「よう、お邪魔してるぜ」
「久しぶり〜エステルちゃん」
エア=レッテンでの目撃者に対する聞き取り調査を終え一同はルーアンに戻り遊撃士ギルドの扉を開けると、そこにはリベール通信の記者ナイアルとカメラマンのドロシーがいた。
エステル「ナイアル!?それに、ドロシーじゃない。一体どうしてルーアンにいるのよ?」
ナイアル「どうしてって、そりゃあ勿論市長選を取材しにきたんだよ。んで妙な事件が起きてるって聞いてギルドに話を聞きに来たんだよ」
リィン「妙な事件って……例の『白い影』の件ですか?」
ナイアル「おう…ってアイスフェルトじゃねぇか、今まで何処にほっつき歩いてたんだ?お前さんにも取材したかったんだが……」
ドロシー「ほえ?先輩〜?リィン君に何か取材する事ってありましたっけ〜?」
ナイアル「あのなぁ……クーデター未遂事件後に散々説明したろうが、特大ネタがあるから折を見てアイスフェルトに取材を申し込むぞって」
ドロシー「そうでしたっけ〜?あの事件の後関係各所に取材に回って記憶が曖昧なんですよ〜」
ナイアル「ったく、仕方ねぇなもう一度説明するぞ。いいか……」
フローラ「それは後でやって下さい。何か進展あったんですか?」
フローラはナイアルの言葉を遮りギルドの受付のジャンに問うた
ジャン「進展という訳では無いけれどね。実は君達が調査をしている間に市街からも別の目撃があってね。市民の間にも徐々に動揺が広がっている状況なんだ」
シェラザード「あらら……結構深刻な事態になってきたわね」
ジャン「そして極めつけはこのお嬢さんが撮ってきた写真さ……これはかなり有力な資料になると思う」
エステル「写真って……そ、そ、そ、それってもしかして」
エステルは嫌な予感を感じ青褪めた。
シェラザード「所謂心霊写真ってやつ?」
ドロシー「う〜ん、どうなんだろう?ホテルで夜景を撮ってたら偶然写ってたからよくわからないんだけど、とりあえず見てくれる?」
ドロシーはそう言って鞄から写真をとりだし机の上に置いた。その写真を見るとたしかに白い影が空中に浮かんでいる姿が写っていた。
エステル「…………(パクパク)」
リィン「これは……」
シェラザード「…………はぁ。これは決定的かもね」
エステル「あ、アハハ……シェラ姉、そう決めつけるのは早いわよ。オーバルカメラの調子が悪かったかもしれないし………」
ドロシー「う〜ん、故障ってことはないと思うよ〜?中央工房で買ったばかりの最新機種だし、メンテナンスもばっちりしたし〜」
エステル「いいえ故障よ!えぇ、そうに決まっていいるわ!」
ドロシー「エステルちゃん……コワイ……」
幽霊の存在を否定しようとするエステルの姿にドロシーは引いていた。
ジャン「まぁ、そういう訳で信憑性が帯びた話になったんだけど……この件はマスコミと協力した方が良いと思う。早速、各地て調べた事を報告してくれるかい?」
エステル「う、うん。一応三か所を調べてきたんだけど……」
「た、大変だ〜!!」
エステルがそう言って報告しようとした時、一人の男が突然ギルドに飛び込んできた。
リィン「どうしたんですか?そんなに慌てて……」
シェラザード「まさか、誰か魔獣に襲われたの!?」
「いや、違うんだ。ノーマンさんの支持者とポルトスさんの支持者が言い争いを始めちゃって……ラングランド大橋で睨み合いになってるんだ!」
エステル「あ、あんですって〜!?」
フローラ「その二人は確かダルモア前市長の逮捕後に立候補した候補者よね?」
シェラザード「えぇ、片や観光推進を主張して、片や港湾維持を主張……かなり荒れてるのよね」
ナイアル「ほほう……そりゃあいいネタだな?……ドロシー!急いで場所を確保して取材するそ!」
ドロシー「アイアイサー!」
ナイアル達はそう言って大急ぎで現場に走っていっった。
エステル「なんて素早い……」
シェラザード「ほら、ぼけっとしてないで私達も行くわよ。万が一喧嘩になったら仲裁しないと」
エステル「わ、解った!」
ジャン「済まない、よろしく頼むよ」
エステルとシェラザードも大急ぎでギルドを出て行った。ギルドにはジャンの他にリィンとフローラが残っていた。
リィン「……」
フローラ「私達はどうしますか?行っても野次馬なだけですが……」
リィン「そうだな……だけど互いの罵詈雑言がここまで響いて聞こえるんだ、無視もできないさ」
フローラ「……確かに」
リィンはそう言って扉を開けギルドのすぐ近くにあるラングランド大橋に向かった。そこには既に大勢の人だかりができていた。
リィン「これは酷い人だかりだな……」
フローラ「港湾側の方も大勢いますね」
エステル「あ、リィン達も来たんだ?」
人だかりの多さに辟易していると先に来ていたエステル達が声をかけてきた。
リィン「状況は…………あまり良くないみたいですね?」
シェラザード「えぇ、互いに幽霊騒ぎは相手の仕業だと罵ってて……今は候補者が自分の支持者を抑えているけどこのままだと……」
フローラ「仲裁は?」
エステル「したいけど人だかりが酷くて前に進めないんです…」
リィン「……なら仕方無いフローラ、シェラザードさんを頼む。俺はエステルを」
フローラ「承知しました。シェラザード、ちょっと我慢してよね?」
シェラザード「へ……っ?ってちょっとフローラ!?」
フローラはリィンの意図を察してシェラザードに近づき彼女を担ぎ上げた
エステル「え…?フローラさん何を……?って、リィンも何を!?」
リィンもエステルをお姫様抱っこした。
リィン「少し我慢してくれ、両者のど真ん中まで跳ぶ!」
エステル「ぇ゙……ちょっ、待っ………きゃあああ!?」
リィンとフローラはエステル達を抱え群衆の真上を飛び越え橋の真ん中に着地した。その様子を見ていた二人の候補者の支持者達は呆然と現れた乱入者を見つめた。
シェラザード「……フ、フローラ、アンタねぇ…!?やるならやるって言いなさいよ!」
エステル「そ、そうよ!もうちょっと優しくしても……」
フローラ「そうは言ってもねぇ……」
リィン「この場を収める事を出来るのは遊撃士の二人しかいないんだからしょうが無いだろう?」
エステル「むぅ……」
シェラザード「もう……後で酒に付き合ってもらうわよ!」
エステル達は抗議したが目の前の問題を片付ける為に一旦棚上げした。
シェラザード「私達は遊撃士協会の者です!この場における乱闘は市民の生活を脅かす物です!速やかに解散して下さい!」
シェラザードが一歩前に出ると遊撃士と聞いて双方動揺した。
「だ、だけど、こいつら港湾維持派が幼稚な嫌がらせを……」
「まだ言いやがるのか!?嫌がらせしてるのはそっち……観光推進派だろうが!」
「何を!?」
「やるか!?」
遊撃士の登場で頭が冷えたかと思ったが再び両者の支持者の怒りのボルテージがあがってきた。
エステル「み、皆、おちついて!」
リィン「これは、とめられないか」
そう思っていると突然リュートの音色が響きその場にいた全員が首を傾げた
「リュートの音……何処からだ?」
「おい!運河の方だ。ボートに乗ってる奴だ!」
男が指差す方に目を向けると何やら見覚えのある顔が……
「ふ……悲しいね。暴力は何も生まない、争いの後は深い亀裂しか残らない。そんな君達にこの僕!演奏家オリビエ・レンハイムが歌を贈ろう!」
「「「「「「「……………………何だコイツ?????」」」」」」」
その場にいた全員の心が一つになった瞬間だった。