リィン「ここがラングポートか……何というか、異国情緒が溢れた街だな」
列車を降り街に出たリィンはそんな感想を漏らした。
フローラ「大陸最大の東方人街でもありますから……しかもここはマフィアの本拠地としても知られてますし」
リィン「黒月(ヘイユエ)か……今リーシャを雇っているマフィアだったな。クロスベルに支部があるし……まぁ関わる気も無いが」
フローラ「同感です。しかし……何処にいるのでしょうか?シズナ殿は」
リィン「そうだな……だが、まずは食事にしよう。列車の中では禄に食ってなかったからな」
リィンはそう言い駅を離れ食事をする為にひとまず伝統的な建物が並ぶ街区――『東方壱番街』――に向かった。
リィン「凄いな……(まるで横濱の中華街みたいな雰囲気……いや、それ以上か)」
フローラ「珍しい香辛料とかも売ってますね。それに食材も……まぁ、食べるのを躊躇いそうな物もありますね」
リィンとフローラは色々な意味で圧倒されながら食事を出来る場所を探した。すると《桂花飯店》と書かれた店を見つけた。
リィン「飯店……って書かれているな。食事だけでも出来るかな?」
フローラ「多分……あ、あのご老人に聞いてみましょう。すいません」
フローラは店の前を箒で掃いていた老人に声をかけた。
「うん……?おや、見慣れない人だのう、観光客かね?」
フローラ「まぁ、そんな所です。少しお尋ねしますがここは食事だけで入っても良いのですか?」
「おぉ、勿論大丈夫じゃ、じゃが良いのかのう?ここは地元民も利用する店じゃ、泊まれもするが観光客向けとは言えんが……」
リィン「いえ、観光向けの店は余り……」
「ふむ……?まぁ入りなさい。美味い東方料理は保証するぞい」
老人はそう言って店の扉を開けた。
リィン「ではお言葉に甘えて入らせてもらいます」
リィン達はそう言って店の中に入った。
「いらっしゃいませ。お泊りですか?お食事ですか?」
中に入ると店の主人が声をかけてきた。
リィン「まずは食事でお願いします」
「はいよ、適当な席に座って待ってな」
「給你水(お水をどうぞ)」
リィン達は言われた通りに席に座って待っているとまだ十歳くらいの女の子がお冷やをお盆に載せて持ってきた。
リィン「ありがとう、この店の子かな?」
リィンは水を受け取り女の子に尋ねた。
「毋是(違うよ)、私はこの店に住んでいる男の子の友達なの。お兄ちゃん達は何処から来たの?」
リィン「エレボニアだよ。分かるかな?」
「うん、共和国のお隣だよね?」
リィン「そうだよ。宜しくね」
「うん!」
そう言って女の子は厨房に去って行った。
フローラ「フフ……可愛らしいですね……」
フローラも微笑ましく女の子を見ていた。
「アンタ達、帝国人かい?」
店主が鍋を振りながら聞いてきた。
リィン「えぇ……やっぱり思うところがありますか?」
「いや?確かに国同士仲が悪いけど俺達一般庶民にはあんまり関心ねぇな……一部の熱狂的な共和主義者は除いてな」
フローラ「……やっぱりいますか」
「ま、安心しな。あくまでも一部だからな、同じ人間仲良くしたいと思ってるさ…ほら、お待ちどうさん。デザートは後で出すからそれを食って待っててくれ」
店主は炒飯と卵のスープを出してきた。
リィン「へぇ…これは美味そうだ」
フローラ「東方料理は香辛料を使うのが多いと聞きますが……」
リィン「まぁ、まずは頂くとしよう」
リィンはそう言ってレンゲをとって炒飯を頬張ろうとした時……
「おいおい、まさかこんな所で会うとはな!」
突然男の声が聞こえ振り向くと扉が開きこちらに近づいてくる。
リィン「……誰だっけ?」
「ッ……!!レグラムで一度会ってるだろうが!!」
リィン「レグラム……?あぁ、フローラに手を出そうとしたクロスベルのドラ息子か」
「……っく!相変わらず生意気な餓鬼め……まぁ良い、その女を寄越せ!!貴様の言い値で買い取ってやるぞ!」
その言葉にリィンは目を細めた。
リィン「やれやれ……ラウラの仲介で怪我しなくて済んだのに、まだそんな戯言をほざくか……答えは否だ!家族を売る訳無いだろうが!!」
「はっ……!!そんな事言っていいのか?ウチの商会は黒月(ヘイユエ)がバックについてるんだぜ?てめえなんぞ一瞬で消されるぜ!!」
男のそんな言葉にリィンは呆れた。
リィン「……はぁ〜、何を言いだすのかと思えば……黒月がお前如きの要望で動く訳無いだろうが、大して利がある訳でも無いし……大体そんな事を大っぴらに言うか普通?」
そう言うと男の顔がみるみる内に紅潮していく。
「この……!こっちが下手にでりゃつけ上がりやがって……!?」
男が喚いて懐から銃を取り出そうとした時リィンが素早く太刀を抜き男の首元に突きつけた。
リィン「失せろ、女神の元に召されたく無ければな……」
リィンは震える男に警告した。
「……ッ!覚えてやがれ!!その女は絶対手に入れてやる!!」
男は捨て台詞は吐いて店から逃げ出した。
リィン「フン……!」
リィンは太刀を納め不機嫌そうに炒飯に向き直った。
フローラ「相変わらず気持ち悪い男でしたね」
フローラも嫌悪感を隠さずに言った。
リィン「折角の美味い飯も不味くなる。この話は止めて喰おう」
そう言ってリィンは炒飯を口に入れた。
その夜折角だからと桂花飯店で泊まる事になり、夕食も摂り終え部屋でゆったりしていると店の主人から客が来たと告げられた。リィンは怪訝な顔で下に降りるとそこには着物を着た女性がテーブルに座っていた。
「リィン様ですね。私は姫様の御付きのカエデと申します」
彼女はリィン達に気づくと立ち上がり一礼した。
リィン「御付き……ではシズナさんは……?」
「はい、姫様の言葉をお伝えします。『今晩九時、ラングポートの廃倉庫に来るように』と申しておりました」