閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第82話

――夜9時――

 

リィンは指定された廃倉庫の前に立っていた。

 

リィン「ここにシズナさんが?」

 

「はい、姫様は貴方様をお待ちしております」

 

リィンの背後には案内してくれたシズナの側付きのカエデとフローラがいた。

 

リィン「ならフローラとカエデさんはここで待っててくれ、あの人が用があるのは俺だけみたいだからな」

 

フローラ「……判りました」

 

リィンがそう言うとフローラは不安そうにしながらも頷いた。

 

リィン「……心配するな、無事戻ってこれる様に女神に祈っていてくれ」

 

リィンはそんなフローラの心配を察してフローラの頬を撫でながら言った。

 

フローラ「……はい、どうかご無事で……」

 

リィン「あぁ」

 

フローラは目を細めながらもリヒトをリィンに手渡し、リィンは頷いて受け取り廃倉庫の扉を開けて中に入って行った。

 

フローラ「……」

 

そして閉められた扉をじっと見ていた。

 

「大切な方の様ですね?」

 

隣で見ていたカエデはそうフローラに聞いた。

 

フローラ「……それは貴女もではなくて?随分落ち着きが無いわよ」

 

「あら……?判りますか、表情には出した積りは無いのですが……」

 

カエデは僅かに目を見開いた。

 

フローラ「判るわよ。仕える主が男か女か違うだけで貴女も『姫様』を案じてるんでしょう」

 

「クスクス……そうですね。私は姫様が小さい頃からお側に居ましたから……貴女もそうなのですか?」

 

フローラ「そうね、リィン様に出会ってもうかれこれ七、八年位かしら……」

 

「私達、似てるかも知れませんね」

 

「そうかもね」

 

そう言うとお互いに笑いあった。

 

フローラ「さて……こうしてこのまま談笑したいけれど……少し邪魔者を排除しないとね」

 

フローラはそう言って後ろを振り向き棍を取り出した。

 

「あ、やっぱりそちらのでしたか、私達に手を出す馬鹿がいるのは珍しいとは思ってましたが…」

 

カエデもそう言って背後を振り向いた。

 

それと同時にゾロゾロとならず者が出てきて、その中心から見覚えのある男が一歩前に出た。

 

「おいおい、こんな夜中に女が出歩くなんて貴様の主は危機意識がなっていない様だなぁ?」

 

男はニヤニヤしながらフローラの身体を舐めつくような眼で見る。

 

「……何者ですか?」

 

フローラ「質の悪いナンパ男よ……はぁ、何が悲しくてリィン様以外の男に言い寄られなきゃならないのかしら………で?何の用ですか?」

 

「何の用だと?フン、決まっている。お前を俺の女にするに為だよ!あんな小僧如きには勿体無いからな。本当なら奴をボコボコにしてからお前を連れ去ろうと思っていたが……奴が居ない間にクロスベルに連れて行くのも悪くないな。ククク……あの小僧が悔しがる顔が目に浮かぶ」

 

フローラ「悦に浸ってる処悪いけど、私は貴方に着いていく気は微塵もないわよ。私にとっての主は後にも先にもリィン様ただ一人。貴方に忠誠を誓う気はないわ」

 

「フン!判らないな、あんな小僧にどうして入れ込む?俺の方がミラも将来性もある。愛人になれば生涯困る事も無いというのに……」

 

フローラ「判らなくて結構、兎に角これ以上問答は無意味よ。大人しく帰りなさい。今なら見逃すわよ」

 

「誰が帰るか…!こうなったら無理矢理連れ去ってから言う事を聞かせてやる!!ついでだからそこの着物を着た女も可愛がってやる」

 

男が合図するとならず者共が獲物を取り出しジリジリと近づいてくる

 

フローラ「はぁ〜……カエデさん、貴女戦闘の経験は?」

 

「大丈夫です。私も斑鳩の女、一通りの護身術は出来ます」

 

フローラ「結構、なら無理しないで私の側から離れないでね」

 

そう言ってぶつかった……

 

 

そしてそんな外の喧騒を余所にリィンは倉庫の中に進む。

 

リィン「……」

 

「やぁ、リィン久しぶりだね……」

 

少し進んだ処にパレットが山積みになっておりそこにシズナが腰掛けて待っていた。

 

シズナ「フフ……共和国に来て早々随分面白い事に巻き込まれたみたいじゃないかい?妻である私も驚いたよ」

 

リィン「いや……まだ貴女と結婚していないでしょうに……それで……俺を呼んだのはやっぱりその太刀から放つ禍々しい『氣』が原因ですね?」

 

月明かりがシズナの顔が照らされるとシズナの眼は『黎く染まっていた』

 

シズナ?「アハハ!ヨクワカッタネェ……チョットコノ愛刀……暁鴉ノ『詛イ』二飲マレチャッテネェ……悪イケド鎮メルノヲ手伝ッテ欲シインダ』

 

シズナは腰掛けたパレットから飛び降りて太刀―――暁鴉を抜いた。その姿はリィンには『鬼の力』を制御出来なかった『あり得た自分の姿』を重ねた………

 

リィン「……良いですよ。俺も他人事じゃないですから、八葉一刀流中伝として……そして黑神一刀流を教えてもらった貴女からその『呪い』――祓わせてもらいます!」

 

リィンも《鬼気解放》して『リヒト』を抜いた。

 

シズナ?「ヘエ………?《神氣解放》トモ違ウ、シカモ刀身ガ『蒼イ』トハ……カナリノ業物ダネ、コレハ面白イ戦イ二ナリソウダ」

 

シズナはリィンの太刀を見て愉しげに嗤った。

 

リィン「もとに戻ったら幾らでも見せてあげますよ……八葉一刀流 中伝リィン・アイスフェルト」

 

シズナ「ウフフ……黑神一刀流 中伝シズナ・レム・ミスルギ」

 

二人は互いに構えると周りの空気が張り詰め―――

 

「「推して」」

 

そして互いの姿が消えて………

 

「「参る!!」」

 

互いの太刀が交差した―――!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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