閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第103話

「―――きて」

 

リィン(……誰だ?俺を呼ぶのは……)

 

「―――きて―――様」

 

リィン(君は……誰だい?)

 

「起きてください。リィン様」

 

リィン「―――んッ……」

 

「あ、良かった。気がつきましたね」

 

リィンが目を開けると見覚えのある顔が写った。

 

リィン「……ミズチ、か?」

 

ミズチ「はい、水の至宝のミズチです」

 

ミズチは嬉しげに答えた。

 

リィン「何で俺は君に膝枕されて……それに何で俺はアンファングにいるんだ?確か、アルセイユに……ってそうだ!あの古代種に……!」

 

リィンは慌てて起き上がろうとした

 

ミズチ「落ち着いて下さい。大丈夫です……順を追って説明しますね。まずはここはアンファングではありません。ここはリィン様の精神世界……夢の中みたいな所です」

 

ミズチは起き上がろうとしたリィンの頭を優しく手を添えて再び自分の膝に乗せた。

 

リィン「夢……?じゃあ、アルセイユに古代種が襲ってきたのも……」

 

ミズチ「いいえ、それは現実です。今リィン様の身体は私と私の聖獣……人魚達が保護しています。怪我一つしていませんので御安心下さい」

 

リィン「そうか……でもなんでミズチがここに居るの?」

 

ミズチ「お忘れですか?私は水の至宝……水がある場所なら何処だろうと移動できます。そして今現在起こっている出来事も把握しています」

 

リィン「なら尚更起きないと……状況はどうなってるんだ?アルセイユは?」

 

ミズチ「安心して下さい。リィン様がヴァレリア湖に落ちてからまだ数秒しか経っていません。あの空飛ぶ蜥蜴は散々艦隊を引っ掻き回した後何処かに去っていきました」

 

リィン「そうか……アルセイユは無事なんだな?」

 

ミズチ「はい、一隻も欠けていません。今はレグナードを捕まえる為に再編成してる所みたいです」

 

リィン「成る程……ありがとうミズチ、俺は戻るよ」

 

リィンは礼を言って今度こそ起き上がった。

 

ミズチ「……でしたらこれをお持ち下さい」

 

ミズチはそう言って自分の懐を探り一つのクオーツを取り出してリィンに手渡した。

 

リィン「これは……クオーツ?」

 

ミズチ「現在のオーブメントの規格に合わせた作った『水』のクオーツです。きっと貴方の役に立つでしょう」

 

リィン「……良いのかい?」

 

ミズチ「その為に作った物です。どうぞお使いください」

 

リィン「有り難く使わせて貰うよ」

 

リィンは受け取ったクオーツをポケットに入れた。

 

ミズチ「リィン様……どうかレグナードの事、宜しくお願い致します。あの様な同胞(はらから)の姿は見るに堪えません。このまま操られたままならいっその事――」

 

ミズチは両手を床につけて深々と頭を下げた。

 

リィン「大丈夫だ」

 

リィンはミズチの頭を撫でた。

 

ミズチ「リィン……様?」

 

リィン「必ず救い出す。だから待っていろ」

 

ミズチ「……ご武運を、吉報をお待ちしています」

 

次の瞬間リィンの視界は光に包まれ、再び目を開けたらそこは水の中だった。そしてその脇には人魚が居た。彼女はリィンが気がついたのを確認すると微笑んでからリィンの手を取り湖面に向かい上昇した。

 

リィン「プハァ!!アルセイユは!?」

 

リィンは顔が湖面に出るとすぐアルセイユを確認すると艦隊がレグナードに麻酔弾を撃ち込んでいるのが確認出来た。

 

リィン「始まったか……ありがとう、後は俺だけでも大丈夫だから……」

 

リィンは人魚に礼を言って帰る様に促した。人魚は笑顔で頷き手を振ってまた湖に潜っていった。

 

リィン「さて……泳ぐか」

 

リィンはそれを見送った後アルセイユの近くまで泳ごうとしたが……その前にレグナードに命中した麻酔弾が効いてきたのかまっすぐにヴァレリア湖に落下し、その衝撃で少し波立った。

 

リィン「わぷッ……!?とりあえず作戦は成功したのか……」

 

リィンはその波を頭から被ったが構わずに進もうとしたが一隻の警備艇がリィンの方に近づいてゆっくりと着水した。

 

『お〜い!大丈夫か〜!?』

 

王国軍兵士がスピーカーでリィンに呼びかけてきた。

 

リィン「はい!大丈夫です!!」

 

『なら良かった!今内火艇を降ろすから待ってろ!』

 

そう言われて待つ事数分で警備艇から内火艇が降ろされてリィンに向かってきた。

 

「掴まれるか?」

 

リィンの側まで来た内火艇から王国軍の兵士が手を差し伸べてきた。

 

リィン「はい、届きます!」

 

リィンもその兵士の差し伸べられた手を取った。

 

「よし!引き揚げるぞ。せ〜の!!」

 

リィンは王国軍兵士によって内火艇に引き揚げられた。

 

「大丈夫か?おい!誰かタオルを彼に……!」

 

王国軍兵士は慌てて持っていたタオルをリィンに渡した。

 

リィン「ありがとうございます。助かりました」

 

リィンもそのタオルを受け取り濡れた顔や頭を拭いた。

 

「いやぁ、驚いたよ。龍の捕獲作戦で待ち伏せてたらあの化け物が急降下してきたと思ったら、アルセイユから落ちた人が出たと通達が来たけど、正直あの高度で助かる確立は五分五分だったからな……良く五体満足でいられたな?」

 

リィン「ハハ……運が良かったんですよ。それよりレグ……龍の様子は?」

 

「うん?あぁご覧の通りよく眠っているよ。一発に魔獣数十匹を眠らせるだけの麻酔弾を叩き込んだんだ。当分起きないさ」

 

リィン「………」

 

「取り敢えず君をアルセイユに移送してくれと通達がきてるから良いかな?」

 

リィンは頷いた。

 

リィンを乗せた内火艇はレグナードの横に着水したアルセイユに横付けして降ろされたタラップを登ってリィンは再びアルセイユに乗り込んだ。そして前方デッキに通されるとモルガン将軍やユリア大尉、そしてエステル達が居た。

 

クローゼ「リィン……!良かった、無事で……!」

 

その中でクローゼが涙目になりながら駆け寄りリィンに抱きついた。

 

リィン「クローゼ……心配かけてごめん」

 

リィンも抱き締め、クローゼの髪を梳いた。

 

エステル「全く、驚いたわよ。突然古代種が現れて急降下したと思ったらフローラさんがリィンが落ちたなんて言われて、クローゼは泣きそうになったし、フローラさんも動揺してたから」

 

エステルに言われてシェラザードの後ろに控えていたフローラが前に出てきてリィンに頭を下げた。

 

フローラ「……申し訳ございません。この様な失態を犯してしまい、如何なる処分も受け入れる所存です」

 

リィン頭を振った。

 

リィン「誰のせいでもない。タイミングが悪かっただけだ」

 

モルガン「いや……儂が悪かったのだ。油断して頭上を警戒しなかったばかりにお主に迷惑をかけた……アレが《古代種》とやらなのか?」

 

リィン「はい、遥か古に栄えた古代生物です。現在の魔獣とはかなり違います」

 

モルガン「……そうか、龍を捕獲出来ても安心は出来んか……」

 

モルガンはチラッとレグナードの方に視線を向けた。

 

シェラザード「それで、この龍はどうするの?」

 

ユリア「警備艇数隻で吊り上げてレイストン要塞に曳航する。そこでこの龍を調べる予定だ」

 

オリビエ「ふむ……しかしあの男がいないね?何処に行ったのやら?」

 

ジン「レーヴェ……だったか?確かに居ないみたいだな?」

 

ドロシー「あれ〜?」

 

疑問に思っているとカメラマンのドロシーが何かに気づいた。

 

ナイアル「どうしたドロシー?」

 

ドロシー「あ〜〜いえ、何かこの子の額から目みたいなのが…」

 

『『『『………はっ???』』』』

 

その言葉を聞いた全員が一斉にレグナードに視線を向けた。同時にレグナードが目を覚まし、首を上げ火炎を上空に吐いた。

 

上空に居た警備艇は慌てて回避したため被害はなかったがその隙間からレグナードは飛び立ち再び逃走を開始した。

 

ユリア「ば……馬鹿な、あれだけの麻酔弾を受けて飛べるだとっ!?」

 

モルガン「おのれ……!逃がすか!!大尉!アルセイユ緊急浮遊だ!!龍を追跡する!!」

 

ユリア「ア、アイ・サー!」

 

それからアルセイユは追跡を開始したが振り切られてしまった……

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