閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第84話

―――  浮遊都市アンファング ―――

 

アリーゼ「これはまたとんでもない代物ですね。良くこれを使ってこれましたね?」

 

シズナから預かった暁鴉を検分したアリーゼの第一声がまずそれだった。

 

リィン「どうだ?これを抑え込める鞘を作れそうか?」

 

アリーゼ「ちょっと待って下さい……ディートリヒ、貴方の意見はどうですか?」

 

アリーゼは暁鴉をディートリヒに渡して意見を求めた。

 

ディートリヒ「そうですな……方向性によりますね」

 

リィン「方向性?」

 

ディートリヒ「そうです。一つは一から鞘を新造する。これはここにある素材でこの暁鴉の呪いを抑える方法ですが、これだと少し新造するまで時間がかかります」

 

リィン「出来ない訳では無いんだな?」

 

ディートリヒ「えぇ……で、もう一つが今使ってる鞘の強化ですね。この方法なら既に使ってる鞘に私達の力を注ぐだけですからさして時間はかかりません」

 

リィン「それならそっちを採用するか……?」

 

ディートリヒ「まぁどちらを選ぶかは本人に決めて貰った方が宜しいかと思いますよ。どの道この太刀をこのままにしとくとまた詛いが溢れでますし」

 

リィン「そうだな、俺はシズナさんに今聞いた事を伝えに行く、二人はその太刀をどうするかを考えてくれ」

 

「「判りました」」

 

リィンはそう言って部屋を出た。

 

リィン「さて……シズナさんは何処かな……?」

 

リィンは適当に歩いているとフローラがカエデに設備の説明をしているところを見かけた。

 

リィン「やぁ、どうだ?不便な事は無いか?」

 

カエデ「あ、若旦那様……はい先程からフローラさんに説明を受けているのですが……理解が追いつかず少々混乱していまして……」

 

リィン「まぁ無理も無い、恐らくどの国よりも技術的に進んでいるからな此処は……それより若旦那は止めてくれないかな?シズナさんとは結婚もしていないんだが……」

 

カエデ「いえ、少なくとも姫様は想っておられますし、我々斑鳩から見ても姫様のお相手に相応しく思いますが……?」

 

リィン「いや、だから……はぁ〜まぁ良い……フローラ、シズナさんは?一緒じゃなかったのか?」

 

フローラ「シズナさんでしたら先程鍛錬したいと仰っしゃられたのでトレーニングルームの場所を教えました」

 

リィン「トレーニングルームか……なら今から《レールハイロゥ》の停留所に行けば間に合うかな?」

 

フローラ「いえ、それが……」

 

フローラは苦笑して続けた。

 

フローラ「『此処の乗り物も興味はあるけど走っていく方が速いからいいや』と言って建物の屋根伝いに……」

 

リィン「……何してんの、あの人は……まぁあの人らしいが、じゃあ俺はトレーニングルームに向かうから、フローラは引き続きカエデさんを案内してやってくれ」

 

フローラ「承知しました」

 

リィンはそう言い残して後にした

 

カエデ「………《レールハイロゥ》ってなんの事でしょう?」

 

なんの事を言ってるのか判らないカエデは首を傾げていた。

 

リィンはそのまま停留所に向かい端末に《ゴスペル》をかざすと直ぐに線路が浮き上がり車両が入って停車した。リィンはすぐに乗り込むとトレーニングルームがある区画を指定し『レールハイロゥ』は動き出した。

 

リィン「大分街としての体裁も整ってきたな……」

 

リィンは車窓から見える復旧しつつある街並みを見て呟いた。

 

リィン「最初は廃墟同然だったのに、今すぐにでも人がすめそうだな……でも此処が知られると些か面倒な事にもなるな……」

 

リィンの脳裏にはエレボニア、カルバートその他の国々がアンファングを知った時どう反応するかが目に浮かんだ。

 

リィン「……まぁ良い、まずは目の前の問題から片付けるか……」

 

リィンを乗せたレールハイロゥはトレーニングルームがある『公園区画』に向かった……

 

レールハイロゥが目的地に到着するとリィンは降りてトレーニングルームに向かった。確かに中にシズナの気配がしたので入るとシズナは模擬刀を持ってユン老師のホログラムと切り結んでいた。

 

リィン「あれ?シズナさんにホログラムの事教えていない筈だけどな……?」

 

「∃∅∋∬∂」

 

リィンが首を傾げていると近くにいた蜘蛛型人形兵器が教えた。

 

リィン「ん?お前がホログラムの事教えた?っで、それを知ったシズナさんが老師を出して欲しいとせがんだから自分が端末を操作した?」

 

「∆∑√∝」

 

蜘蛛型は肯定して勝手な事をしたのを謝罪した。

 

リィン「いや、謝らなくて良い。シズナさんの性格なら何れこうなっていたさ、しかし……流石だな、ユン老師とシズナさんも一歩も引けを取ってない。だけど……」

 

 

シズナとユン老師の斬り結びは徐々にユン老師の方が有利に傾いて……最後はユン老師がシズナの模擬刀をはじき飛ばして勝負がついた。

 

シズナ「…………嗚呼〜〜〜!負けちゃったか〜もう少し食らいつけるかと思ってたけどな〜〜〜!」

 

シズナは床に大の字になって寝転んだ。

 

リィン「お疲れ様です。シズナさん」

 

リィンはシズナに近づきジュースを手渡した。

 

シズナ「おや、リィン?何時から居たんだい?」

 

シズナは起き上がり、ジュースを受け取りながら不思議そうに聞いてきた。

 

リィン「ついさっきですよ。シズナさんが気づかないのは珍しい。よほどこのシミュレーターに夢中だったんですね?」

 

シズナ「ハッハッハ!!そうだねぇ……浮遊都市だけでも驚いたけどこんな訓練施設、それも影とはいえ先生と稽古出来るなんて夢にも思わなかったよ……でも狡いねぇ、リィン?こんな素敵な場所を姉弟子である私に黙っているなんて……」

 

リィン「いや、ズルいって言われても……こんなのおいそれと話せないでしょうに」

 

シズナ「フフフ、判っているさ冗談だよ………四割程は、で?私に何の用があって来たんじゃないのかい?」

 

リィン「えぇ………暁鴉について、抑える目処はつくそうです。後はシズナさんが決めて欲しいと」

 

シズナ「目処……ねぇ、私がアレを抑えるのを四苦八苦してたのにこうもあっさりとね」

 

リィン「……聞いても良いですか?何故アレを握っているんです。アレは妖刀なんて生優しいモノじゃない」

 

シズナ「……そうだね。君には聞く権利はあるか、良いよどこから話そうかな………」

 

シズナはそう言って居住まいを正した。

 

シズナ「《暁鴉》―――《暁鴉之太刀》。真なる諱はとうに失っているけれど神魔を祓い、魂魄を繋ぐという………“血”と“呪い”と共に受け継がれた太刀。これを振るい、御する事は私に課せられた使命で……物心つく頃には先生から直接指南を受けるようになった」

 

シズナ「でも―――この太刀に封じられし“呪い”は余りにも強大だったらしい。入り込んできた“黒いもの”は私を戦の愉悦を貪り喰らう“獣”に変えて……気付いた時には只々立ち尽くしていた。漸く御する事が出来た太刀を手に―――傷ついた者たちと、血を分けた彼の人の亡骸を見下ろしながら……」

 

言い終わるとシズナは溜息をついた。

 

リィン「そんな事が……」

 

シズナ「フフ、でも私はそんな悍ましい出来事があっても尚、本質は子供の頃から変わっていない。ただ思うままに己の剣を高め……いつか“零の境地”に辿り着く為に。それが楽しくて仕方ない―――我ながら度し難いと思うよ」

 

リィン「……でも多分彼等も承知の上だったと思います、貴女が高みに昇る事で貴女を信じ、命を賭して散った人達の最大の供養になるでしょう。だから―――自分を責めないで」

 

シズナは一瞬目を見開いて笑っていたがその声は震えていた。

 

シズナ「ハハ……いやだなぁリィン、私……は別に……あ、あれ?なんで……悲しく無いのに……」

 

シズナの目から一筋の涙が流れてきた。

 

リィン「良いんですよ。シズナさん、泣いても……此処にいるのは斑鳩の姫ではなくて一人の――ただの女です」

 

シズナ「は、ハハ……ズルいなぁリィン……私は、私は……!」

 

シズナはリィンの胸に飛び込んた。

 

シズナ「お願い……!暫くこうさせて……!」

 

シズナはリィンの胸の中で呟いた。

 

リィン「えぇ……構いません。気が済むまで泣いても良いです」

 

 

 

シズナ「う…う、ウアァァァァァァ!!」

 

仲間の死を想うシズナの慟哭が室内に響き渡った……

 

それから暫くして……

 

シズナ「……コホン…みっともない処見せちゃったね」

 

シズナの目はまだ紅いがスッキリした様だ。

 

リィン「いえ、俺こそ生意気を言いました」

 

シズナ「フフ……ねぇリィン……私ね、貴方が好き、貴方をお慕い申し上げております。どうか貴方の側に置いて下さいませ」

 

シズナが突然そんな事を言い始めた。

 

リィン「シズナさん……?」

 

シズナ「フフ、以前婚姻届なんて無粋な物出しちゃったからね。言葉にしてみたんだ。返事は…どうかな?」

 

リィン「……シズナさん俺は他の女性と婚約しています。そしてもう一人恋人も居ます。そんな最低男で良いんですか?」

 

シズナ「知ってる。《リベールの至宝》と《銀》でしょ?そんな事で私の気持ちは変わらないよ。だから、リィンの隣にいさせて欲しい」

 

リィン「……分かりました。よろしくお願いします」

 

リィンがそう言うとシズナは喜び、リィンに抱き着きキスをした。

 

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