レン「……やっぱりお兄さん、変よ」
リィン「変かな?」
レン「そうよ……それと何時までレンの頭を撫でてるの?」
リィン「っと悪い」
リィンほレンの頭から手を引いた
レン「コホン……話を戻すわね?レンは『此処』では何かをする積りはないから安心してね。レンは……ね」
リィン「君は……か、出来れば止めて欲しいんだが」
レン「無理ね、既に盟主の名の下に計画が動いてるもの。私エステルも気に入ってるけどお兄さんも同じくらい気に入ってるわ、けどレン達の邪魔をするなら……」
レンは殺気を込めてリィンを睨んだがリィンはどこ吹く風だった
リィン「……結社がどんな思惑で動いているかは知らないがリベールの害になるなら止めさせてもらうよ」
レン「フフ、止められるかしら?」
レンはそう言って休息室の扉を開けた
レン「結社はお兄さんが思うより強大よ?女神の下に召されない様に気をつけてね?」