リィン「そうか……エステル達はエルモ村の源泉で『結社』の執行者と対峙したか…」
リィンは煌都に向かう列車の中でアリーゼ達から届いた『メール』を読んでいた。
リィン「しかも王都では情報部の残党……カノーネ元大尉の一党が《アルセイユ》に搭載予定だった新型エンジンを強奪、それを戦車に載せて拘束されているリシャール大佐の奪還を企てるも親衛隊とエステル達遊撃士と……巡回神父…ケビンさんだな……の活躍により全員が捕縛された……か」
まだ前世の初期のタブレット程度の機能だが『ゴスペル』をバージョンアップした事によりメール機能やまだ整備されていないが将来の導力ネットの普及を見据えた機能も搭載された。
フローラ「しかもそれも《結社》の暗躍があり、その場に巨大人形兵器と共に現れた執行者が『殲滅天使 レン』……あの時の娘ですか」
フローラもリィンの隣でメールの内容を読んでいた。
リィン「……(レン……君は…)」
リィンはレンの境遇を知るだけに複雑な感情を抱いた。
フローラ「結局交戦はせずそのまま巨大人形兵器に乗り込み飛び去って行ったみたいですね……『結社』が本格的に動き出したのでしょうか?」
リィン「……だろうな、以前会ったあのストーカー野郎……怪盗紳士だったか、奴もゴスペルで『実験』と称してやらかしてたからな。これからもリベールで暗躍……いや、もう表に出るかも知れないな」
フローラ「危険ですね……、ならこれから途中下車してリベールに戻りますか?」
リィンは頭を振った。
リィン「いや……これから戻った所で遅いだろう。それに……シズナさんが気になるからな」
――― 数時間 ―――
リィン「シズナさんが……?惶都ラングポートで俺に会いたい……?」
クロガネは頷いた。
「左様です、姫様は貴殿がラングポートまで来て欲しいとの要望でございます」
リィン「……まぁ、何故俺が共和国に居るのを知っているかは置いときましょう……だけど何故本人が来ないんですか?彼女に何があったのです?」
「それは………御自分の目で確かめられるのが良いでしょう。拙者はこれで失礼致す」
クロガネはそう言ってビルの壁を登り去って行った……
――― 回想終了 ―――
フローラ「随分意味深な事言ってましたね。あのシズナ殿に限って危機に陥ってるとは思えませんが……」
リィン「だが、あのクロガネが冗談を言う訳も無い。弟弟子としても放ってはおけないな……」
そう言ってる間にも列車は惶都ラングポートに向けて進んでいった………
――― リベール某所 ―――
「……」
ヴァレリア湖の畔のとある施設でロランス元少尉……否、結社の執行者《レーヴェ》が佇んでいるとそこに巨大な人形兵器が少女を手のひらに乗せて地上に降り立った。少女はレーヴェを見つけると人形兵器の手から飛び降りてそのままレーヴェに駆け寄り抱きついた。
「レーヴェ!……うふふ、ただいま!!言われた通りに《実験》をやってきたわ」
「お帰りレン、ご苦労だったな」
レーヴェもレンの頭を撫でて労り、レンも嬉しそうに目を細めた。
レン「うふふ、大して苦労はしなかったわ。でも今回はちょっと退屈だったわ。折角なら《パテル=マテル》と一緒に暴れたかったわ」
レーヴェ「フ……まだその時では無いから我慢しろ……実験の方はどうだった?」
レン「それはばっちりよ。特に問題は無かったわ……まぁ教会のお兄さんの予想外の方法で《ゴスペル》は壊れちゃったけど」
レーヴェ「そうか……概ね『教授』の計画通りだな…で、どうだった。エステル・ブライトと会った感想は?」
レン「う〜ん、エステルねぇ……?正直能天気でお人好し過ぎて調子狂いそうになったわ。アレでレーヴェと対峙して良く無事だったと逆に感心したわね」
レンは呆れた顔で言ったが、本人は気づいていないが言葉に親愛の響きがあった。
レーヴェ「まぁ、まだまだ殻がついた雛だ。そう思うのは無理も無い、だが侮るな……あの娘の父親はあのカシウス・ブライトだ。父親の薫陶を身近に受けた人間だ。ポテンシャルは計り知れん」
レン「それは判るけど……ねぇ、レーヴェは『リィン』をどう評価してるの?」
レーヴェはその名にピクリと眉を動かした。
レーヴェ「そういえばレンも奴に会っていたんだったな。奴はどうしてた?」
レン「それがね……リィンは今リベールに居ないんだって、カルバートに向かったってエステルが言ってた」
レーヴェ「共和国に……?奴の性格ならクローディア姫の側にいると思っていたんだがな。まぁ良い、奴に対する評価だったな?正直に言えば『計り知れん』と言うしかないな。実力も今はまだ俺に天秤は傾いるかも知れんが油断は出来ん。それに……」
レン「それに?」
レーヴェ「……いや、何でも無い。そう言うレンは奴をどう思っているんだ?」
レンは少し考えると顔を上げた。
レン「そうね……癪だけどレンよりも強くてエステルと同じくらいお節介だけど、私に対して余り敵意を向けない不思議な人。敵であるレンに学校を勧めたりするんだから……」
レーヴェ「ほう?学校か……良いじゃないか」
レン「もう!レーヴェもそんな事云うの?今更学ぶ事なんて無いわよ」
レーヴェ「そうだな……確かにレンは天才だ。だが『学ぶ』事を辞めてしまえばそこでレンの成長も止まってしまう……」
レーヴェはそう言って再度レンの頭を撫でた。
レン「あ……ッ」
レーヴェ「学校に行きたくなったなら何時でも俺に相談しろ、それなりにミラもある。何なら『聖女』や『魔女』にも話してみたらどうだ?」
レン「レーヴェ……」
レーヴェ「さて……そろそろ行くぞ。『道化師』は兎も角『白面』は待たせると面倒臭い」
レン「……うん!」
レーヴェはレンに手を差し出しレンもその手を握り返した。