翌日俺は《釣り》をしていた。この空中都市は《釣り堀》が設置していて市民の憩いの場も兼ねていたらしい、いまもその機能は喪ってはないらしく定期的に下の海から捕獲して放したり増え過ぎたら放流しているらしい。
リィン「お、カルプが釣れた…さっきはレッドパーチ釣れたし入れ食いだな?しかし、食えるのかな?一応ゲームでは食える種もいる描写もあったから食えるとおもうけど…」
食料確保の為とはいえ見たこともない魚(厳密にいえばこの身体の本来の主は違うだろうが…)を食べるのは勇気がいる物である。因みにその他に野菜工場、培養肉工場(海中のプランクトンを肉に加工したものらしい鶏肉、豚肉、牛肉何でもござれ)もありいずれも稼働できるらしい…凄えな古代ゼムリア文明?
リィン「まぁ住める事になったのは正直ラッキーだった、話しの分かるコンピューターで良かったよ…」
ー9時間前ー
リィン「…今俺の知識で言えるのはこれだけです」
俺は虫食いの記憶を頼りに古代ゼムリア文明は既に滅び、人々は地上に降りそれぞれ国を作り時に対立しながらも繁栄していること、今はアーティファクトと呼ばれる古代の遺物しか当時の面影を知る術がないことを伝えた…
〘ソウカ…ヤハリ《輝く環》ハ人々ノタメニハナラナカッタカ…〙
コンピューターはどこか寂しそうにそう呟いた、その姿は人間臭く声だけだったら本当に人だと思ってしまう程だった。
リィン「済まないが《輝く環》とは一体何の事なんだろうか?(一応知ってるけど実物知ってる人?から聞きたいしなにより…)そして何故此処は放棄されてしまったんだ?」
〘……ソウダナ、イマサラ隠ス必要ナドナイカ…ソモソモ《輝く環》トハ…〙
コンピューターの回答は原作と大体同じであった曰く、奇蹟の力により人間の願望を無限に叶えることができるが、意思を持たず抑制は利かなかったため、浮遊都市《リベル=アーク》の中枢として住人たちの願いを叶え続け、結果として《リベル=アーク》に住む人間たちを肉体的にも精神的にも堕落させてしまった。曰く、この《都市》は《リベル=アーク》を建造する為だけに実験的に造り人が住める為に何が必要かを検証した後《リベル=アーク》を建造する物資集積基地としての役割を与えられたらしく、此処で《輝く環》も作り《リベル=アーク》に運んだとのことだった。
その後《リベル=アーク》が完成後はここは引き払われそのまま忘れ去られたまま彷徨い続けていたとのことだ。俺が見つけた転移装置は地上から建材を運ぶ為の物だったのでは無いかとはコンピューターの見解だった。《輝く環》の危険性についてはある程度データ・リンクで把握していたらしく警告も送っていたみたいだか大多数の人は《輝く環》を欲したため無視されたため以後コンピューターは今の今まで眠っていたらしい。
リィン「なんともまぁ、大変だったんだなとしか言えませんね…人の願望を叶える…そんなご都合主義の様な代物を作り出す古代人の技術は凄いがその技術で自らの首を絞めるとは…」
〘ジッサイ『願い』ヲカナエタモノタチハニドトモドッテコナカッタ…〘セレスト〙達ゴク少数派以外ハ《輝く環》ニトリツカレテイタ…ワタシハソレニ絶望シ、ネムリニツイタノダ…〙
本当にため息出そうなコンピューターの言葉に俺は同情を禁じ得なかった。
〘ハナシハカワルガ、キミハドウスルツモリダ?〙
リィン「あ〜出来れば少しの間滞在させて貰えませんか?食糧や装備を整えたら出て行きますし、ここの事は誰にも言いませんよ」
〘……モシヨケレバ此処ニ住ンデモイイヨ〙
その予想外の言葉に驚きつつ俺は尋ねた
リィン「ありがたい話しだけどなんで?…正直自分でも怪しいと思うんだけど?」
〘スコシハナシタダケド、キミハシンヨウデキルトハンダンシタヨ、ソレニ……ショウジキサビシイシ、ハナシアイテガホシイ〙
リィン「……」
余りに切実な願いに涙を禁じ得なかった。
〘モチロンキミニメリットモアルヨ、此処ノ施設ヲ自由ニツカッテモラッテモカマワナイ。モハヤセイトウナ所有者ハイナイカラキミノモノダ〙
リィン「貰いすぎなような気がするけど…せめて何かして欲しい事ないかい?」
〘ソレジャア…ナマエ、ワタシノナマエトコノ都市ノナマエヲキメテホシイ〙
リィン「そんな事でいいのかい?」
〘モウマエノナマエハイミナイシ、アタラシイナマエヲモラッテイマノゼムリア大陸ヲミテミタイ〙
俺の問いにコンピューターは寧ろ名付けて欲しい言ってきた。
リィン「分かった…それじゃあ君の名前……うん、決めた君の名前はー」
ー回想終了ー
リィン「あの後から周りが忙しくなったんだよなぁ、今も蜘蛛型の人形兵器動き回って瓦礫やらを撤去してるし…あ、飲み物?ありがとう」
俺は蜘蛛型から飲み物を受け取り、口をつけながら忙しなく動き回る蜘蛛を見てやや後ろめたい感じがした。
リィン「本当に手伝わなくてもいいのかなぁ?俺も此処に住むんだから…」
????「貴方は5歳なんですからそんな事は気にしないでください。使える物が有れば使う位で丁度良いんです。」
俺のボヤきに後ろから十代後半から二十代前半、紅い瞳の美しい女性が現れた。長い銀髪をポニーテールにしてメイド服を着こなしていた。
リィン「あぁ、ありがとう《フローラ》新しい名前はどう?気にいったかな?」
フローラ「はい、とても気に入りました。そしてコンピューターの私に動き回れる身体の作成の許可を下さりありがとう御座います」
そう、この《フローラ》はあのコンピューターが動き回る為に蜘蛛型に命じて残骸から組み上げた身体らしい。ほとんど生身に近い感触で手を触らせてもらったがとても中身が機械とは思えない位だった。
リィン「そんなのは良いさ、君の当然の権利だよこれから世話になるんだから」
フローラ「はい、所で都市の名称の方は…?」
リィン「うん、決まったよ…この都市の名前は……『アンファング』…始まりの意味でこれからここで俺と君の旅が始まる事を意識してみたんだ…どうかな?」
流石に小っ恥ずかしくなって頭を搔いて彼女の回答を待っていた
フローラ「…『アンファング』良いでは有りませんか、ならば私も…私フローラ・クリストはリィン様と『アンファング』を生涯かけてお仕えすることをここに誓います。」
見事なカーテシーを披露してフローラはそう宣言した。
リィン「此方こそ宜しくフローラ」
そうしてリィンの軌跡の一歩がここから始まりを迎えた…