シャドウガーデンと共に楽しい日々を   作:陰の実力者になれんかった

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 どうもこんばんは。
 最近体調を崩して寝込んでいましたが、私はそこそこ元気です。

 さて、この度は重大発表があります。それは……本編の後で。

それでは本編どうぞ


魔力は奥が深いんです

 シャドウガーデン設立から3年ほど経ったある日。パレイド家での本日分の教育を終わらせ、昼は睡眠をとり夜に備えようかとしていた時。

 

 私もシドと同じように超ショートスリーパー化しており、極短時間の睡眠で事足りるので早めに寝ておけば向こうに時間を回せるだろうと考えていた。

 

 その時、ふと窓の外にとある影が見えた。あの影、気配や魔力の波長的に彼女だろう。どうやら屋敷内に変装して入ってくることは出来なかったらしい。

 

 しかし、ヒント無しでここにたどり着けたことを賞賛すべきだろう。私は表の自分の話をほとんどしておらず、家名すら伝えていなかった。

 

 そんな中私の居場所を突き止めたのは素晴らしい成果だ。どんな方法をとったのか、すぐには思い浮かばない。是非とも聞きたいものだ。

 

「……イプシロンか」

 

「はい、ゼロ様」

 

 周囲に人の気配がしないことを確認してから、窓の外の人物に話しかけると、呼びかけ通り、イプシロンが音もなく入ってきた。

 

 イプシロンは現在のメンバーの中で最も魔力制御に長け、将来的に『緻密』の2つ名を付けられるほどの腕前になる。理由はともかく、その魔力操作は私やシドに追いすがるほどだ。

 

「火急の用か」

 

「はい。シャドウ様の姉、クレアがディアボロス教団の者、それも幹部クラスに拐われました」

 

 そうか。ついにこの日がやって来たか。シドの姉であるクレアの救出作戦兼、ディアボロス教団支部の壊滅作戦。

 

 シャドウガーデンがディアボロス教団と本格的に対峙し始める時である。

 

「なるほど、詳細は」

 

「深夜頃にカゲノー男爵家へ潜入、就寝中のクレアを何らかの薬を用いて更に深い睡眠へ。その状態で密かに教団の支部へ運ばれたとのこと」

 

「他の面々は」

 

「アルファ様中心となり痕跡を辿っています。ベータはシャドウ様に報告を。残りの面々は各自情報の分析や足取りを追っています」

 

 ふむ。ということはクレアはまだ生きているのだろう。私としてはまだ問題なく進んでいる。流石に死んでしまっていては今からでは間に合わないから助かった。

 

「また、教団のアジトについて候補は幾つかあるものの、まだ絞り込みきれていません」

 

「……検討はついている。だが、シャドウがお前たちを導くだろう。ベータからの報告を待て」

 

 おそらくはシドのズレたナイフが正解を指し示している頃合い。そうなればベータはブラフを見破り答えを導き出すはず。

 

「は、ではそのようにします」

 

「それでいい、が……緊張しているな」

 

 魔力の波長だったり、声の固さだったり、判断材料は多分にあるが、何より動きが妙に固まっている。

 

「わかって、しまいますか」

 

「当然だ。それで、やはり不安か?」

 

「いえ、不安は……多少はありますが、そうですね」

 

 そう言って口を噤むイプシロン。どこかソワソワした様子で手が行ったり来たりしている。何やら様子がおかしい。

 

「……イプシロン?」

 

「ええと、その、いざシャドウ様やゼロ様と共に戦う事になると思うと、緊張してしまいます」

 

 なんだ、そんなことか。と一蹴してしまえれば楽だろうが、下手に悪いコンディションでいられてもそれはそれで何かイレギュラーになり得る。

 

 イプシロンは自信家な部分があるから平気だと思っていたが……実は武者震いとかいうオチだと助かるが。

 

「そうか。では、そうだな……魔力操作について少し稽古をしようか。いつもしていることだし、緊張も解れるだろう」

 

「!! はい、ありがとうございます」

 

 随分と過剰な反応に見えるが、彼女にとって魔力操作とはそれだけ重要なものなのである。そう、彼女にとっては……。

 

「まず、イプシロンは魔力操作の基本はマスターしていると言っても過言では無い。最近の課題ではアルファと同じレベルでこなせていたからな」

 

「ありがとうございます。練習の成果が出ているようで良かったです」

 

 ホッとしたように息をつくイプシロン。実力が上がっていることが嬉しいのだろう。きっと。おそらく。

 

「では今回は魔力操作の応用の一つ、魔力の飛刃について少し話すとしようか。既にイプシロンは形は出来ていたな」

 

 魔力の飛刃というのは、私が勝手につけた名前であり、深い意味はない。

 

「はい。なんとか剣を振るうと同時に魔力を飛ばすことは出来ました。ですが」

 

「斬ることができない、か」

 

「はい。ゼロ様のように物体を斬ることができないんです。魔力自体であれば、揺らがせることは出来ましたが……」

 

 魔力で斬る。言葉にすれば単純だが、実行するのは難しいなんてものでは無い。

 

 魔力というものは纏わせる事が基本。この世界においてその大前提は何年経っても変わらず、その前提を大きく外れるような技術はほぼ存在しない。

 

 理由としては魔力操作の難しさが筆頭に挙げられる。魔力は自身の体から離れれば離れるほど操作が難しくなる。10mも離れれば操作出来ない人などざらにいる。というより、それが普通だ。魔力の遠隔操作とはそれほどのもの。

 

 そんな中、魔力を使って外部で塊を構築し、その形を保ったまま一定以上の速度で飛ばし、相手に当てる。それらは全て、どれかひとつでも出来れば注目を集めることが可能なレベルのもの。

 

 それを出来るのがイプシロンという、魔力操作においてシャドウガーデンの中で随一の精度を誇る者だ。

 

「試しに窓の外へ向けてやってみてくれ」

 

「わかりました……ハァッ!」

 

 イプシロンが剣に魔力を纏わせ、溜めた後、振るって魔力を飛ばす。

 

 形はなんとか保っているものの、まだガンマでも簡単に避けられる速度だ。それに、飛ばすことに意識を割きすぎているのか魔力自体が不安定。そのせいで飛ぶ距離もなんとも伸びきっていない。飛ばす距離はある程度あればそこまで問題では無いが。

 

「そうだな……もう一度、今度は魔力を空中に圧縮してみてくれ。魔力量は自由でいい。形は……始めは直線に、5秒保ってから曲げて剣の軌道と同じ形に変形。変形後、魔力の使用量を7秒間2倍に、その後元の量に戻せ」

 

「はい……これでどうですか」

 

 そうして出来たのは、空中に留まる弧を描く魔力の塊。

 

 先程よりも形は綺麗になっていて魔力自体は安定している。自分の得意な魔力量ということも影響しているかもしれない。一度増大させてから元に戻すことも出来ているし、静止状態であればほぼ完璧だ。

 

「形と圧縮率については問題無いし、基礎は出来ている。剣に纏わせる時も特段問題はなかった。飛ばすスピードが足りないのかもしれんな」

 

「やはり 飛ばすスピードですか。でも形を維持したままスピードを上げるとなると、難易度が跳ね上がりませんか?」

 

 形を維持したままスピードを上げる、というのは本当に難易度が跳ね上がる。一定の圧力を常にかけ続けなければ形は維持出来ないが、その上に推進力もいれるとなると、それに必要なコントロール力は計り知れないほどになる。

 

 手先が器用程度では真似出来ないほどの妙技。ただでさえやりにくい魔力の遠隔操作、それに複合的な動作が加わると、とてつもない集中力を要する。正直な話、効率的では無いだろう。

 

 だがこれにはこれなりの使い方がある。小手先の技術と言われるかもしれないが、技として完成させれば強力な武器になる。

 

 ゆくゆくは剣を必要とせず、自由自在に出すことが出来るまで熟達させたい所だ。

 

「まあそうだな。だが、やるだけの価値があることはわかっているのだろう? 今はとりあえずそれでいいだろう。スピードに関してもっとしっかり稽古をつけたい所だが、時間がないな」

 

 イプシロンが来てから既に十数分経っている。クレアの件があるし、これ以上は時間を浪費する訳にはいかない。

 

「本当だ……すみません、ゼロ様。そろそろアルファ様へ報告に行かなければ。ですが最後に、一度だけお手本を見せて頂いても良いですか?」

 

「問題無い。この場所からでは少し分かりにくいかもしれんがな」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 そう言うと、ゼロ様は持っていたスライムを剣に変形させ、分かりやすいように構え、所謂一文字斬り……右から左へ横に斬る姿勢をとりました。

 

 剣を振るう、一瞬にも永遠にも見えるその動作の先では、私がさっき見せてしまった不甲斐ない魔力の刃とは違う、鋭い魔力の刃が飛んでいった。

 

 形は剣の軌道をそのままなぞった様な形で、目にはっきり見えるほどの魔力の濃さで、 瞬きしたら知覚することすら叶わないほどのスピードで、それは飛んでいった。

 

 終わった後の周囲の魔力は全く動かず、何事も無かったかのような空間が残っていた。ゼロ様も同様、自然体でいる。

 

 これがゼロ様。シャドウ様が動ならばゼロ様は静。お二人とも私にはまだ到底辿り着けない境地にいるお方。

 

 稽古をつけてもらえて、色々な事物を教えて頂いて、これだけの技をなんの躊躇いもなく見せてもらって……そして、救って頂いたのだから、私もその期待に応えたい。改めてそう思う。

 

 救われたあの日から、私はシャドウ様とゼロ様の背を追いかけ続けている。

 

「ありがとうございます、ゼロ様」

 

 私はただその一言を発して、そのままアルファ様の元へ走っていった。今日という日に、お二人への感謝を再び強く抱きながら。

 

 

 

 


 

 

 

「……何故感謝を?」

 

 何故かイプシロンがありがとうと言ってアルファの元へ戻って行った。感謝されるようなことをしただろうか。いつも通りだったと思うのだが。

 

 そういえば、結局どうやって私の家を見つけたのか聞けなかった。今回の作戦が終わって落ち着いたら聞きに行くとするか。……いつになることやら。

 

 とりあえずは、今のうちに睡眠をとっておくことにしよう。今日は長い夜になりそうだ。

 

「……あの魔力の飛刃、拠点の方狙ったが大丈夫だろうか」




 それでは重大発表ですが……私、なんと、ついに……書籍を全て購入することが出来ました! パチパチパチ……

 まあ待って下さい。これ、結構大変だったんですよ。近場の本屋に置いてあったりなかったりして、何軒か探し回りました。
 アニメ効果もあるのか売れてますねこれは。もっと皆買って読んで楽しんで?

 もちろん、小説だけじゃなく、漫画版と外伝も全て買いました。おかげでお財布は軽くなりました。

 それでちまちま読み進めているんですけど、今回の話、まさか伏線と化すことになるとは思ってませんでした。
 これ書いたのは買う前で、微調整してまあとりあえず完成でいいかとか思って投稿したんですけど、まさかあんなところで出番があるとは。
 そんなこと考えながらWeb版読み返したらバリバリ書いてあったとかいうのは内緒。

 ま、当面の間関係ないんですけどね。

 そういえば、前回あと二、三話で終わるとか言ってましたがあれやっぱ嘘です。もうちょっとかかります。
 そんでもって、近々皆さんお待ちかねのあれが少しづつ始まっていく予定です。過去っぽくなってしまっていますけど。今の所。
 1話より先に2話が出来たみたいな状況になってますけどね。ネタバレすると、こんな生活が永遠に続けばいいのに……って私はほんのり思ってました。書いたの自分だけど。



それではまた次回!
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