「―――!!!」
エステル「おっと……」
龍――レグナートが雄叫びをあげると再度炎を吐き出したがエステル達は容易く躱した。そしてすぐ龍の懐に入り……
エステル「先手必勝!やあぁぁぁぁ!!」
エステルはそう言って龍の腹に棍の連撃を浴びせた。だが龍はたいしたダメージは入ってはいなかった。エステルはダメージが入って無いのを見ると龍の反撃が来る前に龍から距離を取った。
エステル「硬いわね、機関砲を弾く訳だわ……」
シェラザード「なら、アーツはどうかしらね!?エアリアル!!」
シェラザードが風属性の導力魔法を放ち龍は風の刃に当たるが……
シェラザード「効果は……いま一つのようね」
シェラザードの言う通り龍に大した傷は負ってはいない様だ。そして龍はお返しにとばかりに小さめな炎をシェラザードに向けて放った。
シェラザード「くっ!」
シェラザードはバックステップして炎を躱した。その横をフローラが駆けた。
フローラ「いい加減に……目を覚ましなさい!!」
「―――!!」
フローラは再度龍の頬を棍で殴り飛ばした。だが今度は龍の前足がフローラを捉えフローラは岩壁に叩きつけられた!
エステル「フローラさん!?」
シェラザード「フローラ!!ちょっと大丈夫!?」
エステル達が慌てて駆け寄ると瓦礫の中からフローラが出てきた。
フローラ「えぇ、大丈夫よ……」
フローラは服に付いた埃をはたき落とした。
エステル「ほ、良かった〜……でもアレだけ攻撃を喰らっても大して効いてないみたいね……」
エステルは平然としている龍を見て呟いた。
シェラザード「えぇ……無限の生命力……伝承の通りね」
アガット「……エステル、シェラザード、メイドの嬢ちゃん。一瞬でいいから隙を作ってくれねぇか?」
突如アガットからそう提案された。
エステル「へ……?」
シェラザード「何か策でもあるの?」
アガット「へっ、策って程のものじゃねぇ……兎に角時間を稼いでくれ!」
アガットはそう言って高台に登った。
エステル「あっ……!」
フローラ「そういう事ですか……!」
シェラザード「なら何が何でも隙を作らなきゃね!行くわよ二人共!!」
エステル達はそう言って龍に向かって行った。
龍は再度炎を吐き出そうとしたが……
フローラ「させないわ!」
フローラが懐から閃光弾を取り出し、龍の目の前で爆発させ視界を奪うと
エステル「今だ!!」
シェラザード「足を狙いなさい!」
エステルとシェラザードが龍の足を集中的に攻撃して遂にバランスを崩して倒れ込んだ。そしてアガットが高台からそれを確認してブレードを構え……
アガット「らあぁァぁぁぁぁ!!」
アガットは渾身の力を込めて龍の額に埋め込まれていたゴスペルを今度こそ叩き割った……
「―――!!!」
そして龍の絶叫が辺りに響き龍は倒れた。
エステル「やった……!」
シェラザード「ゴスペルが……壊れた」
フローラ「大丈夫ですか?」
エステル達はアガットに駆け寄った。
アガット「あぁ……大丈夫だ。どうやら……上手くいったみたいだな」
エステル「うんうん!大成功よ!」
シェラザード「ふふ、見せ場を持っていってくれたじゃない」
アガット「へへへ……龍もなんとか倒せたし、一件落着といった所か―――」
『―――見事だ―――』
エステル「………え………?」
シェラザード「い、今の声……」
アガット「ど、何処から聞こえてきた!?」
フローラ「………」
エステル達が狼狽えていた時、龍……レグナートが起き上がった。
『見事だ……人の子達よ。我が名は《レグナート》。この地に眠る竜の眷属だ』
エステル「あ………」
アガット「この声は……お前が喋ってるのか!?」
『否、私はお主らの様な発声器官を持っていない。故に『念話』という形で語らせてもらっている。お主らはそのまま声に出して語りかけるがいい』
アガット「そ、そうか……」
シェラザード「常識が崩れるわね……」
エステル「こ、言葉が通じるなら確認したいんだけど……もう、あたし達と戦うつもりは無いのよね?」
『うむ、あの機(はたらき)に操られていただけだからな。よくぞこの身を戒めから解き放ってくれた。礼を言わせて貰うぞ』
エステル「あ、あはは……どういたしまして」
アガット「ふん……礼はいい。俺達がここまできたのはてめぇを解放する為じゃねぇ。これ以上の被害を防ぐ為だ」
『……私が被害を与えてしまった街や村の事だな……意思を奪われていたとはいえ確かに私にも責任があるだろう。さて……どう償ったものか」
レグナートの表情は変わらないが声色からして責任を感じているらしい。
エステル「ま、まぁ元はと言えば《結社》が悪い訳なんだし、誠意さえちゃんと示せば許して貰えると思うわよ?」
『ふむ、誠意か……これで誠意を示せるかわからないが……受け取るがいい』
レグナートはそう言って念じると金色の光が現れてエステルとアガットの手に渡るとそれは金耀石の結晶だった。
エステル「これって……」
『私がつけた爪痕の償いだ。どうかそれを街や村に届けてもらえないか?』
エステル「あはは……うん。そういう事なら任せて、遊撃士として責任を持って届けるわ」
『うむ……フフ、それにしても懐かしい匂いだ。お主、《剣聖の娘》であろう?』
エステル「へ……?」
アガット「ちょっと待て、なんでおっさんの事知ってんだよ!?」
『二十年前、眠りにつく前の私の前に現れて武者修行だとか言って私に挑んだのだ。あ奴は息災か?』
エステル「う、うん……ピンピンしてるけど……まさか父さん竜まで知り合いだなんて……」
『フフフ……む?お主は……もしや……』
レグナートはフローラに視線を向けるとフローラは穏やかに笑って暗に黙ってて欲しいと告げた。
シェラザード「?どうしたの」
『いや……何でもない。それでは私はこれで失礼する』
レグナートはそう言って翼を広げた。
エステル「え、ちょ、ちょっとまだ聞きたい事が……」
『私を操ってた奴らの目的の事か?あ奴らは《輝く環》の《福音》としてな』
アガット「何だと……!?」
シェラザード「ねぇ、《輝く環》って一体何なの?貴方なら知っているんでしょ!?」
『………《輝く環》は無限の力と叡智と共に絶望を与える存在でもある。それを前にした時人は答えを出さなくてはならぬ』
フローラ「………」
エステル「へ………?」
シェラザード「それは……どういう意味かしら?」
『私が言えるのはここまでだ。これ以上の干渉は古の盟約によって禁じられている。さらばだ人の子達よ。お主達が『答え』を出した時私は再び前に現れるだろう』
そう言ってレグナートは飛び立っていった。