リィン「さぁ選べ、大人しく投降し裁きを受けるか、さもなくば此処で俺に斬られるか……」
リィンは切り刻んだ人馬兵を背にブルブランに選択肢を突きつけた。
ブルブラン「やれやれ……随分優雅さに欠けた戦い方ではないかね?折角の美しい太刀を持っているのだから魅せ方を考えたらどうだね?」
ブルブランはリィンの殺気に意に介さず言った。
リィン「お前の美意識などどうでもいい、クローゼに指一本触れさせん」
クローゼ「リィン……」
ブルブラン「フフ……確かリィン・アイスフェルト君だったかな?君のクローディア姫に対する献身は敬意を評するが果たして君にクローディア姫を守れるかな?」
リィン「……」
エステル「何よ!リィンはクローゼを守れる実力はちゃんとあるわよ!何も知らない癖に何をもってリィンが守れないって言うの!?」
ブルブラン「確かに、実力なら一級品だ。単なる護衛としてなら優秀だろう……だが政治的にはどうかな?」
エステル「政治的……?」
オリビエ「成る程、外交や政治的駆け引きに剣の腕は無意味……そういう事だね?」
ブルブラン「フフ……その通り、如何に剣の腕がたとうがクローディア姫の住む世界はそれが通用しない世界……そんな魑魅魍魎の住まう世界に剣しか知らない君がどうクローディア姫を守れると?」
エステル「だからといってアンタにクローゼを渡す理由にもならないわよ!」
ブルブランはそんな主張に一笑に付した。
ブルブラン「フフ……別に君達の許しを得る必要は無いのだが?私は怪盗、美しいと感じた物は絶対に逃さない!だからクローディア姫、私は貴女を盗む事は確定しているのだよ!」
シェラザード「戯言を……!」
リィン「……言いたい事はそれだけか?」
ブルブラン「何っ……?」
リィン「確かにお前の言う通り、剣だけではクローゼを守るのは難しい。剣ではどうにもならない世界があるのも承知してるさ……」
リィンはクローゼに近づき寄り添った
クローゼ「あっ……」
リィン「でもな?そんな事は俺は百も承知してるんだよ……彼女の側にいると決めた時から、どんな壁があろうとも乗り越えて共に有りたい。そう覚悟しるんだからな」
ブルブラン「くっ……詭弁を……!その様な精神論で君がクローディア姫と釣り合いが取れるものか……!!姫の美を損ねるだけだ!」
オリビエ「フフッ……」
突如オリビエが静かに笑った。
ブルブラン「む……?」
ブルブランを含め全員がオリビエに視線が集中した。
オリビエ「いや失敬、君があまりにも初歩的な勘違いをしているからつい罪の無い微笑みをしてしまったのだよ」
ブルブラン「ほう……面白い。私のどこが勘違いをしているというのかね?」
オリビエ「確かに、僕も姫殿下の美しさを認めるに吝かではない。だがそれは君のちっぽけな美学で計れる物では無いのさ。顔を洗って出直してきたまえ」
ブルブラン「おお、なんという暴言!たかが旅の演奏家如きがどんな理由で我が美学を貶める!?返答次第ではただでは済まさんぞ!」
ブルブランは不愉快を隠さずにそう言い放つ。
オリビエ「フ、ならば問おう……美とは何ぞや?」
ブルブラン「何かと思えば馬鹿馬鹿しい……美とは気高さ!遥か高みで輝く事!それ以外にどんな答えがあるというのだ?」
ブルブランはオリビエの問いに呆れながらも自信たっぷりと答えたがオリビエはそれを笑った、
オリビエ「フッ、笑止……真の美それは愛ッ!」
ブルブラン「……なにッ!?」
オリビエ「愛するが故に人は美を感じる!愛なき美など虚しい幻に過ぎない!気高き者も卑しき者も愛があればみな美しいのさっ!」
ブルブラン「くっ、小賢しいことを……だが私に言わせれば愛こそ虚ろにして幻想!人の感情を介さずとも美は美として成立しうるのだ!そう、高き峰の頂きに咲く花が人の目に触れずとも美しい様に!」
オリビエ「むむっ……!」
『『『『……』』』』
オリビエとブルブランを除く全員が何とも言えない空気に包まれた。
エステル「……え〜と」
シェラザード「はぁ……一気に緊張感が無くなったわね」
クローゼ「こ、困りましたね……」
リヒト(……?)
リィン(……絶対違うからな?この二人が特別なだけだ)
ブルブラン「……まさかこんな所で美を巡る好敵手に出会うとは。演奏家……名前は何という?」
オリビエ「オリビエ・レンハイム。愛を求めて彷徨する漂泊の詩人にして狩人さ」
ブルブラン「フフ……その名前、覚えておこう」
「何賊相手に友誼を深めてるんですか?」
ブルブラン「むっ……!?」
ブルブランはその声を聞くと咄嗟に飛び退くとさっきまでいた空間に銃弾が跳んできた。更に一人の女性が棍を片手にブルブランに突っ込み攻撃を仕掛けるがブルブランはそれを躱して更に飛び退いた!
ブルブラン「くっ……!何者……っ!?」
エステル「あっ……!」
シェラザード「フローラ!」
「リィン様、お待たせして申し訳ありません」
女性……フローラはリィンとクローゼの前に立った。
リィン「いや、ナイスタイミングだ。ドロシーさんはどうした?」
フローラ「彼女ならこの部屋の入り口で待ってもらってます。それで……この男は何者ですか?」
リィン「結社身食らう蛇の人間だ。今回の幽霊騒ぎもコイツが起こした」
フローラ「ほう……?なら捕らえなければいけませんね?」
フローラはそう言って棍を構え直した。
ブルブラン「ククク……ハ―ッハッハッハッ!」
ブルブランは高笑いをすると装置の場所まで飛び退くと装置に搭載していた《ゴスペル》を外した。
エステル「あぁッ!」
クローゼ「《ゴスペル》を!」
ブルブラン「こんなに愉快な時間を過ごしたのは久しぶりだよ。礼を言わせてもらうよ、諸君」
シェラザード「アンタ……まだ何かやるつもり!?」
ブルブラン「フフ……今宵はこれで終わりにしよう。しかし諸君に関しては認識を改める必要がありそうだ。流石は《漆黒の牙》と行動を共にしていただけはある」
エステル「……!まさか、ヨシュアの事!?」
ブルブラン「フフ……彼とは旧知の仲でね。最も今はどこで何をしているかは知らないがね」
ブルブランはそう言うと手にしている杖を掲げ転移陣を展開した。
エステル「あぁ!」
シェラザード「まさか!?」
フローラ「逃がすか!!」
フローラが駆け出したがブルブランが一歩早く転移した
クローゼ「き、消えた!?」
部屋には既にブルブランの姿は無く、声だけが響いた。
『フフフ……さらばだ諸君、計画は始まったばかり……精々気を抜かぬが良かろう。それとは別に私は私のやり方で君達に挑戦させてもらうつもりだ。フフフ…楽しみにしていたまえ』
それだけ言って声も聞こえなくなった……