閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第86話

――― ラングポート市内図書館 ―――

 

シズナ「リィン、あったよ。ここ六百年に渡るラングポート近辺の海図が載った本」

 

シズナがそう言って該当する本を持ってリィンが座る席に置いた。

 

リィン「ありがとうシズナ、手伝って貰って助かる」

 

シズナ「ハハハ、構わないって妻が夫の手伝いをするのは当然だよ。しかし……至宝がラングポート近辺の海域にねぇ……?疑う訳じゃないけど確かなの?」

 

シズナはリィンが座る机に腰掛けた。

 

リィン「まだ至宝と確定した訳では無いけど、少なくとも反応があった事は確かみたいだ。今フローラが更に詳しく精査してるみたいだけど」

 

リィンは目線を本に向けたまま置かれた本を手に取りページを捲った。

 

シズナ「へぇ……?まぁそれでリィンは別口で調べる為に図書館なんて来たんだね」

 

リィン「まぁな、どうも本来その海域は島があったらしいが自然災害か、沈んだみたいだ。だからその海域の海図を探しているんだが」

 

シズナ「フゥン…ねぇ仮に至宝だったらやっぱり勁いかな?」

 

リィン「どうだかな……人智を超えた存在なのは確かだろうけど、方向性にも寄るんじゃないのか?」

 

リィンは一旦ページを捲るのを止めてシズナの方に向いた。

 

シズナ「因みにアリーゼ殿やディートリヒ殿はどうなんだい?」

 

リィン「手合わせした事は無いからはっきりとは言えないけど……少なくとも高位猟兵なら軽く屠れるんじゃないかな?」

 

シズナ「へぇ……?」

 

リィン「……何を考えてるのかは分かるけど止めといた方が無難だぞ?」

 

シズナ「アハハ……判ってるって、聞いただけさ……でも新しい《暁鴉》を試したくてさ」

 

シズナとリィンは立てかけてある暁鴉を見た。

 

リィン「結局、刀身をアリーゼの焔で焚いてから鞘の内側に薄く伸ばしたゼムリア鉱で補強して更に二人の力を注いで詛いを抑え込んだらしいな。それでも長年染み込んだ詛いを完全に浄化するには至らなかったらしいが……」

 

シズナ「それだけでも十分過ぎる位さ、後は私が使いこなすだけの話だからね。それで、手掛かりになりそうなのは見つかりそう?」

 

リィン「少し待ってくれ……あった、これだな……反応があった場所と一致してる。四百年前まではラングポートから2500アージュ(2.5キロメートル)離れたところに島があったらしい。今は跡形も無く海に海没したらしいが」

 

リィンは本に記載されていた海図とフローラが示した海域と重ね合わせた。

 

シズナ「ふぅん、妖しいねぇ?島の名前は乗ってるの?」

 

リィン「……無いな、無人島だったのかもしれない」

 

「《水龍様の島》じゃよ」

 

突然声をかけられて目を向けると見覚えのある老人が近付いてきた。

 

リィン「貴方は確か……《桂花飯店》の前を掃除していた…」

 

「ホッ、ホッ、ホッ……覚えていてくれていか若いの、何やら調べ物をしているようじゃな」

 

老人は自分の顎髭を撫でて笑った。

 

リィン「ご老人、貴方は先程《水龍様の島》と言いましたが、何かご存じですか?」

 

「うむ、儂が小童の時に爺様が教えてくれた事があってのぅ。甞てあの島には水龍様を祀る塔があったと云われておったそうじゃ、水龍様はこの辺りの海を時に豊かさを齎し、時には嵐を齎したと云われておったそうじゃ、だからラングポートの漁師達は水龍様を崇めておった。だがある時塔諸共島が沈み、それ以来忘れ去られた島じゃ」

 

リィン「《水龍様》……」

 

リィンは考え込んだ。

 

シズナ「塔ねぇ……どのくらいの高さがあったのかな?」

 

老人は鼻にかけた眼鏡を直した。

 

「さぁのう……爺様も伝え聞いた話を儂にしただけじゃからな、なんとも言えんのう」

 

リィン「いえ…参考になりました。しかしご老人、俺に何か用がお在りですかね」

 

「おや?偶々お主が図書館に入ったのを見たから来ただけじゃが?」

 

シズナ「へぇ……なら、ご老体の周りを硬めている『武侠達』は何かな?」

 

シズナかそう言うと老人の目が鋭くなり周りの空気も重くなった。

 

「……ほう?何時から気付いておったかのう?これでも手練れを揃えた積りじゃが」

 

老人は目を細めながらリィンに尋ねた。

 

リィン「最初から、ですね。《桂花飯店》で貴方と会ってから俺達を監視していたのは判っていました。上手く気配は消していましたが俺達には胡魔化せませんよ」

 

「……クックック、侮ったつもりは無いのじゃがな。流石と言っておこうかのう『八葉一刀流の最後の弟子』リィン・アイスフェルトに斑鳩のシズナ・レム・ミスルギ」

 

さっきまでの好々爺とした雰囲気は消えそこには修羅場を潜り抜けた老練な達人がいた。

 

 

リィン「……大体正体は解りますが自己紹介をお願いして頂けると助かります」

 

「ふむ、確かに名乗らずにいたのは無作法じゃったな……

 

 

 

 

 

儂の名はギエン・ルウ、《黒月》の長老をしておる。ここに来たのはお主達と話し合いをしたいが為じゃ、まずはその殺気を納めてくれんかのぅ?」

 

 

 

 

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