煌都から脱出したリィン達は暫く猛スピードで道路を走っていた。
リィン「……今のところ追っ手を差し向けてこないみたいだな」
荷台に座っているリィンは後方を睨みながら言った。
シズナ「やれやれ、結局は強行突破になったけど……この車、傷一つつかなかったけどコレも古代ゼムリア文明の技術かい?」
フローラ「えぇ、ベースはインゲルトのピックアップトラックですが中身を弄くりました。具体的にはエンジンとサスペンションを……後はボディを強化ゼムリア鋼に変えて軽さと頑丈さを成立させました」
フローラは運転しながら答えた。
シズナ「ふぅん、でもこんな車があったのなら最初から使えば良かったんじゃないのかい?」
フローラ「私はこうも言いましたよね?まだ試作段階だとも……碌なテストもしていない車両を段階をすっ飛ばしていきなり走らせたくなかったんですよ。こんな状況でなければ……ほら」
フローラがそう呟くと同時にエンジンの調子が悪くなり、道路の傍に寄せると完全に止まってしまった。
リィン「どうした?」
フローラ「申し訳ありません……どうやらエンジンの故障です。多分ここでは修理出来ないかと」
フローラはそう言って降りるとボンネットを開けた。
シズナ「あらら……ま、丁度良いかな?私はここで別れるよ」
シズナは助手席から降りて別れを告げた。
リィン「平気か?転移でアンファング経由でイーディスまで送る事も出来るが……」
シズナ「アハハ、平気だよ。歩き慣れてるし、迎えもくるからね。それに……仕事もあるからね」
リィン「そっか……色々手伝ってくれてありがとうな、シズナには色々助けられた」
そう言ってリィンは呟いた。
シズナ「アハハ、それを言うなら私の方こそ感謝しないといけないよ。リィンが来てくれなかったら暁鴉の暴走を抑えるのがもう少し遅くなっていたと思うし、それに……互いに『高み』に至るきっかけにもなったしね。だからお互いにありがとうかな?」
シズナはそう言ってリィンを抱きしめた。
シズナ「次に会う時までに一段と剣と女に磨きをかけるよ。リィンの妻として恥ずかしくない位にはね」
そしてシズナはリィンの唇にキスをした。
シズナ「じゃあ私は行くね。あ、そうだ……ねぇフローラ」
フローラ「はい?」
エンジンの修理を試みていたフローラは顔を上げた。そんな彼女にシズナは近づいて耳元で囁いた。
シズナ「フローラもちゃんとリィンに想い告げなよ?出自がどうのは気にしないさリィンなら」
フローラ「……感謝します」
シズナ「アハハ、じゃあ今度こそじゃあね」
シズナはそう言って去って行った。
リィン「……さて、フローラ。直せそうか?」
シズナの後ろ姿を見送ったリィンはフローラに車の状態を聞いた。
フローラ「駄目ですね。一旦アンファングに戻してオーバーホールしないといけないです」
リィン「そうか……じゃあ帰るかアンファングに、その後……リベールに戻るか」
そうしてリィン達は車をアンファングに送り、その足で首都イーディスに転移し空港でリベール行きのチケットと出国手続きを行いリベール行きの飛行船に搭乗しカルバートを後にした。
そして王都グランセルに着くとグランセル空港で入国手続きを行い、空港を出た。
リィン「漸くリベールに戻って来れた……」
フローラ「忙しく廻りましたからね。色々な意味で……これからどうしますか?」
リィン「そうだな……まずはリベール料理が食べたいかな、その後はホテルで休みたい」
「悪いが、休むのはもう少し後にしてくれんか?」
聴き慣れた声のする方向に視線を向けるとカシウス准将が此方に歩いてきた。
リィン「カシウス師兄……随分目と耳が速いですね。まだ帰って着たばかりなんですが……」
カシウス「何、シズナの奴から文が送られてきたんだ。アイツの用事が終わったから返すとか書かれていたがな……お前さんも随分経験を積んだ様だな?」
リィン「……えぇ、得難い経験でしたよ。それで師兄、俺に何をさせようと言うんです?」
カシウス「それなんだか……今すぐボースに飛んでくれないか?丁度エステル達が彼処で結社の足どりの調査の為に向かったんだ。でお前さんにも手伝って欲しいんだ」
リィン「エステル達が?……そういう事なら判りました。直ぐに向かいますよ」
カシウス「頼んだ……気をつけてくれ、《結社》は俺達が思っている以上にヤバい組織みたいだ……」
――― オマケ ―――
もしもヴァンがアンファングのピックアップトラックを見たら……
ヴァン「もしかして……ここなら俺の車も自由にカスタムし放題で出来る……?」
エレイン「正気に戻りなさい、この車オタク」
リゼット「流石に対価も無しに設備を使わせて欲しいはちょっと……」