ディートリヒ「では鞘の『強化』で進める方向でよろしいんですね?」
作業場にいたアリーゼとディートリヒに方針を伝えるとディートリヒが最終確認を取った。
シズナ「うん、それでお願いしたい。勿論ちゃんと報酬も支払うから」
リィンの隣に居たシズナが懐からミラの入った財布を取り出そうとしたのをアリーゼが制した。
アリーゼ「報酬は結構です。リィン様の頼みですし、貴女も何れ身内になるでしょうから」
シズナ「身内……って、まぁリィンとは祝言挙げたいとは思ってるけど……」
シズナは頬を赤くしてチラリとリィンを見た。
ディートリヒ「ハハ……ではこの早速この太刀を預からせて貰います。終わりましたらお知らせ致しますのでその間は散策でもしていて下さい」
リィン「判った。では頼んだぞ二人とも」
シズナ「暁鴉をどうか宜しくお願い致します」
リィンはそう言って作業場を出ていくとシズナも後から続いた。
シズナ「……ねぇリィン?あの二人、人間じゃあ無いでしょう?」
シズナはリィンの隣に並び歩き尋ねた。
リィン「……やっぱり解りますか?」
シズナ「そりゃあね?単なる一般人が暁鴉に触れたら最悪廃人だよ。でもあの二人は素手で触っていた。これで一般人は無理あると思うけど?」
リィンは肩を竦めた。
リィン「それもそうですね……まぁ、隠す必要も無くなりましたし、教えますけど……これから話す事は信じられない事実なので他言は無用でお願いします」
シズナ「へぇ……?それ程のものかい……?判った。他言はしないと誓うよ。で、どういう事かな」
リィン「えぇ、実は―――」
そしてリィンは二人の正体を明かした。その出会いも含め……
シズナ「…………」
話を聞き終わるとシズナは目を見開いていた。
リィン「という訳なんですが……あの、シズナさん?」
シズナ「フフ……フフフ、ハハハハハハハハハ!!御伽噺に出てくる七つの至宝の内の二つがあの二人だって……?アハハハハハ!!」
シズナはお腹を抑えながら笑った。
リィン「信じられませんか?」
シズナは笑い過ぎて目から涙を浮かべていたがそれを拭いながら答えた。
シズナ「いやいや、逆だよ。寧ろ納得したよ……どおりで人間とは違う氣を感じた訳だね……察するにこの浮遊都市も古代ゼムリア文明の遺産だね?そして彼女……フローラも……」
リィン「……えぇ、彼女も古代ゼムリアの忘れ形見です。ですが、そんなのは関係なく俺の家族です」
シズナ「フフ、判ってるさ……しかし流石は私の夫、予想外の物を抱えていたねぇ……」
リィン「自分の事ながらそう思いますね……」
リィンはそう言って自分の頬をかいた。
シズナ「で?どうするんだい?」
シズナはリィンの前に回りリィンの顔を覗き込んだ。シズナの綺麗な瞳がリィンの眼をじっと見つめている。
リィン「どう……とは?」
リィンはシズナの吐息が感じる距離に頬を染めて顔を逸らした。そんなリィンの事を愛おしく頬に手を添えてシズナは微笑んだ。
シズナ「この浮遊都市を使ってリィンは何を為すのかな?國を興す?それとも何処かの国家に此処を手土産にして臣従する?それとも……ゼムリア大陸を統一するかい?」
シズナの瞳はリィンを見極めようと観ている。
リィン「何を為す……ですか、そうですね。正直この浮遊都市―――アンファングはその気になれば二大国はおろか、ゼムリア大陸のどの国も太刀打ち出来ないでしょう。でも………それはしたくないです」
シズナ「それは何故だい?」
リィン「余りにも強大だからです。この『力』は人の手には余ります。不分相応な力は己自身を滅ぼします。だから出来ることなら誰にも知られる事無くこのまま過ぎていければいいんですが……」
シズナ「だけど世界は技術発展してきている。何れは発見される……かい?」
リィンはそれに頷いた
リィン「えぇ、そして発見された時どうなるか……それを考えるとこのままではいけないのも確かです……まぁ優柔不断と言われても仕方無いですが」
シズナ「それで良いんじゃないかな?」
リィン「え……?」
シズナはそう言ってリィンを抱きしめてリィンの耳元で囁いた。
シズナ「昨日の私の暴走を見ても解かるよね?どんな強大な力でも制御出来なければ無意味だと、この浮遊都市も同じだよ?だからリィンが慎重になるのも理解できるし、そうであるべきだよ。力を持つ者の責務として……だからリィンが思う通りにしたら良い」
リィン「シズナさん……ありがとうございます」
シズナ「呼び捨てで良いよ。夫が妻に遠慮する事も無いさ」
リィン「判りまし……判った。これで良いかい?シズナ」
シズナ「うん、でも自分で言っといて何だけれどやっぱり照れるね……」
シズナは頬を紅くなり、リィンの首に手を回した。
リィン「そればかりは次第に慣れていくしか無いだろうね。今後結婚したらシズナにはクローゼやリーシャとも仲良くして欲しいし」
リィンもシズナの背中に手を回した。
シズナ「それは大丈夫、同じ人を好きになった者同士上手く付き合っていくよ」
リィンとシズナは互いに見つめ合いそして互いの唇が近づき……キスを交わした。
カエデ「あ、あの……」
「「!?」」
二人は驚いて慌てて離れて背後を見るとシズナの側付きのカエデが頬を赤くしてこちらを見ていた。
シズナ「や、やぁカエデ……何時から見ていたんだい?」
カエデ「ひ、姫様が若旦那様にせ……接吻をするところからです!」
カエデはその場面を思い出すと両手で顔を隠した。
リィン「あ、アハハ……カエデさんとしてはシズナとの婚姻はどうなのかな?」
リィンが頬をかいて尋ねるとカエデも気を取り直した。
カエデ「カエデとお呼び下さい。私……と云うより斑鳩としても姫様と若旦那様の御婚姻は誰一人として否を唱える者はいないでしょう。また、リベールの姫君と銀殿の事も承知致しておりますので、お気になさらず……姫様を宜しくお願い致します」
カエデはそう言って頭を下げた。
リィン「えぇ……任せてください。必ず幸せにしてみせます」
リィンはそう言ってシズナの肩を抱き寄せて誓った。
シズナ「フフ……っとそう言えばカエデは何か用があったんじゃないかい?」
カエデ「あ、そうでした。実はフローラさんが若旦那様に用があるから第二端末室?なる場所に来て欲しいと」
フローラ「先ずは婚約おめでとうございます」
目的の端末室に到着して最初にそう言われた。
リィン「……反対しないんだね?」
フローラ「反対する理由もありませんから、寧ろ積極的になっても良いくらいだとも思っています」
リィン「そっか………それで、用って何があったの?」
フローラ「そうですね、まずはこの画像を見てください」
フローラはそう言って端末を操作するとラングポートの上空画像が映し出された。
リィン「これは………ラングポートの上空だな?これがどうかしたのか?」
フローラ「いえ、問題の地点はラングポートでは無く……ここです」
フローラは更に端末を操作すると画像がラングポートから離れ海を映し出しある一点で指し示し止まった。
フローラ「この地点で高エネルギー反応が確認されました。念の為にスキャンした処海底に人工物……建物がありました。簡単な年代測定の結果千年以上前に建造された物です……至宝の可能性があります」