「……そうですか、『焔』も『大地』も貴方に仕える事になったのですか……てっきり相討ちになって果てたと思ってましたが」
女性は自らの祭壇にリィンを上がってもらい、茶を用意して話を聞いていた。
リィン「その言い方、貴女は二人が争った事を……?」
「えぇ、勿論知っています。『水』は何処にでも存在してますから、雲の中にも、雨にも川にも……」
女性は出来た茶をリィンに差し出した。
リィン「成る程……あ、美味しい」
リィンは差し出された茶を受け取り口に含んだ。
「それは良かった。客人に茶を振る舞うのは数百年振りでしたから、お連れの方もどうですか?」
女性はリィンの両脇に座っているシズナとフローラに水を向けた。
フローラ「えぇ、美味しく頂いてます」
シズナ「うん、多分煌都にある高級飲茶に引けは取らないんじゃないかな?」
フローラもシズナも茶を飲みそう評した。
「しかし、私が俗世から離れてから早数百年……私を求め貴方は何を得るお積もりか?」
リィン「……」
リィンはその言葉に湯呑みを置いて居住まいを正した。
リィン「……何も、強いて得たい物を答えるなら『数十年の平和』……ですね」
「数十年……?恒久的な平和を望まないと言われるのですか?」
女性は怪訝な顔になりリィンに問うた。
リィン「人間の歴史上、恒久的な平和が成立した事は一度も有りません。だからそんなのは要らない。ただ数十年の豊かで平和な時代は確かに存在していました……細かい諍いもありますが……」
「……」
女性は無言で続きを促す。
リィン「簡単に言えば俺は仮に至宝に求めるのはこの先の高々数十年の平和だけなんです。だけどその数十年はこの先起こるであろう戦乱や対立の幾万倍も価値があると思っています。俺は今ここに居る二人だけでなく他にも共に人生を歩んでいきたい女性やかけがえの無い友人達が居ますが、彼等が戦乱で泣く姿は見たくない……それだけです」
リィンはそう言って湯呑みを手に取り茶を啜る。
「……傲慢ですね。貴方が去った後は考えられないと?」
リィン「逆に俺一人が去って平和が崩れ落ちる位ならそんな平和は歪な平和でしょう?平和とは一人で築く物では無く生きとし生けるもの全ての人々がそう願い、築こうとする。その姿勢の方がよっぽど健全だと思いますが?」
リィンは肩を竦めて言った。
「………フ、フフ、フフフフ、アハハハ!」
女性はさっきまでの上品な姿勢を崩し、お腹を抱えて笑った。
「ハハハ………!ハア〜、やはり貴方は傲慢ですね。ですが……空虚な理想を語られるよりはずっと好感が持てます」
リィン「………」
女性は己の胸に手を当てた。
「良いでしょう。私の力、貴方の為に貸しましょう……永遠ならざる平和の為に、さぁ太刀を私の前にかざしてください。『リィン様』」
「……」
リィンはリヒトを抜き、彼女に手渡した。彼女は受け取ったリヒトを宙に浮かべ、『水』をリヒトに纏わせ言葉を紡ぐ。
『さぁ、私の力を貴方に授けます。受け取りなさい!』
彼女はそう言うとリヒトは纒っていた『水』を刀身に取り込んだ。そしてリヒトはリィンの手元に戻った。
「これでこの子は更なる力を手にしました。それと、私もこれより貴方様の拠点にて力を振るいましょう」
リィン「有り難う、っとそう言えば名をまだ聞いてなかったな?」
「あぁ、そう言えばそうでした。では、改めて自己紹介を致しましょう」
「私の名は『水の至宝』蛟(ミズチ)これでも龍種に属していますわ。リィン様末永く宜しくお願い致します」
彼女……ミズチは恭しく一礼して名乗った。