閃の軌跡〜変わる物語〜   作:名無し名人

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第六十三話

エルモ村はツァイスから見て南に位置する温泉を有する村である。何時もなら硫黄の匂いがするそうだが…

 

リィン「硫黄の匂いが薄いですね…」

 

シズナ「それに湯気も出て無いしどうしたのかな?」

 

其処に事情を聞きに行ったフローラが戻って来た

 

フローラ「どうやら源泉を汲み上げるポンプが故障したようです。今ツァイスから技師を呼んだそうなので復旧は出来るみたいですが…」

 

シズナ「あらら、折角温泉にありつけるかと思ってたのに」

 

リィン「シズナさん…本来の目的忘れた訳じゃないですよね?」

 

リィンのジト目に涼しい顔で

 

シズナ「アハハハハ!勿論忘れてないさ、さっさと仕事終わらせて一風呂浴びたいしね。君は温泉に興味無いかい?」

 

リィン「無いとは言いませんが……で?ターゲットは何処に居るんですか?」

 

シズナ「あぁ…それならウチの〘草〙がそろそろ報告来ると…あ、丁度良く来た」

 

地元の人間らしき男性がこちらにに近づいて来た

 

「こんにちは、『バーゼルから来たのですか?』」

 

シズナ「いや、『龍來(ロンライ)から来たよ』」

 

「お待ちしおりました姫様、目標はこの紙に書いた所に…」

 

さっきまでの笑顔を消し懐から紙を取り出しシズナに手渡す

 

シズナ「ご苦労さま、標的の様子は?」

 

「ハッ…息を潜め怯えております。ここ二〜三日は外にも出ない有り様です。ところでそちらの御仁は……?」

 

シズナ「彼は私の弟弟子だよ。今回の件で手伝って貰う積りだから其処は承知しといて…不満かい?」

 

「いえ、姫様のお決めになった事なら…」

 

シズナ「なら良い、下がって良いよ」

 

男は一礼し音無く去っていった

 

リィン「……斑鳩の者ですか…」

 

シズナ「うん、斑鳩(ウチ)はこういうのも得意でね。他の猟兵団では真似出来無い特色だと自負してるよ」

 

シズナは自慢気に胸を張って渡された紙の内容を確認した

 

リィン「で、何と書いてるんですか?」

 

シズナ「この村外れの空き家に潜んで居るみたいだね。あ、因みにこれが標的の顔写真ね」

 

シズナから渡された写真を見て第一印象は如何にも技術者らしい体格の男が写ってた

 

リィン「……シズナさん、これは本当にSSS級猟兵団が出張る程の依頼ですか?」

 

シズナ「おや?新型艦のスペックを書いた資料の奪還…充分過ぎると思うけど?」

 

リィン「投入する戦力と対象の戦闘力に開きが大き過ぎると思いますが?対象は武術を修めてるのですか?」

 

シズナ「いいや?調べた限り武術のぶの字も関わり無いね」

 

リィン「なら余計に過剰でしょう、さっきの彼も一般人を制圧出来る位の力はあるのでしょう?……何か他の目的があるのでは?」

 

シズナ「……さてね?仮に有ったとしても事実として機密文書の奪還は本物だからね。リィンは奪還に協力してくれれば良いからね」

 

そう言ってシズナは先に歩き始めた…

 

フローラ「宜しいのですか…?何か隠してますよ。彼女?」

 

黙っていたフローラが近づき耳元に囁いた

 

リィン「…思うとこはあるけどね、大体は想像出来る。それよりも一刻も早く対象を捕縛するぞ万が一帝國に亡命等されたら冗談抜きで戦争になりかねん」

 

フローラ「承知しました」

 

そうしてリィンもフローラもシズナの後を追いかけた

 

シズナ「彼処が奴が隠れてる空き家だよ」

 

リィン「空き家の割には手入れが行き届いてますね?」

 

綺麗というか今にも人が住めそうな…

 

シズナ「つい最近までお婆さんが一人で暮らしてたみたいだよ?歳とって心配になった王都に住んでいる息子夫婦の勧めで王都に移り住んだから家財は最低限残っている筈だよ」

 

リィン「なるほど…」

 

フローラ「……確かに人の気配がしますね、どうしますか?グレネードで吹き飛ばしますか?」

 

リィン「やめろ書類ごと木っ端微塵にするつもりか、それに村の人達に迷惑だろうが」

 

シズナ「ま、正面から行こうか、どうせもう逃げられないし」

 

そう言ってシズナは玄関に立った

 

リィン「鍵はあるんですか?」

 

シズナ「無いけれど斬れば問題無いね」

 

シズナは居合いの構えをとり素早く扉を真っ二つに斬った

 

リィン「強引ですね」

 

シズナ「後で部下達に修理させるさ、いいからさっさと終わらせて温泉に入ろうよ」

 

そう言って中に入っていったが中は椅子やテーブル、中身のない本棚があるだけだったが

 

「な、なんだね!君達は⁉人の家に勝手に入って…」

 

写真に写ってた男が部屋の角に怯えながら此方に銃を構えてた。その手には書類が入ってると思しき鞄を抱えながら…

 

シズナ「人の家って…此処は空き家でしょうに、勝手に住み着いた人間に言われたく無いなぁ…」

 

リィン「その鞄を渡して下さい。今なら手荒な真似をしません」

 

「なに…!君達は共和国の回し者か…!?糞!話が違うじゃないか…」

 

リィン「話が違う……?」

 

フローラ「兎も角大人しく持ち出した物を返して投降しなさい。これ以上罪を重ねるのは貴方にとっても不利益ですよ」

 

「ふ、巫山戯るな!私は何も悪くない!悪いのは現場を見ないお偉方だ!開発に時間とコストがかかるのは当たり前なのに無駄な金を削れ、安く仕上げろ、引いた設計図も碌に見ないで毎回やり直しを命じる上司のところなんてもう働きたくもない!」

 

「「……(汗)」」

 

 

フローラ「リィン様これは……」

 

リィン「所謂パワハラというヤツだな…確かに可哀想だが…」

 

シズナ「ま、私達は依頼されただけだしね…その手の文句は共和国の役人に言いなよ。さっさと投降して盗んだ機密文書を返しなよ」

 

シズナは太刀の切っ先を男に向け降伏を勧告した

 

「嫌だ!!誰が好き好んで捕まるか!」

 

男が銃を発砲しょうとしたが…

 

フローラ「だから悪足掻きは…!」

 

リィン「止めろと言ってるだろうが!」

 

「ガッ!?」

 

フローラが素早く男の銃を叩き落としリィンが男の懐に入り顎を蹴り上げた。

 

男は宙を舞い床に叩きつけられ気絶した

 

シズナ「お見事、二人共息ぴったりだねぇ…私は楽出来て助かったよ…うん、間違い無い目的のモノだ」

 

シズナは男が持っていた鞄を回収し中身を確認した

 

フローラ「どうしますか?一応拘束しましたが…」

 

シズナ「あぁ、大丈夫人手はあるからね…居るんでしょ『クロガネ』」

 

 

「お呼びになりましたか、姫?」

 

拘束した男を一瞥して何処からともなく自身の配下を呼び出すシズナ

 

その男は黒装束に仮面を纏い表情が伺い知れないがかなりの実力者だろう…

 

シズナ「悪いけどこの男を連れて一足先にクライアントに引き渡してくれないかな?」

 

シズナは拘束したまま気絶している男の首根っこを掴んでクロガネとやらに渡す

 

クロガネ「承知しました…姫はどうなさるので?」

 

シズナ「私は弟弟子達とエルモ村の温泉に入りたいから宜しく〜」

 

クロガネ「……余り御迷惑をお掛けにならぬように、リィン殿申し訳ない姫様にもう少し付き合ってくだされ。姫様は少々…いや、かなりの温泉好きでしてな。こうなったら意地でも入りたがるので…」

 

リィン「はは…本人もそう言ってましたが、そこまでですか…」

 

シズナ「ちょっと、クロガネ!!別に良いじゃないか温泉位…」

 

クロガネ「っと、では拙者はこれで失礼致す」

 

そう言ってクロガネは姿を消した

 

シズナ「全く…まぁ良いやリィン、宿に行こう。温泉、温泉♫」

 

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