ー ジェニス王立学園祭前日 ー
エステル「遂に明日か〜長い様で短い様な一週間だったわね〜」
講堂で演劇の最後の練習を終えたエステルがそんな事を言った。
ジル「お疲れ様〜でも、明日が本番だからね。明日に備えてゆっくり休んでね」
エステル「りょ〜かい、でもこの衣装は文句ないけど時代設定が百年前だからてっきり鎧を着るかと思ってたわ」
エステルは自身が着ている紅い軍服風の服を見ながら呟いた
ジル「鎧は流石に重いからね〜、現在の王室親衛隊の制服をアレンジすることで落ち着いたのよ」
クローゼ「因みに私が演じる《蒼の騎士オスカー》とエステルさんが演じる《紅の騎士ユリウス》の服の色が違うのはそれぞれの勢力の色なんです。蒼の騎士オスカーは平民側だから蒼、紅の騎士ユリウスは貴族派だから紅といった具合ですね」
エステル「へ〜そうなんだ、でもやっぱりクローゼって剣捌き上手いよね?私は普段剣は使わない事を抜きにしても見事だわ」
クローゼ「フフフ、有難う御座います。クラブ活動で剣を握ってますし、此処に来る前にも教えてもらってましたから、そう言うエステルさんこそ見事な太刀筋でしたよ。とても棒術がメインとはだとは思えませんでしたよ」
エステル「うん、それは――」
ヨシュア「エステルは父さんの妹弟子にも稽古つけてもらってたからね」
そう言ってヨシュアはセシリア姫の格好で出てきた
「「………」」
ヨシュアの格好が余りにも似合い過ぎて二人は絶句した。
ヨシュア「……頼むから何か言って…」
エステル「いや〜、何て言うか…」
クローゼ「えぇ、正直似合い過ぎて何も知らなければ同性と言われても違和感無いというか…」
二人は女として複雑な気分になった。
ジル「うんうん、これで劇は盛り上がるわね!」
ハンス「俺も思わずナンパしそうになったからな、自信持って良いぜ!」
ヨシュア「…全然嬉しくない感想ありがとう…ところでリィンは?」
ジル「リィンならフローラさんと一緒に校門の最後の飾り付け
に行ってるわ、もうすぐ終わると思うけど…あ、来たみたいね」
リィン「只今戻りました」
クローゼ「あ、リィンお疲れ様、終わった?」
リィン「うん、これで全て終わったよ。後は明日の本番を迎えるだけだ」
「「………」」
二人の距離に違和感を覚えたエステルとジルは声を潜めながら話した。
エステル(…ねぇジル?何かリィンとクローゼの距離近くない?)
ジル(あ、やっぱりそう思う?物理的にもそうだけど何と言うか、精神的にも距離が縮まってるわね)
エステル(やっぱりアレかな?)
ジル(アレでしょ…ズバリどっちかが告白したとか♥)
エステル(うわ…どっちだろう////)
ジル(そんなのは後でクローゼに問い詰めれば良いわよ。まぁ百%クローゼからだと思うけど)
ヨシュア「エステルとジル何を話してるんだろう?」
ハンス「止めとけヨシュア、あの手の女子の会話に男子が入る余地なんて無い…それにしてもリィン羨ましいぜ」
嬉々とした女子二人の会話に首を傾げるヨシュアをハンスは諌める。
クローゼ「そういえばリィン、フローラさんは?一緒じゃなかったの?」
リィン「あぁフローラなら飲み物貰いに食堂に…」
フローラ「お疲れ様です皆様、ホットココアを貰って来たのでどうぞ」
エステル「わ!フローラさんありがとうございます」
ジル「助かります。丁度喉が乾いていましたので」
ヨシュア「でも良いのですか?一部生徒に依怙贔屓みたいに…」
フローラ「ご心配なく、既に学園の全生徒と教職員には配布済みです。貴方方が最後ですので遠慮なくどうぞ」
ハンス「……流石フローラ先生(汗)」
フローラ「リィン様、クローゼさんもどうぞ」
リィン「ありがとうそういえばフローラ、招待状の方はどうなってる?」
フローラ「ボース市長やルーアン市長始めとした各方面の招待状は既に送付済みです。無論テレサ院長達マノリア孤児院にも送りました」
エステル「そっか…じゃあ後は明日何が何でも成功させなきゃね!」
ジル「という理由だから明日はがんばろー!えいえい、おー!」
エステル「おー!」
ヨシュア「エステル、ノリノリだね…」
ハンス「ま、良いんじゃね?楽しんだ者勝ちってな」
ヨシュア「まぁ良いけど…じゃあこれからご飯食べに行こう」
そう言って講堂を出ようとしたヨシュアにフローラが声をかけた。
フローラ「あ、待って下さい。ヨシュアさん」
ヨシュア「?まだ何か有りましたか?」
フローラ「………いえ、衣装…着替えなくて良いんですか?」
ヨシュア「…………あ(汗)…………」
…本人ですらすっかり忘れていた様だ…
ー ジェニス王立学園 正面玄関前ベンチ ー
リィン「ふぅ…満腹だ…やっぱり学食は美味いからつい食べ過ぎてしまう」
リィンは皆と食堂で食事を終えた後別れてこのベンチで一休みしていた。
リィン「……此処は本当に居心地が良い…たった一週間、なのに一年過ごしたかの様に感じてしまう」
クローゼ「なら本当に編入する?」
女子寮の方からクローゼが近付いて来た
クローゼ「こんばんわ、さっきぶりね。隣、良いかしら?」
リィン「どうぞ、君を拒む理由はないよ」
クローゼ「フフ、ありがとう…」
隣にクローゼが座ってきた
リィン「どうしたの?こんな時間に…てっきり寮に戻ったかと思ってたけど…?」
クローゼ「大した事じゃないわ、ジルとエステルさんにリィンにどう告白したか追求されそうになったから逃げてきたら貴方を見つけただけ」
リィン「………俺喋ってないけど…?」
クローゼ「女の子はそういうのは敏感よ、特に他人の色恋沙汰の話しは女子は大好きだから聞きたがる物よ。覚えておいて」
リィン「ハハ……クローゼもそういう話しは好きなんだ?」
クローゼ「当然よ、だって誰かを好きになる話しは素敵だもの…まぁ私が当事者になるとは思わなかったけど、人を好きになるって家族以外でこんな気分になるなんて初めて」
リィン「…家族…か…」
父オズボーンは今どうしてるだろうか?…もし《呪い》が無かったら両親と今も帝国で幸せに暮らしていただろう。だがそれはクローゼに出会わなかったに違いない
リィン「ままならない物だよ全く…」
クローゼ「リィン?」
リィン「いや…何でもないよ」
クローゼ「………ねぇリィン……」
リィン「…ん……?……っ!?」
クローゼの頭がリィンの肩に寄りかかり彼女の良い匂いが鼻腔を擽る
クローゼ「前にリィン言ってたよね?自分にはやるべき事が有るって…」
リィン「……うん……」
クローゼ「それはどうしてもリィンがしなくてはいけないの?他人に任せる事は出来ないの?貴方がそんな事をする必要は無いんじゃ無いの?」
…それは何度も思った事でもあった…自分が体を張る必要があるのか?この世界は遊戯(ゲーム)ではなく紛れもない現実であると…主人公などこの世界には居ない、リィン(自分)が居れば何とかなる等自惚れではないかと…でも、それでも…
リィン「……ごめん、これはどうしても必要なんだ。大切な物を守る為には抗いたいんだ」
世界の人々を守る為等と自惚れた事は言わない、俺は、俺の身近な人を守りたい。これまで関わってきた人々、父オズボーン、エステル、ヨシュア、シズナさん、リーシャ、フローラ、そして…
リィン「クローゼ、君を守りたい…愛してる君を」
クローゼ「…………リィン目を閉じて……」
リィン「…え?どうして?…」
クローゼ「良いから早く…!」
リィン「わ、分かった…これで良い…ムグゥ!?」
言われた通り目を閉じるとクローゼの唇の感触が…
クローゼ「…全て納得したわけじゃないけど今はこれで良いわ/////………でも絶対何時か話してね!そして無事に戻って来てよ、貴方の事をお祖母様や伯父様やユリアさんに紹介したいんだから!勿論フローラさんも一緒にね!」
リィン「…リベール王家との対面か…それは大切な跡取り孫娘に纏わり付く虫みたいに思われそうだな?」
クローゼ「大丈夫よ、皆ちゃんと話聞いてくれるわ」
リィン「ならまずは明日の学園祭を成功させなきゃな」
クローゼ「うん……!」
そして何方ともなく口づけを交わした…
次回学園祭に入ります。予想外の人物が出るかも?