閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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二百話か……まさか書き始めた時はこんなに書けるとは思いもしなかった。これからも皆様の暇つぶしの足しになれるように頑張ります。


第87話

ギエン「とりあえず座らせて貰えんかのう?」

 

老人―――カルバート最大のマフィア《黒月》の長老であるギエン・ルウはそんな事を言った。

 

リィン「……どうぞ」

 

ギエン「有り難い、やれやれ年は取りたくないのう……足腰が弱くなって敵わん」

 

ギエン老はそう言って椅子を引いて腰掛けた。

 

リィン「謙遜を、そこらの有象無象程度なら貴方は簡単に屠れるでしょう?」

 

ギエン老「ホッホッホ、そう年寄りを持ち上げるでない。全盛期なら兎も角、今なら二、三人程度しか同時に相手出来ぬわ。増してお主等の相手は黒月としてもしたくないからのう」

 

シズナ「へぇ……?つまり私達と敵対するつもりは無い事を態々伝えに来たと?黒月の長老たる貴方が?」

 

ギエン老「うむ、それもある。後は先日債務者を引き渡してくれた礼も兼ねてな」

 

リィン「債務者……?あぁ、あのバカ息子の……どうなりましたか?」

 

ギエン老「うむ、額が額なだけにな……返済してもらう為に黒月傘下のフロント企業で働いて貰っておるよ。なぁに『必要最低限の衣食住』は揃ってるから死にはしないだろうて」

 

ギエン老は嗤った。

 

リィン「それはそれは気の毒に……いや自業自得か、精々借金返済を頑張って欲しいものですね」

 

リィンも釣られて嗤った。

 

ギエン老「まぁ、そう言う訳だからお主達が煌都に害をなすつもりは無いのなら干渉はしないと誓うが?」

 

シズナ「成る程ね、まぁ私達も同じかな?好き好んで敵を増やすつもりは毛頭ないから安心してよ」

 

それを聞くとギエン老はふっと笑った。

 

ギエン老「それを聞いて安心したわい、お主等を敵に回したら黒月の被害が計り知れんからの。ただでさえ『赤い星座』との抗争が間近に控えておるのじゃし」

 

シズナ「へぇ……?帝国を根城として『西風』と並ぶあの高位SSS級猟兵団あの『赤い星座』と抗争ねぇ……黒月だけで対抗出来るの?」

 

ギエン老の呟きにシズナが反応して暗に『斑鳩』を売り込みにかかった……本音は噂に名高い《赤い戦鬼》やら《血染め》と本人が死合をしてみたいのだろうが……

 

「好意は有り難いがお主を雇うと煌都がボロボロになりそうじゃから遠慮しとこう、では儂はこれで失礼する」

 

ギエン老はそう言って立ち上がり入り口に向かおうとした時に思い出したのか振り返った。

 

ギエン老「そう言えば言うのを忘れておったが、さっきも言った通り《水龍様の島》は沈んだが年に一回、島が沈んだ海域の海が光り輝くという現象が起きておる、しかもその『年に一回』が今晩の筈じゃ。興味があるなら行ってみると良い、お主らが何の目的で調べてるかは知らんが結果が出る事を祈っとるよ」

 

ギエン老はそう言って今度こそ立ち去って行った。

 

リィン「………水龍様……か」

 

シズナ「どうするリィン……行ってみるかい?」

 

リィン「勿論……行ってみるさ、水龍様の島とやらに、シズナはどうする?」

 

リィンは本を閉じて席を立ってからシズナに聞いた。するとシズナはニヤリと笑うと立ち上がる。

 

シズナ「無論、ついていくに決まってるじゃないか。こんな面白い事見逃す訳無いじゃない。それに……夫を支えるのも妻たる私の役目だしね」

 

リィン「決まり……だな、じゃあフローラと連絡取るか」

 

リィンはそう言って本を元の場所に返却して図書館を後にした……

 

 

そしてその夜八時―――ラングポート港外れの埠頭にリィンとシズナが立っていた。

 

リィン「……そろそろ予定の時間だな」

 

リィンは懐中時計を見て呟いた。

 

シズナ「ねぇ、今更だけどどうやって調べるの?目的地はとっくの昔に海の底に沈んでいるし……」

 

リィン「あぁ、それなら心配無い。手段はある……来たな」

 

シズナの疑問にリィンが答えると丁度海面から物体が浮き上がる。そしてリィン達が居る埠頭にゆっくりと近づき、完全に停止するとハッチが開き中からフローラが顔を出した。

 

フローラ「お待たせしました。リィン様少し調整に手間取りました」

 

フローラはそう言ってリィンに手を差し伸べた。

 

リィン「いや、丁度良いタイミングだ。それよりカルバート海軍には気付かれていないな?」

 

リィンは差し出された手をとり甲板に乗り移る。

 

フローラ「はい、彼等にはまだ海中を探索出来る設備は無いですから……まぁ仮にあってもこの船を探知は無理でしょうが」

 

リィン「だとしても警戒するに越した事は無い。パトロールが来る前に離れるぞ……って、シズナどうした?鳩が豆鉄砲を食らったみたいな顔して……」

 

シズナ「えっ…と、リィンこれが『船』なの?」

 

シズナはポカーンとした顔で目の前の船を見た。

 

リィン「そうだ。潜航……つまり海に潜れる船……『潜水艇』だ。これなら調べられるぞ」

 

リィンはシズナに手を差し出した。

 

フローラ「因みに船名は『ネルトリゲン』と名付けました」

 

シズナ「は〜……流石古代ゼムリア文明……こんなの見たこと無いや」

 

シズナもリィンの手を取り乗り移った。

 

リィン「寧ろ見たことあったら逆に驚くけどな、フローラ早速で悪いが……」

 

フローラ「はい、では先に中に戻ります」

 

フローラはそう言って中に降りていった。

 

シズナ「えっ…と?」

 

リィン「まずはシズナから入ってくれ。俺は最後にハッチも閉めなきゃいけないからな」

 

シズナ「あ、うん……じゃあ先に行くね」

 

そう言ってシズナもフローラが入った梯子を足にかけ降りていき、リィンが最後に降りる際ハッチを閉めた。

 

シズナ「……中は意外に狭くないんだね。機器が詰め込まれてる割には」

 

シズナはキョロキョロと艇内を見て呟いた。

 

フローラ「これでも我々が所有している艇では一番小さいんですけどね。必要な機材を除くと操舵手以外に二、三人しか人員を運べませんし」

 

フローラは操舵席に座り発進に必要なシーケンスをチェックしながら答えた。

 

シズナ「これで一番小さい……」

 

フローラ「リィン様、何時でも出港出来ます。ご命令を」

 

フローラは振り返るとリィンに許可を求めた。それにリィンは頷き命令を下す。

 

リィン「よし!潜航用意!!本艇はこれよりカルバート港を離れる。目標、『水龍様の島』!!」

 

フローラ「了解!潜航開始!!目的地設定、微速前進!!」

 

そうしてリィン達を乗せた潜水艇は海の中を潜って行った……

 

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