ジェニス王立学園に寝泊まりすることになってから三日、俺達三人は学園長の厚意により他の学生達と一緒に授業を受けながら学園祭の手伝いをこなしていた。
授業は流石名門校なだけでありレベルが高く為になるがエステルはやや苦戦しているがフローラの的確な教え方でついてきていた。フローラは臨時教師として教壇に立ち生徒に教鞭を執っていた。
その美しさに男女問わず見惚れる者が相次ぎ今では学園の人気教師の一人らしく噂だと告白も何回もされたらしい…断られているが…
フローラ「…導力革命において乗り物もその恩恵を受けました。リベールでは飛行船、帝国は列車、共和国は自動車と方向性は違えど此等の発明と進歩により物流が良くなり経済が活性化してきました…ではリベールの導力器の礎を築いた科学者は誰でしょう?…ではエステルさん答えてください」
エステル「ゑ…え、と確かA・ラッセルという名前だったかな?」
フローラ「はい正解です。因みにラッセル博士の他にエレボニア帝国のシュミット博士、カルバートのハミルトン博士この三名が最初のオーブメントを発明した故エプスタイン博士の弟子であり《三高弟》と呼ばれています。では次のページを…」
その時授業終了を知らせる鐘が鳴った
フローラ「では今日の授業は此処までです。学園祭の準備も忙しいでしょうが慌てず怪我の無いようにしましょう。クローゼさん号令を」
クローゼ「起立、礼」
フローラが教室を出ると一気にな騒がしくなる
エステル「はぁ〜疲れた〜」
クローゼ「クスクス、お疲れ様ですエステルさん」
ヨシュア「大分慣れて来たんじゃない勉強?」
エステル「冗談じゃないわよぅ〜今にも頭がパンクしそうよ。ねぇリィン、フローラさんって何処で学んでたの?メイドの枠超えてるわよ」
リィン「さぁ?俺だって彼女の全てを知ってる訳じゃないさ」
実際俺が知っている事は限られているしな…
ヨシュア「まぁ為になる授業じゃないか、さっきの話しにしても興味深かったし」
エステル「そりゃあ…そうだけどさ」
「ねぇねぇ、エステル!二階の廊下の飾り付け手伝って!」
そこにエステルと仲のいい女子生徒が手伝いを頼みに来た
エステル「あ、判ったー!すぐ行くー!じゃ私行ってくるねー」
そう言って元気良く走り出していった
ヨシュア「やれやれ、授業が終わって疲れたなんて言ってたのにね」
ヨシュアは苦笑しながらノートを机に仕舞った
リィン「それがエステルらしいとも言えるんじゃない?」
ヨシュア「ハハ、違いないね」
「おーい!ヨシュア!校庭で看板の色塗りしたいから手伝ってくれー!」
「うん、今行く、ごめん二人共また後で!」
今度はヨシュアと仲の良い男子生徒に頼まれ去って行った。教室に残っていたのは俺とクローゼだけになった…何気に二人だけなのは珍しいが
リィン「さて、俺はクラブハウスの方の手伝いに行くけどクローゼは?」
クローゼ「私はジルと少し詰める事があるから生徒会室に行くわ。どうせ同じ建物だし一緒に行きましょう?」
フローラ「おや?リィン様にクローゼさん丁度良かった。お二人に頼みたい事がありまして」
教室を出ようとしたら段ボールを二、三個重ねて持っていたフローラが入って来て頼み事をしてきた
リィン「頼みたい事?」
フローラ「はい、実は講堂の飾り付けが手を付けていないのでお二人に行ってもらいたいのです」
リィン「それは構わないが…俺はクラブハウスの手伝いがあるんだが?」
クローゼ「私もジルの打ち合わせがあるのですが…」
フローラ「そのジルさんからの要請だそうです。『こっちは大丈夫だから講堂の方お願い』とのことでした」
やれやれ…
リィン「解った講堂だな?今誰か居るのか?」
フローラ「いえ、今は講堂に人は居ないので私が集めて来ますのでお二人は先に始めてて下さい」
そう言ってフローラは出ていった
リィン「すっかり教師として定着したみたいだな」
クローゼ「他の先生方も評価が高いみたい、良く気が回るって褒めてたわ」
リィン「フローラは生徒受けも良いし、教師に転職しても良いかも知れないな」
クローゼ「あら?ならこのままジェニス王立学園に正式に編入する?歓迎するわよ」
リィン「魅力的なお誘いだけど俺も目的あるからなぁ、学園に留まる訳にはいかないな」
クローゼ「あら残念、せっかく一緒に勉学に励めるかと思ってたのに…」
リィン「クローゼみたいな娘にそう言われるのは嬉しいけどね、そろそろ講堂に行こう?」
先に出た俺はクローゼの呟きは聞こえていなかった
クローゼ「……本当、一緒に学生生活送れたら素敵だったのに…」
講堂に着くとまだ誰も居ない
クローゼ「まだ誰も来てないようね、先に始めましょう」
そうして俺達は先に飾り付けを始めた
クローゼ「…ねぇリィン?ルーアン離れたらどうするの?」
リィン「ん?ツァイスに行って其処での用も終わったらグランセルに向かう予定だよ」
クローゼ「そう…その後リベールに留まるの?」
リィン「いや…この国でやる事を終えたらクロスベルやエレボニアに行く予定だよ。良い国だから未練が残るかも」
俺は苦笑しながら言った
クローゼ「なら…」
リィン「だけど俺はやらなきゃならない事がある…言われたからではなく、誰かの都合だからでもなく俺の、大切な人達を守る為に」
クローゼ「……その大切な人達に私も含まれてる?」
リィン「ん、勿論だ」
クローゼ「……リィン、私があげた黒ハヤブサの懐中時計ある?」
リィン「うん?勿論懐に大切に持ってるよ」
クローゼ「リベールの国鳥が白ハヤブサなのは知っての通りだけど黒ハヤブサも特別な意味があるの」
リィン「特別な意味?」
クローゼ「そう、これは今では知る人は少ないけど」
ー その昔、何代前のリベール王が狩りをしていたときお供と離れ離れになり困り果てた王の前に黒ハヤブサを従えた美しい女性が現れたの、その人は言ったの『この先に私の住む家があります。粗末ですが御休みなされてはいかがでしょう…』王はその言葉に甘え彼女の家に休ませてもらい無事に城に帰る事が出来たの、そして王はその女性を忘れられず彼女を妃として迎え入れたの。そして彼女に従っていた黒ハヤブサは二人を祝福するかのように宝石を咥え二人の前に置いたの ー
クローゼ「だから昔は黒ハヤブサの象った物を送るのは『貴方が好きです』のプロポーズの意味なのよ」
リィン「へぇ~………ん?…つまりその」
クローゼが脚立から降りてこっちに近付いて来た
クローゼ「そうよ、私クローゼ・リンッ…いいえクローディア・フォン・アウスレーゼはリィン、貴方の事が好きです」
そう言って彼女は俺の唇にキスをした…