リィン「参ったな……煌都を出る列車全てが運休とは……」
リィンは駅に着いてから時刻表を見たが何れも運休と表記されていた。
フローラ「駄目ですリィン様、駅員にも聞いてきましたが抗争のせいで貨物列車すら出せないと言われて他の利用客も窓口に詰め寄っていました」
フローラも駆け寄り報告した。
リィン「そうか……バスはどうだ?」
フローラ「そちらも今便数が減っていて、その上列車に乗れなかった人達の長蛇の列で今から乗り込むのは難しそうです」
リィン「ち…ッ!黒月と赤い星座の抗争の影響が予想以上に広がっているな…!」
思わずリィンそう吐き捨てた。
フローラ「いかが致しますか?」
リィン「そうだな………うん?」
リィンはどうするか思案しようとした時、リィンのゴスペルから通信が入った。
リィン「もしもし、シズナか?」
シズナ『あ、リィン?良かった。いや〜便利だねコレ、こういう携帯出来るの普及したらクロガネとかの連絡取りやすくなるね』
リィン「数年後には実用化されて世界中に広まるさ、それで?そっちは終わったのか?」
シズナ『うん、終わったよ。取り敢えず合流したいけど今何処に居るのかい?』
リィン「今は煌都の駅舎に居る」
シズナ『そっか、なら直ぐに向かうよ』
リィン「ああ、待ってるからな」
シズナSide
リィンとの通信を終えたシズナはゴスペルを懐に仕舞う。
シズナ「これで良し……しかし」
シズナはチラッと周りを見るとそこには赤い星座の団員がうめき声をあげて倒れていた。全員腕やら足やらが変な方向に曲がっていたが、ただ二人だけ膝をついて息を切らしていた。ランドルフとシャーリィだ。
シズナ「やめときな、もう君達は立つ体力すら無い筈だよ。得物もボロボロだし……」
ランドルフ「ハァハァ……クソっ……!化け物め、あれだけの戦力差があったのに掠り傷一つ無い上に部隊が壊滅だと?」
確かにランドルフもシャーリィも細かい傷を負い、二人の得物……ベルゼルガーとテスタロッサは少なくとも今回の《依頼》には耐えられないだろう。
シャーリィ「アハハ……ここまで差があるともう笑うしか無いね、ねぇ……お姉さん何者なのかな?闘気を纏ったからには同業者みたいだし……」
シズナ「おや、そういえばまだ名乗ってなかったね?私はシズナ・レム・ミスルギ、斑鳩の者と言えば分かるよね」
ランドルフ「はぁァァァ!!?何でSSSクラスの高位猟兵団の奴が此処にいる!?今回斑鳩が関わっているなんて聞いてねぇぞ!?」
シズナの名乗りにランドルフは身体の痛みを忘れて叫んだ。
シズナ「そりゃあそうさ、実際関わってないからね。今回私が煌都にいたのは個人的な用事があったからだけたからね。言わば偶然」
ランドルフ「つまり……俺達は、斑鳩に喧嘩を売ってしまったのか……!」
ランドルフは真っ青な顔で呟いた。
シズナ「そういう事だね。ま、私はそこまで気にしていないから賠償云々は求めないからそこは安心しなよ」
シズナはそう言ってくるっとランドルフ達に背を向けて歩き出した。
「君達の部下も怪我はしてるけど命に別状はないから直ぐに治療してやると良いよ」
ランドルフ「待てよ……」
シャーリィ「止め……刺さないの?」
シズナは歩みを止めて首だけ振り返って言った。
シズナ「これが斑鳩と赤い星座の戦ならそれも考えるよ。けど今は斑鳩は黒月と契約していない、君達を止めを刺す理由も無いし、必要も感じない。それだけだよ。じゃあ私はもう行くから」
シズナはそう言って今度こそ振り向かずに去って行った。
シャーリィ「ハハッ………あれが強者の余裕……か」
シャーリィは気力が尽きて気絶してしまい。
ランドルフ「………クソがぁぁぁぁぁぁッ!!!」
その場に残されたランドルフは屈辱に震えて拳をコンクリートの地面に何度も叩きつけた。
―― 煌都駅 ――
シズナ「お待たせ」
シズナは駅に着くとリィン達を見つけ駆け寄った。
リィン「随分速いな、相手はそれなりの手練れだったろう?」
シズナ「アハハ、確かに練度は高かったけどね。ま、良い準備運動にはなったね。それで、そっちはどうなの?」
リィン「あぁ、実は……」
リィンは状況を伝えた。
シズナ「……列車も駄目、バスも使えない……か、どうする?また強行突破する?」
リィン「いや……煌都を脱出するにはどうしても移動手段が必要だ。それに一々赤い星座を相手にしてたらきりが無い」
リィン達は頭を悩ましているとフローラが口を開いた。
フローラ「……一つ、移動手段があります。まだ試作段階ですが」
リィンとシズナは顔を見合わせ、フローラを見た。
―― 赤い星座仮拠点 ――
「……ランドルフとシャーリィの隊と連絡が取れないだと?」
煌都を出る主要幹線道路を押さえ、仮の拠点のテントで赤い髪の巨漢の男が胡乱な眼で報告してきた団員を見た。
「ハッ、ラングポートの港を抑えに行くと隊を動くと言われたきり……」
「ふむ……」
「黒月の連中と交戦状態に入ったのでしょうか?」
「……だとしてもだ。あの二人もプロだ連絡すら寄越さない理由がない、いや寄越す暇がない程の手練れとぶつかったのか?まぁ良い、誰か二人が向かった港まで伝令に行け」
「ハッ!すぐに……」
「報告します!」
伝令に走ろうとした男を押しのけ新たな団員がテントに入って来た。
「どうした?黒月がこっちにでも来たか?」
「いえ!車が一台、猛スピードでこちらに向かってきています。速度を考えると煌都を脱出するつもりかと……」
「ふむ?道路は我等赤い星座の車列で塞いでいたな?」
「ハッ!軍用トラックで塞いでおります」
「なら俺も見てみるか、もしかしたら黒月の幹部が脱出を試みてるのかも知れん」
男はそう言ってテントを出てトラックで構築したバリケードの脇に立った。
「目標はどうしてる?」
「それが……全く速度を落とす気配がありません。こちらの呼びかけにも答えません」
「フン……目標が見えたら一斉射撃をしろ!中にいる連中の生死は構うな!!」
『『『『Jawohl!!!』』』
「来ました!!」
団員がそう言うと確かにピックアップトラックが猛スピードで走ってきた。
「止まる気も無し……か、その選択女神の元で後悔するがいい……構え!!………撃てぇ!!」
男の号令の元赤い星座の一斉射撃が始まり、目標の車にも当たるが………
「ば、馬鹿な!銃弾を弾いてる!?」
団員の一人が驚愕した声をあげた。確かに車のボディには傷一つついておらず、フロントガラスすらヒビも入っていない。
「フ、強化装甲の類を装備した車か……だがそれだけで…ッ!?」
するとピックアップトラックの荷台から人が一人飛び跳ねて封鎖していたトラックの荷台に着地した。黒い髪をした子供が蒼い太刀を抜き、一振りするとトラックは真っ二つに割れた!
「なッ!?」
ピックアップトラックはその切り裂いたトラックの隙間を強引に突破した。
「………」
子供は一瞬男の方をチラッと一瞥すると直ぐにピックアップトラックに飛び乗って去って行った。
「……何者だ、奴は……」
男………シグムンド・オルランドはそう呟いた。