カルバート港を粛々と出港した潜水艇『ネルトリゲン』は巡航速度十九ノットで順調に海中に潜っていた。
シズナ「……何か船が海の中を潜るって変な感じがするねぇ…?」
シズナは始めての経験に少々落ち着かず椅子に座ったまま目線を彷徨わせた。
リィン「まだ人は海に潜るなんて考えが及ばないからな、無理も無い」
リィンはシズナの隣に座り苦笑していた。
シズナ「何でリィンはそんな落ち着いていられるのさ……もしかして何度か経験あるの?」
リィン「いや?俺も初めてだが……(《前世》の知り合いに潜水艇乗りは居たけど……)」
シズナ「うん、何か言った?」
リィン「いいや、何も……それでフローラ、目的地迄は後どのくらいだ?」
フローラ「もう少しで到達します……段々エネルギー反応が強まってる……間違い無くナニかがこの先にありそうね」
フローラは異様な反応をみせる計器を見て確信していた。
シズナ「いよいよかな……さて鬼が出るか蛇が出るか……どっちだと思う?」
リィン「さぁ?でも少なくともシズナが退屈する事は無いと思うぞ」
シズナ「それなら良いけどね」
フローラ「目標まで100アージュの地点まで到達。映像を出します」
リィン「ッ……!これは……」
フローラがスクリーンに映像を映し出すとそこにはリベールの四輪の塔によく似た塔がほんのりと光っていた。
シズナ「……なんと言うか、予想以上だねぇ……」
リィン「……フローラ、観測結果は?」
リィンは解析に追われているフローラに尋ねた。
フローラ「経年劣化が激しいですが間違い無く暗黒時代以前に建造されたと思われます。しかも塔自体もまだ生きてます……」
リィン「見たところ外見も高さも四輪の塔によく似ているな……周りを一周して見てくれ」
フローラ「了解」
フローラは《ネルトリゲン》を反時計回りに塔を一周させた。
シズナ「塔の付近は森があったみたいだね?株らしき痕跡がある」
リィン「こっちには崩れているけど……石造りの小屋かな……?嘗ては漁師達の休憩場でもあったのか……」
フローラ「石畳の道の跡も見えます。四百年前まで此処に島が存在していた確かな証拠ですね」
モニターから次々と映し出される遺構に三人は息を呑んだ。
リィン「さて……そうなるとあの塔の中は入れるのかな?」
シズナ「それ以前に中もとっくに水没してるでしょ、あの状態でどうやって入るの?」
シズナはスクリーンに映ってる塔を指差した。
リィン「確かにな……フローラ、どう思う?」
フローラ「そうですね……塔の最上階に向かいますか?リベールのと同じ構造なら最上階から侵入出来るかと思います」
リィン「そうだな、最上階ならもしかしたら同じ様に祭壇があるかもな」
フローラ「では最上階まで浮上します」
フローラが潜水艇を最上階の高さまで浮上させライトを照らすとそこは……
リィン「これは……」
シズナ「見事に崩れてるねぇ……」
そう、最上階の床は全て崩れ落ちていて中にあったであろう階層も全て抜け落ちて瓦礫の山になっていた。
フローラ「どうしますか?中は見ての通り空洞みたいですが……」
リィン「……中に入ってみよう、このまま何も収穫も無く戻るのも癪だし」
フローラ「了解、塔の内部に侵入します」
フローラは潜水艇を塔の内部に侵入させた。
リィン「……」
シズナ「静か過ぎるね……不気味なくらいに……」
潜水艇は塔の最下層に到達した。
フローラ「……可笑しい……こんな事は……」
計器を睨んていたフローラは呟いた。
リィン「何が可笑しいんだ?」
フローラ「この下は地面の筈なんですが計器は更に『下』があると告げています」
シズナ「『下』?地下室かい?」
フローラ「いえ、階段すら見当たら無いのですが……確かに『下』があると……」
リィン「『下』か………ん、リヒト?」
悩んでいるとリィンが佩いているリヒトが震え出した。
シズナ「リィン、どうしたのかい?」
リィン「いや、リヒトが突然震え出して……何?自分を使って地面を切り裂け?それで道が開く?」
リヒトは震えて肯定した。
シズナ「おや?暁鴉に劣らずリヒトも妖刀の類なんだ」
リィン「それ、本人?に言うなよ。拗ねるから」
フローラ「如何しますか?」
リィン「……やってみよう、フローラ潜水服を用意してくれ」
リィンは潜水服を着込むと艇のハッチを開け、外に飛び出した。それと同時に潜水艇も少し上昇し退避した。
フローラ『リィン様、潜水艇の退避は完了しました』
リィン『判った。何が起こるか判らないから注意しろよ』
リィンはリヒトを手に取るとリヒトは蒼白い光を刀身に纏った
リィン『……ッ!!』
リィンが地面にリヒトを突き刺し、そのまま横に切れ込みを入れる。すると切り口からあり得ない光景が見えた。
リィン『これは……!!』
そこにはまるで前世のおとぎ話に出てくる浦島太郎の宮殿みたいな建物が建っていた!!