あの後カナンの村を出たリィン達はエレインと一緒に車に乗り込みイーディスに向かっていた。
ヴァン「やれやれ……やっと解放されたな、ダスワニ警部は俺を目の敵にすんなよな…」
エレイン「貴方がグレーな事ばかりしてるからじゃない、自業自得よ」
出る前に事情聴取を受ける為に武器を預けていた警察から返還される時、ダスワニ警部がヴァンにしつこく説教をしたのでヴァンはゲンナリしていた。
リゼット「でも、ダスワニ警部も憮然としてましたね。今回の件について政府から箝口令を敷かれたのですか無理もありませんが……」
ヴァン「ま、納得出来ねぇだろうな。あれだけの事件を黙ってろと言われりゃなぁ、あの村も完璧に軍の管理下におかれてしまったしな……マルドゥク社の方は何かリアクションはあるか?」
リゼット「いえ、本社の方からは何も……ただ一部の部門が蟻の死骸を何体かを政府から『購入』しようとする動きがあるとする未確認な情報も……」
エレイン「……冗談でしょ?あんな物を入手して何をする気なのよ……」
ヴァン「ま、あのCEOなら馬鹿な真似をするとは思えないがな。問題は『古代種』だな」
エレイン「……ヴァンはまだ終わったとは思えないの?」
ヴァン「あぁ、単純に勘だけどな……そこら辺の事はどうなんだ、アイスフェルト?」
ヴァンは助手席に乗っているリィンに問うと全員がリィンに注目した。
リィン「……結論から言えば、『その通り』としか言えません。残念ながら…」
ヴァン「ま、そんな事だとは思ってたが……一つだけ聞かせてくれ、アレは自然発生した物か?」
エレイン「……アレが人為的に行われた惨事だとでも言うの!?」
ヴァン「少し考えれば判る筈だエレイン、あんな化け物が今まで誰にも知られずに生き延びていたと思うか?」
リゼット「……確かに、不自然ですね」
リゼットは顎に指を添えて考え込む。
リィン「…一応それに関しては思い当たる事はあります。けど、まだ確信が持ててません。申し訳無いですが……」
ヴァン「いや、謝らなくても良い、それだけ聞ければ充分だ……っと、そろそろイーディスに着くぞ」
ヴァンが運転する車は首都イーディスに入った。
ヴァン「っで、無事事務所に戻ってきてこれにて依頼は正式に完了した訳だが……何でアイスフェルトのメイドさんが厨房に立ってるんだ?」
ヴァンは『モルマント』のカウンター席に座りながら疑問をぶつけた。
フローラ「何故って……?戻ったら菓子を振る舞うと言いませんでしたっけ?」
フローラはリンゴの皮を手早く剝きながらリンゴの芯を取り除きながら言った。
ヴァン「いや確かに言ってたけどよ……今から作るのか?」
フローラはボールに割った卵を入れて卵をときながらホットケーキミックスを投入してかき混ぜた。
フローラ「はい、まぁそんな大した手間はかかりませんからヴァンさん達は座って待ってて下さい」
フローラはコンロの火を最弱にしてフライパンを置き、フライパンの中にバターを入れて溶かし砂糖を入れ掻き混ぜた。そして一旦火を止めて薄く切ったリンゴを放射状に敷いて、敷き終わったら蓋をして再び火を最弱にして十分蒸し焼きにする。
ビクトル「ほぉ、大した手並みだな」
ポーレット「えぇ、それにとってもいい匂い……」
ヴァン「くッ……!リンゴのケーキか…定番だな」
エレイン「相変わらず甘い物好きねぇ……」
リゼット「ヴァン様ですから」
リィン「ハハ……」
十分蒸し焼きにしたらフローラは蓋を外し、火を止めてホットケーキミックスを少しづつかけてかけ終わったら再度蓋を閉め弱火にして二分半焼いていく。時間になったら蓋を開け軽くフライパンを廻して満遍なく焼き色をつけたら皿をフライパンに被せて裏返せば、リンゴケーキの完成である。
フローラ「お待たせしました。リンゴケーキです。熱いうちにどうぞ」
フローラはケーキを切り分けるとそれぞれにケーキを配った。
ビクトル「おぉ、これは綺麗な焼き色のケーキだな」
ヴァン「へっ……幾ら綺麗に焼き上がっても肝心の味が駄目なら意味はね………美味ァぁぁぁぁ!?リンゴの適度な酸味と砂糖の甘味が絶妙に合わさって、言われなきゃ店に出すレベルだぞこりゃ?」
エレイン「あら本当、美味しい……」
リゼット「フライパン一つでこうも見事に出来るんですね」
エレインもリゼットもケーキを一口食べると目を丸くして驚いた。
フローラ「フフ、お口に合ったなら何よりです。あ、リィン様もどうですか?焼きムラは無いと思いますが…」
リィン「あぁ、大丈夫だ。何時も通り美味いよ」
フローラ「それなら良かったです……」
リィンが笑顔で返すとフローラもホッと胸を撫で下ろして微笑んだ。
ヴァン「……なぁ、アレって……」
エレイン「ヴァン?こう言うのは他人がどうこう言う問題では無いわ」
リゼット「そうですよ。ここは見守るとこですよ」
ヴァンはケーキを頬張りながらそう呟くとエレインとリゼットは嗜めた。
リィン「さて……では報酬をお渡しします」
ちょっとしたお茶会を楽しんだ後二階の事務所に戻るとリィンがヴァンに封筒をヴァンに差し出した。
リィン「二十五万ミラ入ってます」
ヴァン「……太っ腹だな、交通費を考慮したとしてもかなりの金額になるが……」
リィン「ヴァンさん達は共に戦って下さいましたから、この位はさせて下さい。それと……フローラ」
フローラ「はい……こちらも受け取って下さい」
フローラは一冊の冊子を手渡した。
ヴァン「あん?……何だこれ?……ってこれ、リベールの高級老舗菓子店の『黒隼の止まり木』の注文カタログじゃねぇか!?良いのかよ……?」
リィン「えぇ、貴方がたとの関係はそれだけの価値はありますから……」
ヴァン「……なら有り難く貰っておく」
ヴァンは嬉々としてカタログを机の中に仕舞った。
エレイン「はぁ……で?貴方達はこれからどうするの?」
エレインは溜息をついた後リィンに尋ねた
リィン「これからリベールに戻ろうかと思います。あっちも色々あるんで……」
ヴァン「そうか、まぁ何かあったら連絡してくれ。良いもん貰った礼だ、割安で依頼を請け負うぜ」
ヴァンはそう言って右手を差し出した。
リィン「その時には是非依頼をさせて貰いますね」
リィンも右手を差し出し硬く握手をした。そしてそのままアークライド解決事務所を後にした。
フローラ「このまま空港に向かいますか?」
隣を歩くフローラが尋ねる。
リィン「そうだな……路線バスに乗ってイーディス空港に向かいたいところだが……そろそろ出てきたらどうですか?」
リィンが声をかけると前方から見覚えのある人物が姿をあらわした。
「……お久しぶりでございます。リィン殿、某の隠行を見破るとは……某もまだまだ未熟でござった」
リィン「いや、上手く消してましたよ。ただ、上手く消し過ぎましたから逆に違和感がありました。それより久しぶりですね。クロガネさん、エルモ村以来ですね……何か御用ですか?」
「はっ……実は姫様が貴方に会いたいと申しておられて、某が使者として参った次第でございます」
リィン「シズナさんが……?何処で会うつもりですか?」
「……姫様は惶都ラングポートにおられます。其処でお会いになりたいと申しております」
―――オマケ―――
ヴァン「さて、早速注文を……」
エレイン「駄目よ」
ヴァン「え?」
リゼット「こんな高い物……直ぐ使うのは勿体無いですよ。我慢しましょう」
ヴァン「いや、でもなぁ……」
『『カタログ……没収しますよ(わよ)!!』』
ヴァン「はい……自重します……」